第2話 12月25日

 夜が明けた。ひたすら愚痴を聞き続けているうちに、お互い寝てしまっていたようだ。上西は今も寝ている。いや、今、目が開いた。

「ほぇ?...え?ここどこですか?」

「ん?覚えてねーのか?昨日一緒に居酒屋で飲んだだろ。」

「...あー!」


「本当、昨日は、ダルがらみしてすいませんでした!」

「いや、いいよいいよ。慣れてるし。」

「愚痴もいっぱい聞いてもらっちゃって...」

「まぁ、上西はいっぱいつらいことがあったんだからさ。友達の俺に甘えてくれていいよ。」

「...友達?」

「あれ?一緒に飲みに行ったし、家にも泊まってもらったし、勝手に友達だと思ってたわ。すまん!」

「ううん。ボクも友達になりたい。今から友だちね!」

「おう。ありがとう、上西。」

「...上杉。」

「え?」

「ボクの名前は、上杉 澪(うえすぎ みお)だよ。」

「え?あー、すまん。今まで間違えてたわ。」

「それじゃあ、あなたの名前教えてくれる?それと連絡先交換しよ。」

「いいぞー。俺の名前は、天知 聡助。天を知り、聡明に人を助けると書く。」

「そっか。良い名前だね!」


「ボク、そろそろ帰るね...」

「もう、大丈夫なのか?」

「うん、だいぶ落ち着いたよ。ありがとうね。」

「いいってことよ。」

「それでなんだけど、今度、遊びに誘ってもいい?」

「おう、いいぞ。俺、基本暇だし。」

「それじゃあ、また今度ね!バイバイ!」

「じゃあな。」


 ピコン

 携帯が鳴った。

 [今日の夜、一緒にイルミネーション見に行かない?]

 おいおい、解散してまだ30分も経ってねぇぞ...まぁ、予定もないしいいんだけど。

 [おう、いいぞ。集合はあそこのベンチで19時半とかでいいか?]

 [ありがとう!それでいいよ!]


 集合時間の10分前に到着した。...寒いな。

「おーい、ごめん。待った?」

「いや、大丈夫。ちょうど、来たところ。」

「ありがとね。来てくれて。」

「全然いいよ。どうせ暇だし。でも、ここ来ると、思い出したりとか...いや、ごめん。何でもない。」

「ううん。大丈夫だよ。君のおかげで吹っ切れた。それに、ボクここのイルミネーション好きなんだ。毎年、見に来てて。」

「へー。俺も毎年来てるから、実は今までも会ってたのかもな。」

「...そっか。もっと早く出会えてたらなぁ。」

「ん?」

「来年も一緒に見たいなぁ...」

「大丈夫だよ。来年になったら、彼女の1人や2人ぐらいできるって。」

「..............」

「どした?」

「何でもないよ。もし、できてなかったら、一緒に来てくれる?」

「まぁ、俺に彼女ができるとも思えんし...おう、いいぞ。」

「約束だからね?」

「構わねぇよ。」


「今日はありがとうね。」

「いや、全然大丈夫。」

「また、遊び誘ってもいい?」

「だから、俺ら友達だろ?聞かなくてもいいって!」

「そっか。ありがと!じゃあね!」

「じゃあな。」


 男女に人気で正直カーストが違うと思ってたから、こんなにうまく話せたのは意外だったな。大学で友達作るの失敗したし、これから仲良くできたらいいなぁ。まぁ、他の大学のやつが、「なんであいつと!?」みたいな反応して関わりづらくなるだろうけど。しかし、あいつ割とすぐに立ち直ったな。あの感じだとすぐに彼女もできるだろう。一安心だ。いっつも、一人でクリスマス過ごしてたけど、友達と過ごすクリスマスも良かったなぁ。


[今日は本当にありがとう。また誘うね。]

[あいあい]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る