サンタさんと小ネズミの妖精

海翔

第1話 サンタさんと小ネズミの妖精

今日はクリスマスイブ。

街の中ではクリスマスのプレゼントが溢れています。

街のおもちゃ屋さんには、いっぱいのおもちゃが並び、ケーキ屋さんにはクリスマスケーキがいっぱい並んでいます。

世界中の子供達が夜寝ている間に現れるサンタさんのプレゼントを楽しみにしています。

サンタさんもこの日は一年で一番忙しい日です。早くから世界中の子供達に順番にプレゼントを配って回っています。

ただしサンタさんも世界中の全ての子供達にプレゼントを配れる訳ではありませんでした。

サンタさんが気付く事のない、闇の世界にも子供達はいっぱい居ましたが、今までクリスマスになっても一度もプレゼントを貰った事はありませんでした。


「ねえ、僕知ってるんだ。外の世界ではクリスマスって言うのがあって、世界中の子供達がサンタさんて言う人にプレゼントをもらえるんだって」


「そうなの?でも私たちは一度もそんなのもらったことがないわ。わたしたちはサンタさんに嫌われてるのかしら」


「うん、そうだと思う。ここは闇の世界だからサンタさんも近寄らないんじゃないかな」


「でも、私たちは何も悪いことをしたわけじゃないのに……」


「ここが闇の世界と言うだけで、サンタさんに嫌われてしまったんだよ。そうに違いないよ」


闇の世界とは遥か昔に地上の世界とは切り離されてしまった世界。闇の魔王と呼ばれたグスタールが大暴れしたせいで地上の世界から隔離されてしまった世界。

でもそれは大昔の話。今はグスタールもいなければ、悪い人も誰一人いない世界。

子供達も地上の子供に負けないぐらい良い子ばかりでした。

でも、闇の世界は地上の誰からも忘れてしまわれた世界です。もちろんサンタさんからも忘れられてしまっているので今まで一度もサンタさんがプレゼントを持って来てくれた事はありませんでした。

そんな事を知らない子供達は


「僕たちがいい子じゃ無いからサンタさんは来ないのかな」


「私たちの事がきっと嫌いなのよ。プレゼントをくれるなんてありはしないのよ」


子供たちはションボリしながらプレゼントを誰もくれない事を嘆いていました。

闇の世界の隅っこでその光景を静かに見ている者がいました。

それは闇の世界に住み着いた小ネズミの妖精でした。

ネズミの妖精は普段から子供たちの事を見ていたので、子供たちが本当に良い子達なのをよく知っていました。

子供たちのせいでサンタさんが来ない事などあるわけがないと思った小ネズミの妖精は、こっそり闇の世界を抜け出してサンタさんを探して回りました。

小さな妖精であるネズミは闇の世界を抜け出す事も世界中を駆け巡ることも出来たのでした。

サンタさんを探して世界中を駆け巡りましたが、なかなかサンタさんに出会う事は出来ませんでした。

サンタさんもクリスマスのプレゼントを届ける為に世界中を回っている最中だったので、なかなか出会うことが出来なかったのでした。

小ネズミの妖精は、なかなかサンタさんを見つけることができないので何度も諦めてしまいそうになりましたが、子供たちの寂しそうな顔を思い浮かべると力が湧いて来て、頑張って世界中を探し回る事ができました。

闇の世界が夕方を迎えている頃、小ネズミの妖精はついにサンタさんを見つけることに成功しました。

ソリにいっぱいのプレゼントを積んだサンタさんを見つけた小ネズミの妖精は早速サンタさんにお願いをしました。


「サンタさんお願いです。闇の世界の子供達にもプレゼントを配ってあげてください。みんなプレゼントをもらった事がないので悲しい思いをしています」


小ネズミの妖精は子供達にプレゼントを配って貰えるように精一杯サンタさんにお願いをしました。

サンタさんはみんなの願いを叶えてくれる。小ネズミの妖精もそう思っていましたが残念ながらサンタさんからいい返事は貰えませんでした。

サンタさんは世界中の子供達にプレゼントを配らないといけないので、今から急に闇の世界に行ってプレゼントを配る時間は取れないとの事でした。


「そこをなんとかお願いします。みんないい子たちなんです。喜んでもらいたいんです」


小ネズミに妖精は、子供達に笑顔になって欲しいと言う一心でサンタさんに必死にお願いしました。


「君は小さいのに本当に優しい心の持ち主なんだね。わかったよ、私が配って回る事は出来ないけれどプレゼントを分けてあげる事はできるんだ。君が闇の世界の子供達に届けてあげるのはどうだろう?」


小ネズミの妖精は考えました。サンタさんがプレゼントを分けてくれると言っているけど自分は小さいので1匹でプレゼントを配って回る事は出来そうにない。


「みんな〜、お願いがあるんだ。僕と一緒にプレゼントを闇の世界の子供達に運んであげて欲しいんだ。あの子達を笑顔でいっぱいにしてあげたいんだ。どうか僕に力を貸してくれないかい?」


小ネズミの妖精は、世界中のネズミに聞こえる様に大きな声でお願いしました。

しばらくすると、小さな野ネズミが1匹現れました。


「ぼくも運ぶの手伝うよ」


そう言ったと思ったら次々にネズミが現れ始めました。


「ぼくらも普段は闇の中で生活しているからね。クリスマスぐらい闇の世界の子供の達に笑顔を届けたいじゃないか」

「わたしたちはいつも嫌われてばっかりだから、一回ぐらい人に喜ばれることをしてみたいわ」


ネズミ達は口々に闇の世界の子供達の為にプレゼントを運ぶ手伝いを申し出てくれました。


「サンタさん、それじゃあみんなでプレゼントを届けるから、子供たちのプレゼントをお願いします」

「そうかい、それじゃあ君たちに任せるよ」


そう言ってサンタさんは闇の世界の子供達全員分のプレゼントをネズミ達に渡してくれました。


「それじゃあみんな、あんまり時間がないから急いで闇の世界へ向かうよ。ぼくが案内するからついて来て」


ネズミの大集団が闇の世界に向けて出発しました。


「聞いて、夜になるまでに到着できる様にみんなで走るよ」


ネズミの一団は急いだおかげで無事に夜8時ぴったりに闇の世界に到着する事ができました。


「それじゃあ、みんな手分けして子供達にプレゼントを配るよ。でもまだ眠りについていない子もいるだろうから小さな子のお家から順番に配って回ろう」


小ネズミの妖精の言葉を聞いたネズミ達はプレゼントを持って闇の世界中に散らばって行きました。


「メリークリスマス」


プレゼントを子供達に届けるたびにネズミ達は小さな声で伝えました。

午前0時を回る頃には闇の世界中の子供達にプレゼントを配ることが出来ました。

プレゼントを配り終えたネズミ達が小ネズミの妖精の元に戻ってきました。

すると闇の世界全ての子供達にプレゼントを配ったはずなのに何故か何個かプレゼントの箱が余っていました。


「みんな、頑張ってくれてありがとう。でもどうして余ったんだろう。サンタさんが数を間違えたのかもしれないな。今からサンタさんに返しに行くには遅すぎるから、もったいないしここで開けてみようか」


そう言ってネズミ達は残ったプレゼントの箱を開けてみました。

箱の中には色んな種類のチーズがいっぱい入っていましたが、一緒にメッセージカードも入っていました。


『優しいネズミさんたちへ  メリークリスマス  サンタより』


「うわ〜これはサンタさんから僕たちへのクリスマスプレゼントだ!」


ネズミ達も今まで一度もクリスマスプレゼントをもらった事が無かったのでみんなで大喜びです。

沢山のチーズをみんなで口にするたびに嬉しくて幸せな気分になる事ができました。

翌朝、闇の世界の子供達が目を覚まし始めました。


「何か置いてある。これは何だろう?」

「うわ〜ぼくの欲しかったおもちゃが入ってる」

「もしかしてこれはサンタさんからのプレゼント?」


その朝は闇の世界の子供達全員大騒ぎとなり世界中が幸せに包まれました。

その年のクリスマスから毎年闇の世界の子供達にはサンタさんからクリスマスプレゼントが届く様になりました。

そして時々闇の世界のサンタさんがクリスマスの夜にプレゼントを届ける姿が大人達によって目撃されるようになりました。

いつの日か闇の世界ではネズミの事をサンタさんと呼ぶ様になり、ネズミは幸せを運んでくれるサンタさんとしてみんなから喜ばれるようになったのでした。

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サンタさんと小ネズミの妖精 海翔 @kawakaito

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