第30話 ここに5頭のウマがおるじゃろ?
【レストーヌ城 正門】
「リュート。ここに5頭の馬がいるだろう? この中から、好きな馬を選ぶといい」
レストーヌ城の城門に到着した俺達に、カルチュアはそう告げる。
「うわぁー! お馬さんですー!」
『綺麗な毛並みの馬ばっかりね』
「そうだな。ところでカルチュアは選ばないのか?」
「我にはすでに愛馬がいる」
そう言ってカルチュアが指笛をピュイッと鳴らすと、パカラパカラと蹄の音を鳴らしながらこちらへ走ってくる鹿毛の馬が一頭。
「ヒヒーン!」
「フッ、前に一度顔を合わせているな? この子はディープと言う名だ」
自分の前で動きを止めたディープに、カルチュアは飛び乗る。
鞍に無事着地したカルチュアは手綱を手に取っていた。
「さぁ、貴様も馬に乗れ」
「うーん。どうしようかなぁ」
ディープはなんだか威圧感があって、すごいカッコいい。
自分も同じようにカッコいい馬を選ぼう。
「どれどれ」
俺は改めて、先程提示された5頭の馬を観察してみる。
まずは一頭目から……
「ひひひーん」
黒っぽい毛並みに、額から鼻筋まで通った白い……流星だっけ?
それが特徴的なこの子は、一心不乱に用意された餌をもきゅもきゅと食べている。
「……ひひーん」
「ひひひひんっ!!」
隣の馬も餌桶に顔を近づけようとしたのだが、この子はクワッと目と口を見開いて隣の馬を威嚇。
あげないよ、とか、あげません、とか言っていそうな雰囲気だ。
「ずいぶんな食いしん坊さんですね」
「ああ……そんで隣の子が」
「ひひーん」
顔の辺りから体全体にかけて、白っぽい毛並みが混ざっている感じ。
たしか芦毛、とか呼ぶ毛並みだよな。
この子は隣の食いしん坊に断られた後、なんだか面倒くさそうにその場に寝転がり……すやすやと寝息を立て始めた。
「こちらはマイペースな子みたいで」
「やる気を出したらすごそうなオーラは感じるんだけど」
鼻先に蝶々が止まっても気にせず眠り続ける子から視線を外し、さらに隣を見る。
「……」
「なんだ、この子は……!」
真ん中に佇む栗毛の馬を見た瞬間。
俺が脳裏に浮かべたのは……抜き身の刀。いや、薙刀とでも言おうか。
「……武士のような子だな」
顔立ちは穏やかで、大人しそうに見えるのに。
その胸には熱い情熱を秘めているように感じる。
個人的にはすごく惹かれるが……
『あぁ? 誰に向かって刃オーラを放ってんのよゴルァァァァッ!!』
俺と同じく、剣気のような何かを感じ取ったのか。
背中のルディスが激しく怒り狂っている。
「……ひひひひん」
アックス状態のルディスの声は聞こえていないはずだが、それに呼応するかのように栗毛の子が呟く。
俺にはそれが、不退転と言い放っているように聞こえた。
「こ、この子はやめておくか……」
俺は良くても、ルディスが気に入らない様子だし。
「ひひひん! ひひひん! ひひ、ひひーん!」
「次の子は、かなり元気だな」
俺が前に立った瞬間、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる馬。
最初の子と同じように黒鹿毛で、いいのかな。
「ひひひひーん!!」
私を選ぶべきデースとでも言いたげに、すり寄ってくる馬。
うーん。人懐っこくて可愛い。
「マスター、いい感じの子ですね!」
「ああ。今のところ、最有力候補かも」
俺とピィがそんな会話を聞いて、その意味を理解したのか。
跳ねていた馬が、より一層高く跳躍。
まるでその場でバク宙でもするんじゃないかと思うくらいの高さに、俺達が「おーっ」と驚いていると。
ズシャッ。
着地した際に、地面の土が勢いよく飛び散ってしまった。
そしてそれは、隣に並んでいた栗毛の馬の体に直撃。
「……ひ~ひ~?」
「ひひっ!?」
ジロリと隣を睨んだ栗毛の子が、黒鹿毛の子ににじり寄る。
それを見た黒鹿毛の子は慌てたように逃げていくも、その後を栗毛の子がものすごい勢いで追いかけていってしまった。
「行っちゃいました……」
「ああ。行っちまったな」
しばらくして、遠くから「ひひひぃーんっ!!」と悲鳴にも似た馬のいななきが聞こえてきたが……まぁそれは置いておくとして。
「最後は……この子か」
「…………」
俺が近寄ると、最後に残っていた鹿毛の馬はそっぽを向く。
「その子は少し気性に難があってな。良い血統を持っているんだが、他の4頭に比べると走りに……」
苦笑しながらそう話すカルチュア。
「……そうかな?」
「ん?」
「俺には、この子がさっきまでの4頭に劣っているとは思えないけど」
俺がそう口にした瞬間、鹿毛の馬がこちらを振り向いた。
「…………」
何も言わず、ただじぃっと俺を見つめてくる。
しかしすぐに、またプイッと顔をそむけてしまった。
「なるほど、お眼鏡には叶わなかったと」
どうやら俺を見て、主人とするに値しないと判断されたらしい。
これはかなり、プライドの高い子と見た。
「なるほど。乗馬経験も無いようなヤツを、背中に乗せたくないってか」
いくら冴えない顔とはいえ、乗る前から舐められるとはな。
いや、実際に実力が無いのだから当然なんだけど。
これは……ちょっと、スルー出来そうにない。
「すまないな、リュート。私が部下に最上級の馬を5頭用意するように命じたんだが……相応しくない馬が混ざってしまった」
カルチュアは申し訳なさそうに頭を下げる。
しかし俺の心はすでに決まっていた。
「ピィ、メニュー画面を」
「へ? あ、はい!」
途端に白黒に変わる世界。
それと同時にティロンと、新しいウィンドウが浮かび上がる。
『騎乗スキル』(消費5000)
・ありとあらゆる生物を乗りこなす
「おお、マスター! スキルヒントが出てきましたね!」
『これを使えば、馬から振り落とされる心配もないんじゃない?』
「……足りないな」
「え?」
『は?』
「あの子はこんなレベルじゃ、満足してくれないだろう」
俺はそう呟くと、再び念じる。
考えろ。あのプライドの高い馬を納得させ、俺を認めさせる方法を。
「……これでどうだ」
ティロン。
再び電子音が鳴り響き、スキルヒントの表示に変化が生じる。
『騎乗スキル・極』(消費10000)
・ありとあらゆる生物を一流に乗りこなす
「……え!?」
『消費が2倍になっちゃったじゃないの!!』
「いいじゃないか。今後何かと役立つかもしれないし……ピィ、頼む」
「は、はい。それでは、スキル獲得の申請を承認します……」
パァッと輝く俺の体。
よし、これでもう何も心配は要らない。
「待たせたな」
メニュー画面が閉じられて、世界に色が戻る。
その瞬間、俺の前にいた馬がビクンッと体を震わせた。
「よぉ、お前に相応しい力を手にして来たぞ」
「……ひひん」
じぃっと、再び俺の目を見つめる鹿毛の馬。
俺はそんな馬の額に、そっと手を添える。
「俺の馬になってくれるか?」
「……」
馬は何も答えず、ただコクンと頷き……俺の前に横腹を盛ってくる。
乗りなさい、とでも言いたげに。
「驚いたな……この子が、こんなにも素直に人を乗せようとするとは」
「ちょっと裏技を使ったからな」
唖然とするカルチュアに答え、俺は馬に乗る。
乗馬の経験なんて無くても、スキルのお陰で何も心配は要らない。
「リュート、その子にはまだ名前が無い。貴様が付けてやるといい」
「おお、そうなのか。それじゃあ……そうだな」
「ひひーん!」
「ちなみにメスだからな。可愛い名前を付けてやれ」
「メス……いや、この子は可愛い名前よりも、カッコいい名前の方が良さそうだ」
「ひひん!」
俺の言葉に賛同するかの如く、馬が力強くいななく。
俺はそんな彼女に……素敵な名前を考えてやった。
「お前の名前は――」
<安藤流斗(レベル0)>>
【体力】3001 【力】 1001
【技】 1001 【速度】1001
【防御】3001 【魔力】1
【幸運】1001 【魅力】3001
【武器適正】
・斧 1001(SSSランク)
・剣&槍&弓&杖 各1(Gランク)
【所持スキル】
『カード擬人化(20000P)』
・ポイントカードに肉体を与える事が出来る)
『アックス擬人化(0P)』
(斧に肉体を与える事が出来る)
『状態異常耐性レベル5(5000P)』
(ありとあらゆる状態異常を完全に無効にする)
『メスガキ理解らせ(消費P1000)』
(生意気なメスガキを理解らせる)
『騎乗スキル・極』(消費10000) ←NEW!!
(ありとあらゆる生物を一流に乗りこなす)
【残ステータス・スキルポイント】
・49999(神丸ポイント)
・1000(登録者)+300×10(評価点)=4000(ボーナスポイント)
【所持金・貴重品】
・約580万ゲリオン(1ゲリオン=2円)
(宿代食事代で定期的に消費されます)
・女神のタブレット
(インポティの顔認証さえあれば、世界のルールを改変可能)
****************************
皆様のおかげでフォロー者数1000を達成しました!
今後も頑張って参りますので、今後ともよろしくお願いします。
↓の【☆☆☆】やいいねの♡がまだ、という方も何卒! 何卒!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます