チンポスレイヤーさん!?
そういえば、中村さんって昔、ゴミ出し芳一って呼ばれてましたね。
『PTのゴミ出し係だっただけだし耳なし芳一のパロにされたことは今でも全然納得行ってねえからな俺は』
はぁーおうちに紫山さん達が帰るとこっちまで安心しちゃいますね。
いい人達の村だと思います。
ほとんど何も聞かずに空き家の一つを紫山さんに貸してくれましたし。
紫山さんが農業や魔物退治をしてたとはいえ、ずっと村に置いてくれてますし。
この世界は世界の理が理ですし、一人で野宿する危険が桁違いですものね。
「そうだね。感謝が絶えないよ」
『週に一回はデカい戦いがあったからな……』
日曜朝の因果なんですかね……? この世界だと因果ってあんまりバカにできないんですけど、それはそれとして、こほん。
では、改めて世界観と現状を説明しますね。紫山さん。
「ああ、お願いするよ、アルナちゃん。うっかり忘れたら大変だからね」
『オメー授業内容を前日に予習するクソ真面目ムーブを毎日してるタイプだな……』
「俺は普通の学校行ってなかったからよく分かんないなあ」
『……あー、そうだったな。ワリ』
「何が悪いのか分からないな。君が優しいことは分かったけど。君が悪いのは口だけだ。繊細な子の前ではちょーっと気をつけような?」
『ケッ』
サークル:ティリスソフト作、『イリスクロニクル』。
製作者デェゥス。
個人制作のいわゆるインディーズR18RPGです。
同人R18ゲーム総選挙一位最多獲得、Dから始まる販売サイトやFから始まる販売サイトでずーっと一位を取っていた有名なゲームだったようです。
本編のナンバリングが10、外伝がいくつか、他作者のファンメイク作品もあるようですね。
「へー、すごい」
『お前朝青龍のリプみたいな語彙してんな』
「相撲の? すまない、トークは上手くないんだ」
どすこいどすこい。
重厚で感動するストーリー、笑えるコメディチックなやり取り、後続がこぞって真似したRPG式戦闘システム、魅力的な数え切れないほどのキャラ。
可愛さとエロさを両立した女の子の立ち絵、細いイケメンにゴツい中年に枯れ木のような老人まで見事に多様に書き分けられた男の立ち絵、ひたすら綺麗な風景画、最高のイベント一枚絵。
どこから入っても楽しめるナンバリング10作、外伝なども多々の大長編。
何より天才的な伏線、神がかった伏線回収、それによる最高最強のストーリーが最高クラスに評価されているとか。
それがこのゲームであり、この世界である……らしいですよ。
中村さんと一緒に来ていた方達の受け売りですけど。
「へえ、いいゲームなんだ。ゲームは子供の遊びだと思ってたから全然……あ、でも一回遊んだな、ゲーム」
『そういやあ本放送にそんなギャグ回あったな』
私の前任の女神であるケツアルコアトル様はこの世界を、実在世界と、ゲーム世界の両方として好んでいたらしいですよ。
私はまだえ……えっちなゲームはまだちょっと触る気になれませんけど。
管理者の補佐としてこの世界をもう数年、見守ってきました。
「ケツアルコアトル……」
『おう、前任のクソ女神だ。もう死んでる。だいたいこいつが悪い』
「ケツナシコアトルも居るのかい?」
『いるわけねえだろ!?』
ケツナシケツアルコアトル様ならいらっしゃいますよ。
『居るの!?!?!?!?』
「神様は不思議な名前してるんだなあ」
『ほざけぇっー!!』
話を続けますね。
とはいえ基本は女主人公でりょ……陵辱メインの個人制作R18RPGです。
原作主人公イリスが冒険し、えっちな目に合うルートやそういう目に合わないルートをプレイヤーが選んで遊ぶという、インディーズエロゲーとしてはベーシックな作りらしいですよ。
分岐と選択肢とエンドが極端に多いだけで。
なんでしょうね。
個人制作のえっちなゲームにおける、マリオみたいな作品なんでしょうか?
話の緩急・上下・伏線回収のストーリーテリングや画力が飛び抜けているだけで、それ以外はベーシックなインディーズエロゲーの名作とそう変わらない、とか。
製作者のデェゥス氏はよくユーザーに「最後に登場人物本人が満足していれば全て良しだと思っている性格異常者」だと褒めるように罵られていた、とか。
ケツアルコアトル様がおっしゃってました。
ケツアルコアトル様は中村さんの世界の匿名掲示板の常連だったみたいです。
「女神……?」
『お寒いクソオタク女神は死んで~、あ、死んでたわ! ガハハハ!』
記録を再確認しましたが、『イリスクロニクル』初代は1980円で10万本以上売れてたみたいですね。2億円くらいでしょうか?
「へぇ……昔見た書類の話だけど、合体神のファンタスティックカイザーのメインカメラの値段くらい売れたんだなぁ」
『金銭感覚狂いすぎだろ』
ファンタスティックVの巨大ロボは国の補助金と戦隊の一族の資産で維持してるんでしたね、そういえば……ともかく、ゲームとしては破格に売れたみたいです。
多くの創作者が影響を受けて、市場をまるごと塗り替えたくらいだとか。
人気作だったんですねえ。
あ、ファンタスティックVの方が稼いでましたし影響大きかったですし人気作でしたよ!
紫山さんがもー人気で、紫山さんの専用武器が一時期転売屋に目をつけられてたくらいで!
レッドの方が売れてましたけど!
実質人気はまー紫山さんが勝ってる感じで!
それでねそれでねっ!
『ステイ』
はい。
「はははっ、俺達はそれぞれ別の世界から来て、それぞれの世界を知ってるというのは面白い。視点がちょっとずつズレてる気がするな」
『面白いか? まあいい、女神、大雑把でいいから人間の世界の説明をしろ』
「のび君のドラちゃんとか、俺達が揃って見てるものも何かあるのかな……」
そうですね。
この世界には三つの大陸があります。
三つの大陸それぞれに大陸を代表する三大国家があります。
三つの大陸、三つの国家、そしてそれらを睨む北の果て、空に落着した真正魔王の城。最初はこれだけ覚えておけばイメージしやすいんじゃないでしょうか。
魔物、魔族、魔王を倒せれば、世界を救うことができます。
現在地は東の大陸の南東端、つまり世界地図の右下の端っこです。
設定的には、異世界エリニュエスの、東にあるクロト大陸の、南に存在するアマリリス王国の領、その南東端にあるスタルト村になります。
「なるほど」
ここはゲームであり現実である世界。お二人が生きてきた世界よりは単純な整合性が選ばれている度合いが高く、また分かりやすいと思います。
たとえばお二人の地球にもあったマドナルドを想像すれば分かりやすいと思いますが、世界中に点在するマドナルドのように、この世界には世界中どこにも同じ系統の武器屋やアイテム屋が存在して―――
「ん?」
『ん?』
え?
「ごめんもう一回言って」
世界中に点在するマドナルドのように、
『チームは解散だな』
なんで!?
『マックをマックと呼ばねえやつは駄目』
「いや……俺は解散とかそういうのはしないけど……マドナルドかぁ……いや、いいと思うよ、うん」
『よくねーわ。ドラゴンボールをドラゴボって言ってる奴らに匹敵するわ』
「いや、そこは自由でいいんじゃないかな。呼び方なんて大したことじゃないよ」
『こんなのYahooで一週間はトップ記事になってるレベルの恥だろ』
「ならないと思う」
紫山さん優しい……かっこいい……素敵……
『うるせーぞマドナルド野郎、一生FFのことファイファンって呼んでろ!』
……うおーっ!
なんやかんや三人の喧々囂々、されど二人は大人の男らしい余裕を見せ、未熟な女神のちょっと変なところにも寛容で、以後マクドナルドをマドナルドと呼ぶことで合意を見せてくれたのでした!
めでたしめでたし!
『あっ女神の反則手使いやがって! オレは認めねえぞマドナルド女神!』
めでたしめでたし!
翌日!
翌日。
またしても村を魔物から守る紫山水明。
倒されるは、村近隣で増えた魔物たち。
もはやこの地方においては、魔物の討伐数は彼と辺境巡回騎士団のツートップ。そこは間違いないだろう。
彼はいかなる世界でも人々の味方で、人の敵の敵である。
皆のもの、サイリウムを持て!
魔物を倒して村に帰った彼に、神父が『世界のシステム』を代弁し、彼が敵を倒した数によって得た称号を授けた。
あ、これゲームシステムのやつだ。
「チンポスレイヤーの称号を贈与します」
「………………………そうですか、ありがとうございます」
ちんちん型魔物の討伐数500、達成。
『チンポ型な』
……チンポ型魔物討伐数500、達成!
空を飛び、魔法を軽減し、一気に大量に出現するため、よほどの強さか物理全体攻撃が無いと苦戦してしまう、空を飛ぶ男性器の形の魔物。
最初に思いついた人の頭の中を覗いてみたい、エロゲRPG界隈ではさして斬新でもない(らしい)、女性を犯すためだけに生まれた生き物。
銃弾をも撃ち落とし慣れている紫山からすれば、(気分はともかく)いとも容易く。このゲームに無数にあるやりこみ要素の一つ、実績解除が達成されたのだった。
『よかったな、実績解除だぞ』
「よくないが」
こういう世界なんですよね……あ。
魔物討伐実績報酬はギルドで受け取れますよ。
この村にはギルド無いのでお金は受け取れませんけど。
お金受け取るなら街に遠出しないといけませんね。
「すぐ得るものさえ無い……」
『そうだぞ』
ううう、推しに最初についた二つ名がこれって最悪に嫌……!
『女神の責務雑にやったから天罰が下ったんだろ』
これまで以上に真面目にやります……
「いやあ、いいんじゃないかな。特に悪いことしたわけでもないと思うし。いいと思うよ、マドナルドもドラゴボも……」
推せる……
『ドラゴボはない』
ぐすん。
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