第182話 元男爵親子
オルフェが学園長と少し話をした後で、ミロアも友人たちとの楽しい会話を区切った。
「オルフェ、ごめんね。私の代わりに学園長と話なんて……」
「問題ないさ。大した話じゃなかったし(緊張させられたけどね)」
「そう、ならよかった。それじゃあ早速教室に行きましょう」
「ああ」
正面にそびえ立つスマートブレイブ学園の校舎に入っていくミロア達。入学してから見慣れた学園だが、ミロアは少し新鮮な気持ちでいた。
(これからは、ガンマ殿下もミーヤ嬢も学園にはいない。今日から私は有意義な学園生活を送るんだわ。もっとも、ミーヤ嬢は我が家の屋敷にいるしね)
ミーヤ・ウォーム男爵令嬢のことで、ミロアは昨日の屋敷でのことを思い出す。いや、今は平民のミーヤのことを
◇
昨日。
「し、新人侍女のミーヤと申します! これからはレトスノム公爵家の侍女として働いていきます! み、未熟者ですが、み、皆さん今日から宜しくおねがいします!」
いかにも新人らしい口調で緊張する自称新人侍女の少女。緑色の髪をポニーテールにまとめ、緑色の瞳を持つ可愛らしい顔立ちの少女の名はミーヤ。少し前は男爵令嬢だったが、ガンマたちに加担したことと本来の身分が明かされたことでその立場を失い、ミロアの温情で公爵家の新人侍女となったのだ。
「皆、このミーヤはガンマ殿下をはじめとする悪い男たちに利用された女の子なの。決して私に悪意は無かったはずだから私の敵じゃないの。だから極端に厳しくしたりしないでね」
(実際、脅されて従わされたものだしね。しかも、男爵側が身分を偽っていた事実があった。それは予想外だったけどね)
男爵の実子ではないと聞かされた時は驚いた。ドープアント王国の法において、身分の偽装は結構な罪に値するのだから身分の低い男爵がそんなことをしていたとは考えにくかったのだ。その一方で、ミロアはどこか納得もできた。前世の知識における乙女ゲームのヒロインは平民の立場が定番の一つだからだ。
(男爵令嬢もヒロインの定番だけど、ある意味どっちも持ってるとは思わなかったわ。まあ、ガンマ殿下のせいで結局父親ともども平民になったけどね)
ミーヤだけではない。責任を取る形でドーリグ・ウォーム男爵も爵位を取り上げられていたのだ。その男爵……元男爵も今は新人執事としてレトスノム公爵家で働くことになった。もちろん、それもミロアの温情である。
「ミロア様……私、ミロア様に拾っていただいた恩を全身全霊を懸けて返させていただきます!」
「私も同じ気持ちです。娘だけでなく私までも雇ってくださったご恩は、我が命を懸けて返してみせまする!」
ミロアに雇われるとは思っていなかったウォーム元男爵親子は、露頭に迷う心配がなくなった事もあって本気でミロアに感謝した。前世の知識における中二病のようなセリフまで口にして感謝の気持を訴える親子にミロアはつい吹き出しそうになった。
「頼もしいけど、命を懸けて、なんて言葉を軽々しく口にしないでね」
ただ、流石に命を懸けるという言葉まで使ってほしくはなかった。
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