第180話 遂に登校
ミロアが目覚めてから遂に一ヶ月が経った。今日からミロアは学園に戻る。そういうことなので、レトスノム家の屋敷の前で、公爵であるバーグとその家臣たちがミロアを見送るために集まっていた。
「ミロアよ。学園で何かあればすぐに父が片付けてやるから遠慮なく頼っておくれ」
「お父様、私はよほどのことがない限りくじけませんわ。ご心配なさらずに(余計なことされても困るし)」
父親に頼りすぎるとそれこそ悪役令嬢になるというのが、ミロアの仮説の一つだった。前世の記憶からすると悪役令嬢は親の権力に頼りたがるきらいがあるからだ。
「お嬢様、無粋な輩がいても専属騎士の二人がいるので堂々となさっても大丈夫ですからね」
「その通りです! このソティーが命をかけてお守りいたします!」
「……小生も同じく!」
「ありがとうエイル。ありがとうソティー、ゴウル(本当に頼もしく感じるわ。表でも裏でもね)」
ミロアは何となく気づいていた。活発なソティーはともかく、そこか影のあるゴウルが貴族の闇の部分で活躍するような人物であることに。前世の知識と貴族の嗅覚がそれを察していたのだ。
(まあ、仮にも公爵家だからそういう人も必要なんだろうし……前世の豆知識みたいな『影』ってやつかしら? わざわざ口に出す気はないけどね)
「お嬢様、エイルの言う通り堂々としていてもいいのですぞ」
「その通り、専属騎士の二人は我らが見ても強者といってもいい実力者。きっとよき盾になってくれます」
「ふふふ、ありがとう。ダスターさん、スタードさん」
二人の老兵のお墨付きをもらっている専属騎士二人のことを本当に頼もしく感じるミロア。その一方で、婚約者はと言うと……。
「そ、その通りだ! お、俺が、婚約者の俺がいるから更に大丈夫だっ!」
婚約者のオルフェはある意味ミロア以上に緊張していた。オルフェは婚約者ということで、本人の希望で一緒の馬車で登校する事になったのだ。
「オルフェ、貴方がそんなに緊張してどうするの?」
「お、俺は緊張なんかしていない! み、ミロアこそ緊張しているはずだろ!? だからこそ、俺がそばにいて君を支えて……!」
「ふふふ、そうね。ありがとう」
オルフェの言う通り、確かにミロアにも緊張感はあるのだがオルフェほどではなかった。むしろ久しぶりの学園に好奇心があり、二人の伯爵令嬢の友人に会うのが楽しみでもあったのだ。
「あら? もうそろそろ出たほうが良さそうね」
「え!? もうそんな時間か!?」
「それでは皆行ってきます!」
「お、俺もいくからな!」
ミロアとオルフェ、更にソティーとゴウル。この四人を乗せた馬車が学園へと向かっていった。
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