第77話 予想

夕方のミロアの自室、そこには部屋の主であるミロアと侍女エイルがいた。昨日の夜のように義妹スマーシュと二人ではないため、ミロアもエイルもしごく真面目な顔で向かい合っていた。



「………やっと学園の状況が分かるわけね」


「はい。こんな時間に申し訳ありません」


「仕方ないわ。昨日と今日で慌ただしかったんですもの」



ミロアはバーグが戻ってきた時点で有力情報が入ってきていると分かっていたのだ。それというのも、こういうタイミングで良くも悪くも重要な情報が舞い込んでくることは、前世の物語によくあることだったためミロアは間違いないと思っていたのだ。



(確信できたのは茶会でお父様が最初にいなかったことね。こんな時にも仕事というだけで不自然だし)


「それにしても、すでに気づかれていたとは……」


「私の予想だと、お父様と一緒にゴウルも戻ってきたんじゃないの?」


「……お察しのとおりです」



そして、報告が遅れるのも理解できていた。昨日と今日でレトスノム家の家庭環境の大幅の変化の時だ。ミロアの気持ちを考慮した家臣たちが打ち明けるタイミングに悩むのも無理はない。



「昨日、お父様も含めて会議までするんですもの。結構面倒な事になっているくらい分かるわ。私に知らせるか迷うほどにはね」


「……ご理解感謝します」


「感謝するのは私の方よ。気を利かせてくれて本当にありがとう」



ミロアの感謝の言葉と笑顔は本心からのもの。ミロアとしてはイマジーナとスマーシュと仲良くなれるには一日以上の時間がほしいと思っていたのだ。そこに学園の情報など不要、昨日のうちに知ってしまったら気が散って茶会に集中できなかったかも知れない。



「それでは話してくれる。学園の情報……ガンマ殿下とその近辺が中心ね」


「そうですね。やはりガンマ殿下が最初に面倒なことになっていますね……」



エイルは少し間をおいて説明を始める。



「ガンマ殿下はミロアお嬢様との婚約破棄が決定されたのと同時に、卒業後は男爵位を賜るということも決定されました。本人はそれを不服としているようです」


「……不服と思うのは仕方がないわ。仮にも国王になることを予定されていた身だしね」


「それで、もう一度王太子に返り咲きたいということで国王に訴えたり側近に相談したりしています。……おそらくもう一度お嬢様と婚約しようとお考えになっていると思われます」


「……やっぱりね」



ミロアの前世の知識から、ガンマのような男は手放したものを取り戻したがる傾向がある。そのためにミロアとの婚約を再び……などと考えることくらい予想していた。



(こっちはもうそんな気はないのにね。……めんどうな男)


「そのためなのか……ガンマ殿下は派手な服装をするようになったとのこと」


「は……?」

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