第76話 新しい朝
レトスノム家で新しい朝が来た。
「「おはようございます、お父様お母様!」」
ミロアとスマーシュは共に遅れて起きて、一緒に食堂で両親に朝の挨拶を口にした。示し合わせたわけでもないのに息ぴったりだった。
「ふふふ、おはよう二人共」
「昨日の夜は楽しかったのですね?」
「「はい!」」
バーグとイマジーナにからかわれても笑って返答できる娘二人。まるで昔から仲が良かったのではないかと錯覚してしまうほど良好な関係を築いた彼女たちの姿にバーグもイマジーナも本当に嬉しく思う。そしてそれは、この家族を家臣として眺める者たちも同じ思いだった。
(お嬢様、良かったですね……)
そのうちの一人には侍女のエイルがいた。元『陰』でなければ涙すら流していたかも知れないほど感激していた。
(まさか、ここまでイマジーナ様とスマーシュ様と仲良くなられるとは……あの時に、賭けに出て良かった。旦那様もあんなに嬉しそうに……)
ミロアに義母と義妹と和解することを薦めたのはエイルだった。だからこそ、ミロアがそれを成功させたことを我が事のように喜んでいたのだ。結果としてはエイルの予想以上に関係が良好になったのだから。
(今日から皆さんはこの屋敷で暮らす……つまり、この後も一緒に食事をしたり会話したり遊んだり……それをこれから毎日……)
イマジーナとスマーシュがこの屋敷で暮らすことはすでに決まっている。彼女たちが今まで住んでいた屋敷から引っ越すということになるわけだが、それらの荷物は使用人たちがこっちに送る手はずとなっている。そういうことなので、彼女たちがこの屋敷を出る必要がない。少なくとも、ミロアが学園に復帰するまではそうなのだ。
(だが不味いな。ミロアお嬢様にゴウルが持ち帰ってくれた情報を伝えるタイミングを考えないといけないな。……あんな頭の痛い情報を一度にたくさん聞かされると、ミロア様の家族関係の構築に支障をきたすかもしれない……)
ゴウルの持ち帰った情報はまだミロアには伝えていない。昨日は家族の茶会があったために無粋なことをしたくなくて後回しということになったのだが、内容が面倒すぎることもあって、確実にミロアを悩ませることは間違いないと思われるのだ。下手をすれば、イマジーナとスマーシュに構っている暇が無くなるかも知れないほどに。
(いや……ミロア様もすでに精神面では一貴族並に近い。ならば、勉学の時間にでも伝えるしかあるまい。後回しにできる内容でもないし、早めに伝えるべきだ)
しかし、伝えないほうが不味い情報でもあるため、エイルは今日中に伝える決心をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます