第74話 茶会の後
レトスノム家の茶会が終わった頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。そういうことなので、茶会の終わった後すぐに夕食が始まった。勿論、レトスノム家全員で。
「まさか、夕方まで茶会が続くとは……」
「お父様が遅れてきてくださったおかげですわ。こんなに長いお茶会は私初めてです」
「私もですわミロア様。おかげで皆でこの屋敷で夕食……というのはもとから予定されていたでしょうね」
「ワタシ、嬉しいです!」
夕食の時も、ミロア達家族は和やかな会話が続いた。そして、そのまま同じ屋敷で泊まることも決まった。尤も、父バーグの考えだと最初からそうするつもりのようだった。反対意見もなかったため、誰もが喜んでくれた。自室で今日のことを振り返るバーグはつい顔が緩む。
(ここまで上手くいくとは思わなかったな。それにあの子があんなふうに子供らしいことをしてくれるなんて……。本当にあの王子から離すことができてよかった……)
バーグはどこか不安だったのだ。屋敷に引きこもっている間に、ミロアが考え直してガンマにまた……などということがあるかもなどと思ってしまったのだ。何しろ長い間恋心を抱いてきた娘の姿を父親として見てきた身としては不安もある。だが、それは杞憂だった。
「学園では、確実にガンマ王子が絡んでくることだろう。それ以外の者たちもミロアを利用しようと近づいてくるだろうな」
合流したゴウルの会話を思い出すとバーグの緩んだ顔が苦いものへと変わる。予想通りというか斜め上を行く状況を知ったからだ。
「ガンマ王子だけでも面倒な存在だと言うのに……その側近のマーク・アモウが不穏な動き、それに元側近のローイ・ミュドまでもがミロアに……なんとも度し難いことだ。少し前にきっかけとなった男爵令嬢は孤立……こちらも何をするかわからんな」
ゴウルの持ち帰った情報は、ミロアに今後関わってくるであろう学生たちのことが本題。彼らの情報は明日にでもミロアにも伝える予定となっている。流石に今日中に知ってもらうということはしない。何しろ、今ミロアは自室で妹と一緒にいるのだから。
「……同じ部屋で同じベッドで寝るか。ふふふ、本当に仲良し姉妹になったのだな」
ミロアとスマーシュのことを思い出したバーグはまた顔を緩めてしまう。二人は今日だけ一緒の部屋で寝ることになったのだ。互いに寄り添い合ってベッドで眠る娘たちの姿を想像しただけでバーグは微笑ましく思うのだった。
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