第70話 茶会は成功

茶会の終盤でやっとバーグが加わった。彼の顔には申し訳無さそうだが笑顔があった。中庭で妻と娘二人が仲良さそうにしているのが見えて嬉しく思ったからだ。



(ああ、どうやら本当に仲良くなれたのだな。そこに始めから入れなかったことが悔しい)


「いや~、皆すまない。会議が少々長くなってしまって、」


「「「遅い!」」」


「うぇっ!?」



遅れてきたバーグに向かって、ミロアとイマジーナとスマーシュが揃って『遅い』と容赦なく告げる。まるで示し合わせたかのように同時にピッタリとだ。



「お父様が真面目なのは誇らしいのですが、今日のような日は仕事は後にしてほしいです!」


「おかげで女三人で仲良くやれましたが、もう少し早く来てくださっても良かったのですよ?」


「お父様遅い! もう遅い!」



妻と娘たちが順番に文句を言い出すので、驚いたバーグは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。



「……ははは、私の見ない間にすっかり仲良くなったんだね。これは本当に出遅れてしまったな」


「「「それはもうっ!」」」



三人の息はぴったりだ。この短時間でこんなに息が合うとは予想しなかったバーグは本心から寂しげにそう思った。会議など後にすればよかったとどうしようもない後悔が襲うがもう遅い。この反省を次に活かすと誓う。



「私は誓おう。次のお茶会には必ず出遅れないようにしよう」


「それはつまり、茶会には初めからいても途中で抜けるということでしょうか?」


「なっ!? そんなことは、」


「あったでしょう。私とスマーシュと、」


「それは言わない約束だっただろう!」


「それじゃあワタシが言いますね!」


「止めてくれ!」



後から加わったバーグにも軽い冗談を言ったりからかったりと会話を交えるミロア達。バーグも加わった茶会はその後一時間以上続くことになった。こうしてミロア達レトスノム一家はこの茶会で本当の意味で家族となり絆を結んだ。



「……ミロアお嬢様よかったです……」


「そうですね。家族とはやはりいいものです」



ミロアたちを見守るエイルとソティー。仕える主の家庭が良好になったことが嬉しくて思わず涙ぐんでいる。だからこそ、家臣である自分たちも団結しようと決めた。



(学園ではお嬢様は好奇の目に晒される。それ以上に、利用しようとする輩が多い。体面も精神面も支えなければならない)


(学園の令息の中には強引な手段を用いる者もいると聞く。そんな者たちは私が斬り捨てる。ゴウル殿の体調を鑑みればしばらくの間は私だけがお嬢様を守るしかない。絶対に守ってみせる)




バーグがサプライズで突然催した茶会は、レトスノム一家の家族だけでなく家臣たちの結束にも大きな影響を与えることになった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る