第69話 報告
その後も、家臣たちによるバーグへの抗議は続き、終わった頃にはバーグの精神はだいぶまいっていた。
「……すまないが後の話は任せていいだろうか? もうそろそろ、家族の団らんに行きたいのだが……」
「駄目です。ゴウルさんの報告のほうが先です」
「……それなら早く報告を続けてくれ」
げんなりと肩を落とすバーグは話を進める。早く終わって家族団らんに入りたいからだが、心の中では話が長引くと分かっている。それでも娘のためと思い我慢するのであった。
「ゴウルさん。大丈夫ですか?」
「……問題ありませぬ」
エイルに促されて騎士ゴウル・アンディードが口を開いた。彼は先日、屋敷に戻る途中のバーグの馬車と合流してそのまま一緒に屋敷に戻ったのだ。一緒にいた理由は持ち帰った情報の共有なのだが、それ以上にゴウルの疲労が大きな理由だった。
「ゴウル殿、問題ないとは思えません。貴方の顔色はかなり悪そうに見えます。もう少し休んではどうですか?」
「……休むのはこの話の後で構いませぬ。非情に重要な情報を持ち帰って来たので、早く報告したいのです」
(ゴウルにそこまで言わせるなんて……あの糞ジジイ)
エイルは心の中で舌打ちをするような思いだった。その理由はゴウルの体調だった。ソティーがゴウルの顔色が悪いと指摘していたが、実際はそれ以上に悪い。『陰』の技術で気丈に振る舞っているがゴウルの体はボロボロだったとエイルは確信していた。
(こっちが手紙を出してまで釘を差したのに、思ったよりも過酷な試練を与えたわけか。こんなことなら私が行くべきだったか?)
エイルの頭に浮かぶのは、ハゲ頭の老人ヤミズーク・マスカレードの姿だった。この男にゴウルに情報提供を求める手紙を送ったのはエイル自身であり、旧知の仲だったこともあってゴウルを生かしてはくれるだろうとは思っていた。だが、望んだ情報は手に入ったようだが、ゴウルの身体の状態が非常に悪い。これではミロアが学園に復帰した時に護衛騎士を務めることができるか怪しいほどだ。
(ゴウルの様子から重要な情報はもらったようだが、それがどういうものかで私達の動きも変わる。無論、お嬢様のことも。もしも大した情報でなければジジイの社会的立場に制裁を加えないといけないな)
「……現時点で問題視すべきは、ガンマ・ドープアント王子、マーク・アモウ伯爵令息、ミーヤ・ウォーム男爵令嬢、そして――」
ゴウルの報告はミロアの学園生活に大きな影響を与える者達の内容から始まった。会議室にいる誰もがゴウルの報告を何一つ逃さずに耳に入れる。
◇
バーグ達が会議室から出ていく頃には、お茶会が終盤に迫っていた。バーグは会議が終わった後すぐに中庭に走っていくが家族に遅いと文句を言われるのは避けられなかった。
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