第61.3話 計画通り

(宰相の息子視点)



グロンがレトスノム公爵を襲撃して返り討ちにされて捕縛。すぐに処罰が決定してギンベス家からも勘当、当然ガンマ殿下の側近からも外された。その知らせはガンマ殿下と一緒に私も聞かされることとなった。



『そんなっ! グロンが、どうしてそんなことに!?』



自分の側近が愚行を犯して捕まったと聞いて動揺を隠せずにその場で頭を抱えるガンマ殿下。それに対して私は冷静に受け止める体を見せつつも、頭の中では喜んでいた。まったくもって想定どおりなのだから。



正直、グロンの存在は目障りで仕方がなかった。脳筋で馬鹿すぎるのだが、奴の戦闘能力は侮れない。そのうえ同じ側近の私と馬が合わなかったため、近い将来に私の敵として立ちふさがる可能性は大いにあった。



だからこそ、言葉を使ってグロンが勝手に自滅するように仕向けてきたのだ。奴と二人で話している時に、レトスノム公爵家に悪い印象を与えるようにするという実に遠回しな方法で。その結果、思った以上に大事を起こした。これだけのことをすればグロンの父親も騎士団長の地位を辞するだろう。息子のことで責任を感じるのは間違いないからな。



立て続けに喜ぶべきことが起こる。それはガンマ殿下とミロア嬢の婚約破棄が成立し、ガンマ殿下が王太子から外されたのだ。しかも、将来は男爵と聞いたのだから笑いを堪えるのに苦労した。



グロンとガンマ殿下のことはまたたく間に学園にも広まった。そのせいで、ガンマ殿下と私の周りが面倒なことになった。多くの視線を受けたり、陰口を叩かれたり、あからさまに軽んじられたりと状況は一変した。それはミーヤも同じようであり、女子の間では孤立が深くなった。まあ、彼女のことはもういいだろう。元平民の小娘など適当に慰めれば問題はない。



ガンマ殿下は私に八つ当たりするようにもなったが、そんな事を気にしてもいられない。これだけのことが起こったのだから、王家の求心力は随分と低下しただろう。ただでさえ王家の恥さらしが学園で目立つのだから、後は私自身のことを中心に考えていけばいいのだ。



全ては私の計画通りなのだから。



私の狙うはミロア・レトスノム。あのつまらない侯爵令息の報告では彼女は見るからに変わったようだ。これまでガンマ殿下を追いかけるだけの頭お花畑の女ではなくなったようだが、そんなことは些細な問題だ。多少難易度が上がったようだが所詮は女。あのガンマ殿下に惚れるような馬鹿が根本的なところまですぐに変わるはずがない。



なんとしてもミロア嬢を我が物にして公爵家をいのままにしてみせる。この私が王になるために。

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