第58.2話 横恋慕
(元側近視点)
僕の名前はローイ・ミュド。侯爵令息、それも『名ばかりの侯爵』令息です。そのせいで周りの貴族……特に上級貴族からは軽んじられることがたまにありますが、僕も僕の父ハトロイ・ミュドも気にしません。そんなものに構っている暇もないのですから。
我が家は戦争が終わった後に侯爵に昇格されましたが、元は伯爵家。戦場で父と今は亡き叔父上がそこそこ活躍されたおかげで昇格できたそうですがそれは表向きの理由であり、本当は戦争中に少なくなった上級貴族を増やす目的があったそうです。王家としては上級貴族を増やすことで国を安定させるという思惑があったそうですが、『名ばかり』などと陰口を言われる身としては迷惑に思います。
そんな背景があるからこそ、僕も父も本当の意味で侯爵と胸を張って名乗れるようになるべく精進することを心がけてきました。父は領地を守り領民を守り、僕は立派な貴族になるべく勉学によって上級貴族が持つべき誇りと知識を身につけてきました。
その努力を認めてもらったということで国王陛下によって王太子になったガンマ殿下の側近に選ばれました。その時は本当に誇らしかったのです。……後になって失望することになってしまいましたが。
王太子のガンマ殿下は最低な男でした。勉学や武芸を軽んじ、平民や下級貴族を見下し、挙げ句には己の婚約者すら蔑み続けるばかり、正直王族にあるまじき人格の男です。僕と同じく側近になった二人も自分のことしか考えていない人のようで、僕はすぐに側近になるべきじゃなかったと思い始めてしまったほどです。
それでも、すぐに側近を辞められませんでした。何故なら、ガンマ殿下の婚約者に恋心を抱いてしまったのです。それがミロア様です。
ミロア様はいつも殿下のことを執拗に追いかけ回し続けてかえって殿下に迷惑をかけてばかりでしたが、前向きに殿下を追いかけて愛を込めた言葉と笑顔を向けるミロア様の姿勢を美しいと思ってしまったのです。ミロア様のことを大多数の人が変だとかおかしいと言うのですが僕はそんなミロア様が僕は好きでした。
ただ、ミロア様はガンマ殿下の婚約者。僕の思いは横恋慕に過ぎない、決して実らないことは分かっていたので、この思いは胸に秘めておこうと思いました。だからせめて、ミロア様が幸せになれるようにとガンマ殿下にもっとミロア様と向き合うように諌め続けました。……全く聞き入れてくれませんでしたが。
それでも、僕はできる限りガンマ殿下とミロア様との関係を縮めようと諌め続けました。しかし、殿下と男爵令嬢のミーヤ・ウォームが関わることがあって状況は大きく変わることとなりました。
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