第58話 手紙の内容
ミロアは前世の知識を誰にも言うつもりはない。絶対にだ。それは周りの人たちのことを考えてのことなのだが、もしもミロアが危惧していることの一つが現実となればその定かではない。
(私の他に転生者がいた場合は……考え直すかもしれないわね。私だけが例外とは限らないし……)
前世の記憶がある人間は自分だけとは限らない。そんなふうにミロアは考えている。そのような人間が現れた場合、立ち回り方も気をつけなくてはならないのだ。その時が来た時に前世のことを知ってもらう必要があれば……そうするしかない。それがミロアの結論だった。
(現時点で私以外の転生者がいる可能性は無さそうだけどね。この手紙の差出人もその可能性があるのかどうかはこれから確かめるか)
ミロアは手紙の封を開けて内容を確認する。
◇
「…………」
「…………」
ミロアとエイルは手紙の内容を見て、大体理解した後で静かになった。
「これ、どういうことなのかしら?」
「私の意見でいいのですか?」
二人は手紙の内容……もといローイ・ミュドの思惑がいまいち理解できなかった。というよりは、何のためにろくに接点のないミロアにこんなことを知らせてくるのかが分からなかったのだ。いや、最後の方で分かってきたが目をそらしたかったのだ。
『ガンマ殿下はミロア嬢と新たに婚約を結び直そうと必死です。側近のマークもそれに従っています。あの二人は今になってミーヤ嬢との過度な接触を控えているようですが、交流が無くなったわけではありません。つまり、ガンマ殿下との関係を完全に無にするか元の鞘に戻るかはミロア嬢次第ということになりますが、できれば関わることのないことをお勧めします。そして、オルフェ・イーノック殿がガンマ殿下達のことを不審な目で見るようになっているので彼にも関わることをお勧めできません。学園に復帰する日も近いことでしょうが、その時は是非この僕をお頼りください。必ずやお力になりましょう』
これが手紙の大まかな内容なのだが、予想もしなかったことばかりだったので困惑するのも無理はない。何しろ頼んでもいないのにガンマ達の様子やオルフェの行動のことを伝えるような内容なのだ。しかも、手紙の最後の方には自分のことを頼るように勧めている。
「お嬢様……私の意見、間違っているのかもしれませんが最後の方を見ると……お嬢様とお近づきになりたいような内容に見えます。もしかしたら……」
「もしかしたら?」
「お嬢様と……婚姻を結ぼうという目的があるのでは?」
「……やっぱりそう思うよね」
エイルがあえて言いにくいことを口にしたおかげで、ミロアは頭を抱えることとなった。
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