第41話 謝罪
情けないと思うのも仕方がない。オルフェがミロアのもとに訪れるきっかけになったのは、彼女の様子を知りたいと思うマーク・アモウの差金だからだ。学園に戻ったら、マーク・アモウに報告する事になっているのだが、どう言ったらいいかオルフェは迷い始める。
(不味いな。馬鹿正直にミロアのことを伝えれば、ミロアに対して何か行動を起こすかもしれん。だからといって嘘を吐けば側近の立場を利用して俺の家に圧力を……くそ、考えるのはその後だ)
考えるのは後にしてミロアとの会話に集中することにするオルフェ。事実、今の会話のほうが重要だ。
「何度も言うけど私はもうガンマ殿下に未練はないの。でもこれからが問題よ。あれだけ私のことを邪険に扱っていたくせに殿下の方は婚約解消に反対みたいな姿勢を見せるのよ。国王陛下や王妃様は言うまでもなくね」
「………公爵家の後ろ盾が無くなって王太子の地位を失うのを危惧してからか」
「そういうことね。さっきも言ったけど、先日ガンマ殿下が屋敷にやって来て説得しに来た時に暴力を振るわれそうになったから、それを交渉材料にして父は婚約破棄を王家に申し出てるの。ガンマ殿下の行いは目に余るものとして流石の王家も首を縦に振るしかないと思うのよね」
「………性懲りもなく暴力か。ガンマ殿下は何を考えてんだ? 自分が不利になると分からなかったのか……ん? 公爵は今王宮に向かっているのか?」
「ええ。殿下の暴挙が許せなくて大急ぎで準備して王宮に向かったわ。あの剣幕からすれば婚約破棄できそうね」
「そ、そうか……」
ミロアは父バーグの張り切って王宮に向かう姿を思い出して苦笑する。ただ、オルフェの方は苦笑いするしかない。公爵と王家の関係が悪くなれば内乱が起きるかもと少し思ったからだ。戦争で大活躍した公爵を敵に回すということはそういうことだ。
「出来ることなら今度こそ婚約が無くなることを願うんだけどね。この際、婚約解消でも婚約破棄どっちでもいいの。あの暴力王子から離れられるならね」
「ミロア、君はそこまで………」
(よし。これなら私にガンマ殿下に対する未練は無いと思われるはず!)
「………もっと早く見舞いに来るべきだった。すまなかったミロア……」
「!?」
オルフェは頭を下げる。いきなりの謝罪にミロアは少し動揺したが、本音を聞けるパターンだと思ってそれらしく振る舞う。
「え? 何言ってるのよ。オルフェが謝ることないでしょ。幼馴染みだけど学園では私っておかしな頭になっちゃってたし………」
「いや、それだけじゃないんだ……」
オルフェは気まずそうな、申し訳無さそうな顔でミロアにとある事実を告げる。自分自身が嫌われる覚悟を決めて。
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