第41.2話 噂の真実
(侯爵令息視点)
……あまりに酷すぎる。それがガンマ王子に対する俺の評価だ。まさか、ミロアのことをそんなふうに扱っていたなんて……!
ミロアから聞かされた学園で起こったガンマ殿下との噂の真実。それはガンマ殿下が執心する男爵令嬢に注意しようとしたミロアに対してガンマ殿下が暴言を吐きながら暴力を振るったということだった。そのショックでミロアは屋敷で引きこもってしまったゆえに休学……なんてことを……許せない。
そして、屋敷で引きこもっているうちにガンマ殿下に対する愛情が失せて婚約解消を決意した。そこまで聞いた時、俺は……心の中で喜んでしまった。本当にガンマ殿下との婚約が無くなれば、今度は俺がミロアと……なんて思ってしまったのだ。
学園でのミロアは、ガンマ殿下を執拗に追い回すあまりに周りとの関係を疎かにするようになってしまっていた。俺もそんなミロアと話す機会がなくて疎遠になっていた。いや、幼い頃仲良くしていたミロアからかけ離れていったから俺も進んで関わろうとしなかったんだ。……今思えば、俺の方から関わっていけば何か変わっていたのかもしれない。今更遅いけどな。
婚約解消を望むようになったミロアは父である公爵に頼んで、公爵もそれを受け入れたと聞いて俺は内心驚いていた。実を言うと多くの貴族の間では、王家と公爵家の政略結婚であることは周知であるがそれは公爵家の方から強く望んだものだと思われていたんだ。我が国で唯一の公爵家は王家に匹敵する力を持つと言われているせいか、王家に屈しないとも思われているんだ。
……それに公爵も怖そうな人だし、王家の方から政略結婚を望まれても受け入れるとは思えなかったのに。いや、ミロアがガンマ殿下に惚れていたから受け入れたのか? だとしたら、残念な結果になったということか。公爵は内心で婚約解消できる口実ができて良かったのかも……いや、こんなこと考えている場合じゃない。
ただ、まだ正式に婚約が白紙になるとは限らない。ガンマ殿下を含めた王家の方は、公爵家との関係が薄れてしまうようなことは避けたいだろう。事実、王家は一度公爵の申し出を断っているそうだ。上級貴族として王家の判断は俺もよく分かる。力の強い貴族との縁を持つことの意味は王家でも、王家だからこそ価値観を理解しているのだろうな。
腹立たしいことに、それだけはガンマ殿下ですら分かっているとうことか。単身でミロアに会いに行くのがその証拠だ。そんなことをするくらいなら男爵令嬢と遊ぶなよと言いたいくらいだ。
しかし、ガンマ殿下は大きなミスをしでかしたようだ。暴力未遂だなんて馬鹿なことをわざわざこの屋敷でしでかすとは……同じ過ちを犯すなんて王族としてどうかと思う。ミロアを軽んじるにもほどがある。俺もまた怒りが湧き起こるが……それと同時に終わったなと思った、ガンマ殿下がだ。
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