第40話 敵でも味方でも

ミロアとガンマの間に起こったことを聞かされてオルフェが悔しがることはないはず……と思ったが、ミロアは前世の知識を応用して推測する。



(こんな話を聞かされてオルフェが悔しがる……あの時、オルフェはいなかったはず……実は近くにいたなんてこともない……少し騒げばオルフェなら気づくはず……もしや、その後からガンマ殿下に関わることになった? 一応侯爵令息だから新たに側近候補になったとか? だとしたら……それを後悔しているからなの? まだ判断に足る情報が少ないわね……)



ガンマか側近と繋がりがある可能性が浮上したオルフェ。だが、ミロアは警戒するよりもオルフェを観察し情報を得ることが重要だと考えて話を続けることにした。そもそも、オルフェが彼らと繋がっていたとしてもミロアとしては接し方を変えるだけでいいのだ。



(オルフェが敵だとしたら、それならそれで利用するだけ。まあ、その後で味方に寝返ってくれるか、実は元々味方だったのならいいんだけどね。恋愛小説でも序盤では敵か味方か分からない人もいることだし)



オルフェが敵でも味方でもいい。そんな思考ができるのは、やはり前世の記憶の影響が強いからだろう。こんなことを父であるバーグや身近な臣下達が聞いたら頭を抱えそうだとミロアは面白そうに思う。勿論、本当に言ったりはしないのだが。



「オルフェ、私のことで怒ってくれるのは嬉しいけど話を続けましょう?」


「! ミロア、そうだな……すまない……」



ハッとなったオルフェは申し訳無さそうにミロアに謝る。ただ、ガンマに対する怒りは残したままだ。



「ミロアは本当に殿下に愛想つかしたんだな。当然といえば当然か……殿下が平気で女性を突き飛ばしたりするような男だったなんて……気づけば俺も力になりたかったのに……」


「オルフェ、相手は腐っても王族よ。きついことを言うけど王族に意見するなら公爵か側近くらいの立場でなければ効果はないわ。そもそも、ガンマ殿下は面倒な男だから尚更ね」


「……そうだな。侯爵じゃ口で言っても無駄か。側近でもないしなるつもりもないしな」


「?」



側近でもないし『なるつもりもない』と口にしたオルフェ。その言葉にミロアは反応した。その言葉の意味を一瞬で推測する。



(つまり、オルフェは側近そのものじゃないしなることはない。そう考えていいのよね。今後は心変わりしない限りは)



側近に『なるつもりもない』と口にしたオルフェの頭には、マーク・アモウとグロン・ギンベスの顔が浮かんでいた。二人共オルフェが嫌う存在。今の王太子の側近だ。



(……流石にあの二人と同僚の立場になるなんて御免だな。特にマーク・アモウのやつとは顔を合わせたくもないが、そういうわけにもいかない約束をしてしまった。本当に情けない……)




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