第25話 用心しすぎ
悪い予想が当たったと思うミロアはすでに考えていた台詞を口に出す。バーグに変に思われるかもしれないが今はそんなことも言っていられない。
「お父様、もし明日に王宮に出向くというのなら多くの信頼できる護衛を率いて行くべきです」
「な、何?」
「王宮までの道中で危険な目に遭う可能性を考慮してほしいのです」
「ミ、ミロア?」
「屋敷に訪問してきたガンマ殿下のことを考えれば、今度はお父様を狙ってくる可能性もあります。王族の権力を乱用して襲ってくる可能性も否めません」
「む、それは……」
確かにありうることだ。ガンマの狙いはミロアを利用して婚約解消を取り下げることだった。娘が駄目なら父親に狙いをつけようとしてもおかしくはない。
「それにお父様は公爵です。王家との婚約が白紙になりそうだと聞いて良からぬことを企む者達が何か仕掛けてきてもおかしくはありません。公爵家を後ろ盾にしたい者は数多くいます」
「そうだな……婚約が白紙になったらミロアを欲しがるかもしれん」
公爵家はレトスノム家だけなのが今のドープアント王国の現状。それ故に公爵家との繋がりを求める貴族家も多いのだ。勿論、敵対者も少なくはない。
「なので、毒を盛られる可能性を考慮して毒味係や専属医師を連れて行くこともお勧めします。いえ、絶対に一緒に連れて行ってください」
「……え?」
「それに、暗殺者に狙われる可能性も考慮して服の下に鎖帷子などを着ていくことも大事ですね。服の下に着込めば分からないでしょうから」
「ちょ、ちょっと待ってくれミロア! そこまでするのか!?」
毒殺に暗殺、それは前世の知識を持つミロア独自の考え方だ。その対策法なども知識の応用としてバーグに提案しているのだが、この辺で驚かれ始める。
「そして、王宮に向かう時も屋敷に向かう時も意図的に遠回りして行くことで暗殺などを回避できる可能性が高くなるので、迅速かつ遠回りするルートで王宮に向かってください」
「ええー!?」
バーグは目を丸くして驚いた。そして、スラスラと王宮に向かう準備について述べるミロアについていけなくなりそうだった。バーグの常識としては、いくらなんでもミロアは用心しすぎるからだ。
「……ミロアが私を心配してくれることはよく分かった。だ、だから、落ち着かないか?」
「私は至って冷静です」
バーグは真顔で自分は冷静だという娘に少し呆れながらも苦笑した。それに十分冷静にもなった。
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