第26話 心配

バーグはとりあえずミロアの提案したことの九割くらい準備すると約束した。



「……ミロアの提案したことはやりすぎる気がするが、ミロアがそこまで心配してくれるというなら、それだけの準備を整えてから明日出発しよう。だけど流石に私の影武者を用意するのは無理だからね」



影武者とは身代わりのことだが、この世界でもそれは通じるらしい。しかし、どうやらバーグの影武者を用意するのは非常に難しいようだ。



「確かに、お父様のような大きくて逞しい男性は限られていますでしょうから、そこは残念ながら妥協します」


「そ、そうか。逞しいか、ありがとう。……まあ、とりあえずこの話は置いといて――」



バーグは大きくて逞しいと言われて苦笑した後、話題を変える。ミロアの報告が先になってしまったが、バーグにとって早くミロアに伝えたかった話があった。それは勿論、義母と義妹のこと。



「話は変わるが、スマーシュとイマジーナにミロアが会いたいと伝えたところ、いつでも喜んでと言ってくれたよ。これから詳しい段取りを決めることになるが、ミロアが学園に復帰する前に茶会を開いて、この屋敷に一緒に住むかどうかも話し合うことにしているんだよ」


「まあ! それはいつ頃になりますの?」



ミロアは嬉しかった。どうやら、肝心の義母と義妹には拒絶されるようなことはなさそうだった。目の前の父親の顔を見ればよく分かる。バーグもまた嬉しそうに話しているのだから。



「ただ、スマーシュとイマジーナにはミロアが怪我をして療養中と伝えているから、茶会は今から二週間前後……その少し前あたりになるかな」


「つまり、お父様が王宮から屋敷に戻った後すぐということですね」


「そういうことだ。スマーシュとイマジーナのいる屋敷には明日王宮に行く前に寄っていくから、その時に伝えるつもりだ。この屋敷からそんなに離れていないからその道中に危険はないから安心していいよ」


(あ、私が心配性と思われているわね)



王宮に行く話でミロアに極端に心配されたせいか、バーグは義母と義妹のいる屋敷に寄ることに危険はないと言う。確かに彼女たちのいる屋敷は王宮ほど離れていないし、慣れてしまった道のりならば安心するのも仕方ない。だが、ミロアはそこで新たな懸念点を見出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る