第24話 不安

屋敷が少し慌ただしくなる。どうやらバーグが帰ってきたようで使用人たちが出迎えに行ったのだ。



(……お父様にはガンマ殿下のことを報告することになってる。でもその後の展開には気をつけないとね)



この時ばかりは、前世の知識がミロアに不安を与える。






「――ということが屋敷であったのです。何とか帰ってもらいましたが、大変苦労しました」


「……なんということを……あの王子は何を考えているんだ!」



書斎にて、屋敷に帰ってきたバーグはミロアから報告を聞いた。バーグの留守中にガンマが訪問してきて、強引に屋敷に入り、ミロアを呼び出して婚約解消のことで文句を言ってきたり、反論されたら逆上して殴りかかろうとしたり、最後は護衛に怖気づいて逃げ帰ったことを知った。



「まさか、屋敷に乗り込んでくるとは思わなかった……保身のために婚約解消を防ごうとする可能性を考慮してはいたが、私の考えが甘かったようだ。それだけに許せん。流石にこれほどの暴挙を受けたとなれば、王家と言えども婚約破棄されても文句は言えん!」



バーグは怒りに震える。ミロアの予想通りの反応であり、当然として心配してしまう状況でもあった。この後の予想では、今すぐにでも王宮に向かう勢いだからだ。



(こういう時、娘思いの父親が感情的になりすぎて行動した結果、罠に嵌って大変な目に遭うパターンに近いのよね。それに公爵で王家に次ぐ権力を持っていることだから、それだけに敵も多く、付け入ろうとする輩もいる。最悪、殺される可能性もありうる。不味い状況になったけど報告しないのは不自然だから仕方ないのよね)



ミロアは前世の知識から、このままでは父バーグに悲劇が起こるのではないかと思ってしまうのだ。転生した者の親族が危険な目に遭うパターンはそこそこある。特に上級貴族の父親が比較的に多かったと前世の知識にあったのだ。


しかし、ミロアは公爵令嬢としてガンマの暴挙について報告しないわけにもいかない。それならば、できる限りバーグに冷静に準備してから行動してもらうことにした。この父なら娘の言葉を聞き逃すはずがないだろうから。



「お父様、もしや近いうちに王宮に向かうおつもりですか?」


「その通りだ。明日の朝すぐに出発する。何なら今すぐ王宮に出向いて婚約破棄を申し出ていってもいい!」


(! やっぱり、だけどそれは不味いわよ)



明日の朝に王宮に向かうということは、準備する時間がギリギリ足りるか足らないかということだ。少なくともミロアはそう思う。

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