第14話 突然訪問

ミロアが目覚めてから十一日目、ミロアは上機嫌だった。昨日の夕飯時に義母と義妹と会いたいと願い出たところ、予想通り父に非常に驚かれたのだが、ミロアの方から歩み寄りたいという思いを伝えたら喜んでくれたのだ。しかも、今日彼女たちに会って相談して、会う日取りを決めると言ってくれた。



「お父様の話からして、二人共悪い人じゃないし、ならないわね。そして私も悪くならないけどね」



勉強が終わった後の休み時間、ミロアはコーヒーを飲みながら昨日のことを思い出して微笑んでいた。


だが、そんなミロアの気分を壊す存在が彼女が療養する屋敷にやってくるのだった。



「ミロアお嬢様、お嬢様にお会いしたいという方が屋敷の前におります」


「え?」



エイルの言っている意味がわからなかった。ミロアに会いたいという者など親族以外にいるとは思えないし、何よりもエイルの様子が変だった。声が硬いし、かなり動揺して見える。



「誰なの?」


「お、王太子ガンマ殿下です……」


「はぁっ!?」



ミロアは耳を疑った。エイルの口から王太子ガンマの名前が出たのだ。そんな男がミロアに会いたいという相手なのだと。



「もう一度言ってくれる?」


「……王太子ガンマ殿下です」


「……本当なのね(まじかよ)」


「……はい」



ミロアは頭を抱えた。ガンマはミロアのことを嫌っている。そんな男がわざわざ屋敷にまで出向いた理由があるとすれば一つしかない。



「婚約解消の申し出に言いたいことがあるわけね……」



父バーグの話によれば、王宮で婚約解消という話になった時にガンマは取り乱し喚き散らしたようだ。おそらく婚約解消のことでミロアに対して文句を言いに来たのだろう。



(まずいわね。今はお父様が義母と義妹に会いに行っている時だわ。こんな時にあの男が来るなんて……)



ミロアは嫌な予感しかしないと思っている。だからこそ、こういう時にどういう対処をすべきか前世の知識をフルに使って考えた。



(こういう時……格上の相手なら格下の婚約者に対して高圧的……特に男ならそうだ……それなら会わないほうがいいけど相手は王族……よほどのことがない限り無視するわけにもいかない……でも、無視しなかったら強引に迫られるかも……その場合は愛する男が守ってくれるんだけど、私にはいない……いや、守ってくれるなら恋人でなくてもいい……例えば騎士や衛兵なら……)


「あの、お嬢様?」


(相手が力づくに出る前に……相手を不利な状況にできれば……不利にできる情報が必須……。まてよ……もし殿下が私を傷つけようものなら、婚約解消の材料になる……それ以前に突然訪問してきたんだから、それも材料の足しになるかも……でもそれは私が傷つくというリスクを負うことに……)


「お嬢様、どうされましたか?」

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