第13.5話 お嬢様に変化

(侍女視点)



私の名前はエイル・ロウド。レトスノム公爵家に仕える侍女だ。屋敷のことは勿論、仕える主である公爵の旦那様やその御家族のことも熟知している。無論、ミロアお嬢様のこともよく理解していると自負している。



だからこそ、お嬢様に明確な変化が起こったとすぐに分かった。



ミロアお嬢様が窓から落ちて意識を失ったと知った時は絶句した。そして恐怖もした。旦那様はミロアお嬢様のことをとても心配なさっていたため、そのお嬢様に何かあれば……言うまでもない。それだけにお嬢様が意識を取り戻した時はホッとした。



ただ、その後でお嬢様が何か変わられたと気づいた。何しろ、目覚めたすぐに旦那様に会いに行こうとなさったのだ。あれだけよそよそしかった父親のもとに痛みを堪えながら向かうなんて今までのお嬢様らしからぬこと。心境の変化としては些細なことでもない。



その後でも大きな変化を見せつけられた。あんなに慕っていたガンマ殿下との婚約を解消したいとお嬢様自ら望んだというのだ。そればかりか私生活を厳しく見直したり、あんなに伸ばした髪を切って慎ましい化粧に変更したりと何度も驚かされる。



特に驚かされたのは、父親である旦那様のために何かしてあげたいと口にされたことだ。ここまでいくと心境の変化というよりも豹変というべきか……。



直接話をしてみるとお嬢様はとても大人びた考えを持つようになられたと思った。私は差し出がましいようだが、現在レトスノム家の家族間に関わる溝の修復のためにお嬢様が義母様親子に歩み寄ればと提案してみた。



義母のイマジーナ様と義妹スマーシュ様。かのお二人のことは、お嬢様に覚悟がいることではあるのは理解しているが、『今の』お嬢様ならできるかもしれないと賭けに出た。するとお嬢様はそれがいいと言ってくださって私は感激した。



ちょうどいいので私の知る限りのことをお嬢様にお話しした。義母様親子のことは勿論、屋敷の使用人の人間関係、周辺貴族の噂話、その他諸々……とても楽しかった。



その日の夕方、早速お嬢様は父君である旦那様に義母様親子と歩み寄りたいことを伝えられた。そして、色よい結果になったようだ。



「ありがとうエイル。お父様は早速義母様達と私が会う段取りを考えてくださるんですって!」


「そうなんですか! それは良かったです!」



本当に良かった。ガンマ殿下しか見えていなかったミロアお嬢様がこんなに良い方に変わった本当に良かった!






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