第15話 掌に踊らせる
ミロアは深く考え込む。実は、小声で口に出して呟いているのだが、それにも気づいていない。そんなミロアをエイルは心配するしかない。
(学園で私を突き飛ばすくらいだし……これを利用すれば婚約解消にいけるかも……後は、どうやればいいか……時間も人も足りない……まず、信頼できてなおかつ強い人に見張ってもらって……)
「お嬢様!」
「ふえっ!?」
エイルに大声で叫ばれてミロアは現実に戻った。
「お嬢様大丈夫ですか!? さっきからお呼びしても何の反応もなさらないので………」
「ご、ごめんなさい。大丈夫だから……ねえ、今すぐに屋敷で一番強い人を呼べる?」
「え? 一番強いって護衛の方をお呼びするってことですか?」
「王族とはいえ相手はガンマ殿下だからね」
ミロアは考えた末に、この屋敷で一番強い人物に王子から守ってもらうことにしたのだ。前世の知識があるからもう少し計画を立てたかったが、時間もないためこれが精一杯だった。しかし、幸いなことに護衛として強すぎる人物が屋敷に二人もいる。たとえ王族が相手でも動じることなくミロアを守ってくれるような強い人が。
(とりあえず、今は私の身を守ることが先決ね。私を突き飛ばすのだから護衛は絶対重要だわ)
「ええ、そうね。衛兵を一人か二人呼んでくれる? 年長者で度胸がある人がいいわ。分かるでしょう?」
「分かりました。では、ダスターさんとスタードさんを呼んできますね」
エイルの挙げた二人は公爵家の私兵だ。この二人はミロアが生まれる以前から公爵家に仕えており、公爵家に対する忠誠心も厚い。高齢なため当主のバーグの護衛を辞して、他の兵士の訓練だったり、屋敷の衛兵をしていた。
(この二人が見ていてくれれば安心だわ。お爺さんだけど強面で屈強な人たちだから)
「ええ、悪いけどすぐにお願い。私も支度をしなきゃ(憂鬱だけどね)」
ミロアはすぐに来客用のドレスに着替え始める。ただ、嘗て着ていたような派手なドレスではなく、大人しく慎ましい印象のドレスを用意する。
「いい機会だから、今の私を見せつけてやろうじゃない。最初に驚かせたほうがこちらの掌に踊らせやすいだろうしね……ぷっ、くくく……」
ミロアは貴族らしからぬ笑い方で作戦を練り直す。
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