前日譚3 マジか!マジなのか!?
夏休み後半。瀬戸 友士に誘われ俺は喫茶店に来ていた。
「俺キメようと思う」
「ヤベー薬?」
「告白」
なぜそれを俺に言うのだろうか?まあ恐らくだがそれを言葉にして俺に言うことで退けないという覚悟を決めるためだろうが。
「もうすぐ江藤も来るし」
「じゃあ俺退けようか?」
「いや、居てくれ。決心が鈍る」
いや友達の前で告白する方が怖いだろう。
「や。こんにちは」
「来たよ」
そして来るその時。·····いやまて何で聖川も居るんだ。
「聖川も誘ったのか?」
俺は友士に聞いてみた。応えたのは江藤だった。
「たまたま会ってね。折角だから一緒に行こうかって」
タイミングの悪さよ。俺は座っている席を退くと江藤を友士の正面に、聖川を友士の隣に着かせた。
それぞれが頼んだ飲み物が到着し、それぞれが飲み始めたときだった。
「あ、そうだ。江藤さん今の内に伝えたいことがあったんだ」
これみよがしに思い付いたように話し始める友士。
「ん?なに?」
江藤はキョトンとした表情を浮かべていた。
まあ、この流れと状況で告るワケは無いだろうと俺はコーヒーを口に含む。缶コーヒーとは違う香りを楽しみつつ飲み干そうとした時だった。
「俺、江藤さんが好きだ。付き合って下さい」
ゴフッ!!吹いた。聖川が。俺はコーヒーを飲み干す。
「マジか!マジなのか!?」
「マジだ!」
俺は友士に聞くとマジメに返された。顔をべちゃべちゃにされたことすら気にも留めず思案する。
いやいくらなんでも友人2人の前で告白ってなんだ?イカれてんだろ。
「えーと·····」
ほらみろ江藤だって引いてるだろ。江藤の顔を見ると少し緩んでいるようにも見える。というか満更でもない顔をしていた。
アリなのかよ。
そして正面の聖川はどこか遠くを一点見つめのまま口からコーヒーを垂れ流していた。
そんなことは露知らず。友士と江藤は2人の世界で。
「うん。私も·····瀬戸君が好き。よろしくお願いします」
帰りてぇ。
「はい。これ」
「ん?帰るのか?」
「あとは自分等でやってくれ·····じゃ」
俺は千円札を机に置いた。顔を拭き、放心状態の聖川を連れて店を出た。
「服·····べちゃべちゃだぞ?」
「·····ただのしかばねのようだ」
どうやら冗談を言える位には戻ったらしい。
結局俺は告白を手伝ってくれと言われたが何もしなかった。言っても自分等でどうにかすることだし、初めから結果は分かりきっていた。行動にするかどうかくらいしか変わりようがない結果だ。
「ちょっと休むか」
公園のベンチに失恋した男女が2人。双方共にこの世の終わりのような顔をしていた。
「知ってた?」
「まあ何と無く」
嘘だ。超知ってた。最初っから聖川がフラれることは超分かってた。
「キツいねこれ·····」
「そりゃあ·····そうだろうな·····」
その辛さはよく分かる。
「ちょっと泣きそう·····」
「そうか」
因みに俺は泣くことすら出来なかった。絶望感に打ちのめされ身体から血の気が引いたような感覚に陥った。
「はぁ·····」
そして大きな溜め息を1つ。2人空を仰ぐとそれはそれは快晴だった。
「空が青いなぁ·····」
聖川の目には光が無く、涙が滲んでいた。
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