第8話 なんでそうなる?

 寝不足全開の日から2日。朝早くから裏庭の家庭菜園の世話をしていた。日課ではあるもののキツイものはキツイ。親父から頼まれたものなので、ある程度責任感を持ってやってはいる。

 夏野菜は4つほどキュウリ、ピーマン、ナス、トマト。これだけあれば食費はだいぶ軽減出来る。


「とは言え、休日がほぼ潰れるのはキツイよな」


「大変だね。手伝おっか?」


 聖川がいたぁ·····何なのコイツ暇なの?なんで居んのよ?まだ朝の6時とかだぜ?


「不法侵入で訴えさせて貰います」


「ごめんなさい」


 さて。


「で?どしたよ?」


 不法侵入されてるのに話を聞くって。俺優しいな。というか、聖川じゃなきゃ薙ぎ倒してた。俺、聖川好きすぎじゃね?好きとは違うか。


「ちょい用事が」


 手提げバッグを持っての来訪。しかも、その手には無数の絆創膏が。ヤな予感が。


「料理教えて」


 そして始まる唐突な料理回。


「だから、包丁は引きながらか前に押しながらじゃ無いと切れねぇんだって」


「押してるよ?」


 それはまな板に押し付けてるんだよ。


「力任せにやっても独歩は切れねぇんだって」


 俺は聖川の包丁を持つ手に手を添えて説明する。


「こう、包丁を前後にスライドさせるみたいに」


「なるほど·····」


 現在イタリア風素麺のタレを作っている。トマトを1センチ角に切り塩振る。ナスも同じく切りオリーブ油で纏め、刻んだ大葉を混ぜ混む簡単なもの。そこに素麺を突っ込んで完成というシロモノなのだが。


「包丁もまともに使えないとはな·····」


 力任せにズドンズドンやってりゃあ·····そりゃ指も切るでしょうよ。むしろ指が繋がってるだけマシなもんだ。


「出来た」


「そしたらボウルに移して塩強めに振って·····」


 なんやかんやあったが何とか形にはなった。味も悪く無かったし。


 ただ食事中にこんなことを話すとは。


「ね。私と付き合おうよ」


 何故だろう。突拍子無さすぎだろ。


「なんでそうなる?」


「まあ、少し考えたんだけどね·····」

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