第24話 二股疑惑!?
「ふわぁぁぁー。眠い」
俺は目を擦りながら風音との待ち合わせ場所で風音の到着を待っていた。
昨日は楓を寮の部屋まで送り届けて自分の部屋に帰った時には12時だったためそれから寝る準備をして寝れたのは夜中の1時ごろだった。
完全に寝不足だ。
「おはよう天道。昨日はあれから大丈夫だったか?」
そんなことを考えていると風音がやってきた。
風音とはダンジョンを出て少ししてから別れたため楓を無事に寮まで送り届けたか心配なのだろう。
「おう。問題なく送り届けたぞ」
と返事をして俺達は歩き始めた。
そこからは今日の授業の話とか他愛もない話をしていたのだがなんかやけに見られているような気がする。
「なあ、風音。なんか俺見られてないか?」
気のせいかななんて思いつつも俺は風音に質問してみた。
「気のせいではないな。普段から見られることはあるが今日は一段と見られている気がする」
やっぱり風音も感じているようだ。
「……昨日のことがバレたとか?」
「いやそれはないだろう。天道、私が見ていない隙に何かやらかしたのか?」
少し心配になり風音に質問したが即座に否定された。
まあそれもそうか。あのダンジョンで起こった事を知ることは難しいはずだ。
「いや、何もしてないって……てか昨日俺が何をしていたかは風音も知ってるじゃん」
「それはそうなのだが……」
そんな事を話していると教室に着いた。
教室のドアは空いていて俺達が教室に入ろうとしたらクラスメイトの全員がこっちにやってきた。
「天道くん! あの噂を本当なの!?」
「天道、貴様許さんぞぉぉ!!」
「カケルも男の子デスね!」
「て、天道くん……」
「あの後何があった! 天道翔!」
と女子は目を光らせていて男子は俺へ憎悪の視線を込めて見てきた。
それに全員が喋ってきた為何を言っているのかほとんど聞き取れない。
「ちょっ!? 一旦落ち着けって! どうしたんだよ!」
俺は全員を落ち着かせるようにいうが全然落ち着いてくれない。
むしろみんなヒートアップしている。そして俺だけではなく何故か風音もみんなから囲まれている。
「このクラスに天道翔くんは居ますかー?」
すると突然後ろから声が聞こえてきた。後ろを見ると丸メガネをかけたツインテールの美少女がいた。
「お、俺ですけど」
突然の訪問者の襲来に静かになる。それは俺を囲んでいたみんなも一緒で全員が黙り込んでいる。
「ども! 私は新聞部の部長で3年生の暁なぎと申します!」
と元気いっぱいに挨拶された。
「俺は天道翔! よろしく……お願いします!」
フランクに挨拶されたせいでつい敬語をなくしてしまいそうになるがなんとか敬語で挨拶する。
「? 敬語は苦手かな?」
俺の挨拶で疑問を感じたのかそんな事を聞いてきた。
「そうですね……苦手です」
「そっか! なら私には敬語じゃなくていいよ! なにせ私は取材する側だしね!」
正直にいうとそう言ってくれたそれにしても取材する側というのはどういう意味だろうか? まあいいか。
「ありがとな! なぎ! 俺、なぎとは仲良くできる気がする!」
俺がそういうと周りは驚いているようだった。
「初対面でいきなり名前呼び……この積極的なコミュニケーションが財閥の子供と仲良くなる秘訣なのかしら」
とぶつぶつと言いながら何かをメモ帳に書いていた。
「あー、そういえばなぎは俺に用事でもあったのか?」
なぎは今もメモに何かを書いているが最初に俺の名前を出していたはずだ。
なら俺に用事があってここまできたのだろう。
「そうだったわ! コホンッ、単刀直入に聞くけど冬月さんと鈴木さんの2人に二股をかけているというのは本当かしら?」
楓と風音に二股? 二股ってなんだ?
「……なんの話だ?」
「おっと、シラを切るつもりね! でもね天道くん! ネタはあがっているのよ!」
と言ってなぎは俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには俺が楓にお姫様抱っこをしている姿がきちんと撮られていた。
角度のせいで楓が足の骨を折っている部分は入っていないようだ。
「冬月さんにはお姫様抱っこして鈴木さんとは毎朝仲良く学校に登校していているという証言は集めてあるわ! さあどっちが本命なの? 鈴木さん? それとも冬月さん?」
ぐいぐいと顔を近づけてくるなぎに戸惑ってしまい少し引いてしまう。
「暁先輩、私も冬月も天道とは付き合っていません」
俺が困っていると風音が助け舟を出してくれた。
「えっ、それ本当なの?」
なぎは予想外の言葉を受けたと言わんばかり困っている。
「ん? 教室の前にこんなに集まってどうしたのかしら?」
俺達が話していると楓がやってきた。
「んんんん! ちょうどいいところに冬月さん! 私は新聞部部長の暁なぎです! この写真についての真相を教えてください!」
と獲物を見つけたと言わんばかりの目つきでなぎは楓の方へと振り向いた。
「この写真って? ……ななななな!?」
写真を見た楓は顔を赤くしてワナワナと震え始めた。
「おっ、その反応は何か隠していることでもあったのですか!? 例えば天道くんと付き合っているとか!」
「そ、そんなわけないでしょ! 天道くんとこの私が!? じょ、冗談じゃないわよ!」
と顔を赤くしながら否定をしているがその反応は付き合っているのを隠しているみたいな言い方だった。
俺と楓は付き合っていないのに、なんであんな反応してるんだ……
「フッ、そうですか……」
となぎはなぎで完全に勘違いをしている。仕方ない。俺が弁解してやるか。
「なぎ、その写真は楓が怪我をしていたから寮まで送っていた時にだれかに撮られた写真だぞ?」
「これは私の撮った写真です! 怪我をしていたですか? 今の冬月さんは怪我をしている様子はありませんが……」
お前が撮った写真だったのか! ってそうか。昨日ポーションを飲むと言っていたから飲んだのか。
今の楓に昨日の面影はなく健康体そのものだ。治ったならよかったけど、これは説明が面倒になったぞ。
「……ポーションを飲んだのよ」
あまり言いたくなかったのか渋々と言った様子で楓は説明した。
「ポーションを飲むほどの怪我をされたのですか!? 一体どこでそんな怪我を!?」
なぎは驚いたようにそう言った。周りのみんなも驚いているようだ。
「それはちひろに頼まれたってうぉ!?」
俺が説明しようとすると風音と楓の2人が俺へ向けて飛びついてきた。そして2人は俺の口を手で塞いできた。
2人が突然飛び込んできた為俺は2人のことを支えることができずに倒れてしまう。
「ちひろさんのことは内緒にしておけ!」
「そうよ! あまり言わない方がいいわ!」
と2人が小さな声で俺にだけ聞こえるように言ってきたので俺は頷いておく。
「……これはこれは」
となぎは俺の方を見て口を手で隠している。
今の俺たちの格好は2人が耳元で囁いてきた為抱きついてきているみたいな状態になっている。
それと同時に女子は歓声を上げて男子からはブーイングをくらう。
「それにさっき出たちひろという名前……もしやちーちゃんのこと? これは二股から三股に変更ね!」
と言ってなぎは走り去ってしまった。
「あっちょっと!」
俺は引き止めようとするが2人が邪魔で起き上がれない。
それからクラスメイトには2人が事情を伏せて説明してくれたお陰で俺の疑いは晴れたようだった。
後二股というのは2人の人と付き合うという最低なことをさすことらしい。
それとその日のうちに天道翔! 三股疑惑!? などという大変不名誉な校内新聞がポスターに掲載されて、他のクラスの人から通るたびに睨みつけられたりと大変な思いをするのだがそれはまた別の話である。
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