第22話 再会です!
「って怪我してるじゃん! 大丈夫か!?」
ダンジョンの中を走り回って楓を見つけることが出来たのは良かったが楓の痛々しい状態に目を瞑ってしまいそうになる。
片足は明らかに折れていて、体中傷だらけだ。
「私の事なんて今は後でいいわ! 今すぐ逃げなさい! 化け物みたいに強いモンスターが!」
「ギャオォォォ!!!」
楓の言葉とほぼ同時に俺が蹴り飛ばした生き物が吠えた。
「……おまえ」
さっきは楓のことしか見えていなかったから気にしていなかったがこのモンスターは俺の知っているモンスターだ。
俺がいたダンジョンでわりと序盤であったヘンテコ動物だ。
「ちょっと本気出すから風音のこと頼んでもいい?」
俺は脇で抱えている風音を楓の近くに仰向けで寝かせる。
なんで風音を寝かせるのかと言うと楓を探している途中で気絶してしまったのだ。
あの時はびっくりした。その道はさっき通った! とかって言ってたのに急に静かになったもんなー。
「……は? え!? 何であなたが意識失くしているのよ!?」
楓も驚いているようだ。ちゃんと説明してあげたいがあまりゆっくりもしていられない。
なにせ目の前にいるヘンテコ化け物に俺は一度負けているのだ。
まあそのあと戦って勝てたけど今までみたいに軽く勝てる相手ではない。
俺はヘンテコ動物を睨みつける。それに反応するかのようにヘンテコ動物も俺の事を唸りながら睨みつけてきた。
「……この感覚久々かも」
全身が震える。
俺が落ちたダンジョンでは上に行くにつれて敵がどんどん弱くなっていったから死ぬかもしれないと思うほどの敵と相対するのは本当に久々だ。
「……あの化け物が警戒してるの?」
楓は困惑した様子でそう呟いた。
「来ないならこっちから行くぞ!」
俺は足に力を入れて一気に飛び出す。ライオンの顔に蹴りを入れてやろうとしたが、後ろから出てきた蛇が大きく口を開けた。
「シャーー!!」
このままだと丸呑みされる。
「よっ、と!」
俺は空中で拳を振り抜き無理やり飛ぶ方向を変える。
先に蛇の顔面をぶん殴ってやる。
そのままもう一度拳を振りかぶるが突然目の前に壁が出てきた。
よく見るとそれは壁ではなくライオンの前足だった。そしてその前足に俺は弾かれてしまう。
「うぉ!?」
俺は楓がいる方まで飛ばされるが空中で体を捻って地面に着地してヘンテコ動物の方を見る。
ヘンテコ動物はこれをチャンスだと思ったのかこちらへ向けて走ってきた。
このまま避けたら2人が巻き添えになるな。
なら俺の取れる行動は……
「やっぱりぶん殴る!」
今度は走ってヘンテコ動物に近づく。
今度は左の前足を狙って殴りに行くが左足を引かれて避けられてしまう。
「ウガァ!」
上を見るとヤギの顔が口を開けている。
「?? そういえば!?」
俺はコイツの攻撃方法を思い出したと同時に後方へ飛ぶ。
それと同時に俺の元いた場所が焼かれた。ヤギが炎を出してきたのだ。
最初に負けた時はこれが原因で負けたのだ。生き物が突然火を吐いてくるなんて思うか? あの時は火傷にもなって大変だったなぁ。……って今は関係ないか。
「……2人を気遣いながら戦うのはちょっと辛いな」
チラリと2人を見る。風音は相変わらず気を失っているようだ。楓は口を開けてとても驚いている様子だ。
本気を出したら2人が戦いの余波に巻き込まれてしまうしどうするかな。
俺が2人を見ていると目の前にいたヘンテコ動物が笑ったような気がした。
「ウガァ!!」
そして次の瞬間ヤギが2人の方へ向けて口を開いた。
「させるかよ!」
2人の前まで一気に移動して固い床に手を刺してちゃぶ台返しの要領で壁を作る。
それと同時に炎を吐いてくるが壁のおかげ俺達に炎が当たることはなかった。
「はっ!? なんの音だ!」
と突然風音が起き上がり辺りを見回している。
「風音! 目が覚めたか!」
床の石を盾に炎を防ぎながら風音に声をかける。
「目が覚めたか? ……そうだ。私達は冬月を探してって冬月!? 大丈夫か!?」
隣にいた楓にようやく気がついたようで楓の状態に驚いている。
「……私のことはどうでもいいわよ! どうなってるの!? なんで天道くんがあの化け物と同等にやり合ってるのよ!」
風音に声をかけられて楓はハッとしたようにそんな事を聞いてきた。
「……あー、昔戦ったことがあったから?」
「そんなわけないでしょ! あんな化け物がいるなんてどんな上級ダンジョンよ!」
そんな事を話しているとヘンテコ動物は炎を吐き終えたようだ。
「話は後な! 風音! 楓を階段の方へ運んでくれ!」
「あ、ああ! 分かった! 私に乗れ」
風音は俺の言葉に頷いて楓を連れていき始めた。
俺は岩の横から顔を出して近くにあった小石全てをヘンテコ動物へ投げ続ける。
「お前の相手は俺だからな! 2人の邪魔するなよ!」
特に遠距離攻撃を持っているヤギだけは徹底的に狙わせもらう。
「天道! こちらは終わったぞ!」
そんな事を続けていると後ろから声がした。風音の声だ。
「ナイス! これで本気出せるぜ!」
俺はさっきまで壁にしていた岩を殴ってヘンテコ動物の方へ吹き飛ばす。
「ガァ!」
しかしヘンテコ動物はそれがどうしたと言わんばかりに岩を弾き飛ばした。
「本命はこっちなんでな!」
ライオンの顔の近くまで跳んできていた俺は顔へ向けて蹴りを放つ。
「シャー!」
しかしそれを分かっていたと言わんばかりに蛇の顔がやってきた。
「それは織り込み済みだ!」
俺は体制を変えて蛇の方を向く。
蛇の噛みつき攻撃を避けてそのまま蛇の体を全身で掴む。
「どっこい、しょ!!」
俺はそのまま思いっきり力を入れて絞める。
ぶちぶちと言う音と同時にヘンテコ動物は暴れ出すが構わず力を入れる。
「オラァッ!」
もう一度力を入れ直すと蛇の頭と体は離れ離れになる。
「いい加減お前にはうんざりだったんでな」
「ギャァァ!!!」
蛇の体と痛覚を共有しているのかヘンテコ動物は痛がっているようだ。
「次はお前だ! ヤギ野郎!」
俺はヤギの前にジャンプするがヤギは大きく口を開けたまた炎を出すつもりか。
「スーパー衝撃波!」
その場で拳を振り抜く。
当然ヤギには当たらないがゴウっと風が吹き荒れてヤギの炎が出される前にかき消した。
「ウルトラキック!」
もう一度ジャンプしてヤギの顎めがけてサマーソルトキックを入れる。
「ガォォォォ!!!!」
ヤギの顔は力無くだらんとしているがライオンの顔だけは別なようでまだまだやる気満々だ。
「でも……コイツで終わりだ! ゴリラパンチ!」
俺はジャンプして両手を組んで思いっきりライオンの顔面に叩きつけた。
俺の攻撃の勢いでヘンテコ動物の体は沈み、地面にヒビが入る。
そしてヘンテコ動物は力無く倒れるのだった。
「ふぅ……勝ったぞ!」
俺は2人に向けてピースサインを送るが2人はなんとも言えない顔で俺を見るのだった。
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