第21話 落ちてから……
「……ここは?」
確か天道くん達と部屋にいたはず……
そうだあの時に突然床が抜けて早く2人と合流しないと!
「いッ!?」
立ちあがろうとした時私の左足に激痛が走った。左足を見ると向いてはいけない方向に足が曲がっていた。
誰の目から見ても明らかだろう。
「……折れてる」
私は絶望でどうにかなりそうだった。ここが何層か分からないがここのモンスターは強い。
超級レベルのモンスターが一層目にいたのだ、どう考えても救助を待っていたら助からないだろう。
かといって今の私が上層を目指して辿り着けるかと言われれば無理だ。
そうなれば私に待っているのは……
「……すー、はー。すー、はー。私は誰? 私は冬月・リリ・楓、冬月家の次期総帥よ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかないの」
私は深呼吸をして恐怖を殺す。
そして近くに落ちていた弓の所まで這いずって移動して弓を杖代わりにして立ち上がった。
「とりあえず上を目指すしかないわね」
私はゆっくりと移動しはじめたのだった。
「……とことんついてないわね」
しばらく移動して私は自分が呪われているんじゃないかと思った。
道中モンスターとは幸いにも遭遇しなかったが上に上がる為の階段じゃなくて下に降りる為の階段を見つけてしまったのだ。
「気を取り直して登りの階段を探さないとね……!?」
私が後ろを振り向いたら驚きの光景が目に入ってきたのだ。
私の事をモンスターが囲んでいたのだ。それも一体や二体ではない十数体を超える数だ。
しかもどのモンスターも異常個体のようで私が見たことのある上級ダンジョンにいたモンスターとは姿が違っていた。
「なんで私だけこんな目に!」
私は右足に体重を乗せて弓を構える。支えがなくなったことにより左足が痛むが今はそれどころじゃない。
頭の中で炎の矢をイメージする。私が弓を引くと炎を纏った矢が現れる。
これは私のスキル『魔矢』による力だ。私の魔力が続く限り私は魔法の矢を生成する事ができるのだ。
「ハッ!」
そして私は炎の矢を放った。
しかしそれはモンスターに当たることはなく壁に当たるのだった。
当然だ。足を怪我している状態でまともに狙いが定まるわけがない。
「ガルァ!」
「!?」
私が矢を外したとほぼ同時にオオカミのようなモンスターが私へ向けて走ってきた。
終わった。噛み殺されるんだと思って身構えるが私を襲ったのは衝撃だった。
「えっ……」
私はモンスターに突き飛ばされたのだ。
どうして? なんで? 色々なことが頭をよぎるが私の体は階段に落ちた。
「ッ!?」
そして私は階段を転げ落ちていくのだった。
「生きてたのね……」
意識が覚醒した同時に体中から痛みを感じる。それによって私はまだ生きていているんだとすぐに分かった。
「ッ!?」
生きていた事に安心したのも束の間ぞわりとした嫌な感覚が私を襲う。
「……」
空気が重いなんていう生やさしいものじゃない息ができないくらいの重圧が私を襲った。
私はすぐに弓を手に取り半身を起こした状態で辺りを見わたした。
するとそこにはライオンとヤギの顔そして尻尾には動く蛇を持ったモンスターがいた。
体もかなりデカく5メートル以上はあるだろう。
「……ガゥ」
ライオンと目がうと残虐な笑みを向けてきた。その笑みはまるで新しいおもちゃを見るかのような笑みだった。
「いやぁぁぁぁ!!!」
私はそのままの状態で矢を放つ。何回も何回も矢を放つ。炎に雷、氷様々な属性の矢を化け物へ向けて放った。
「キシャー!」
私の矢を全て受け切った化け物はそれがどうしたと言わんばかりに近づいてきた。
傷はついてない。私の全ての攻撃を受けても無傷なのだ。そんなものにどうやって勝てばいいのだ。
「あっ……ああ……」
私は怖くなり震えることしかできない。
「ガゥ」
そんな私を化け物は左の前足を使ってはたいた。
「ガハッ!」
私は右側の壁に衝突した。
「あっ……いやだ……嫌だ……嫌だ!」
私は這って化け物から必死に逃げる。私があの化け物の攻撃を受けて生きるはずがない。
なのに私は生きているこの化け物は私を本気でオモチャだと思っているのだろう。
こわいこわいこわい。
ドスンドスンという音であいつが近づいてきているのを感じる。
私は必死に逃げる。すると目の前に手が振り下ろされた。
「ひっ!?」
私は怖くて動けなくなってしまう。これならいっそ潰された方がマシだ。
だというのに化け物はうつ伏せでくるまっている私を前足を使って器用に仰向けにしたのだ。
化け物と目が合う。化け物は愉快そうにニヤリと笑って私の顔を観察している。
なんで、なんで私がこんな目に遭うのよ!
こんな目に遭うならいっそ自分で……
私は氷の矢を生成し、自分の首へ向けて刺そうとする。そんな時ふと、天道くんと話していた内容が思い浮かんだ。
私は目の前の化け物を見た。
化け物は私を見て笑っているのだ。私がこんなにも怖い思いをしているのにアイツはニヤニヤと笑っているのだ。
私は段々とこの化け物に対して怒りの感情が湧いてきた。
天道くんが言っていた夢の中で出会った神様への怒りもこんな感じだったのだろうか?
「くらいなさい!」
私は手に持っていた氷の矢を近くにあった化け物の足に刺した。
「ギャオォォォ!!」
少し傷がついたくらいだからダメージはないのだろう。だけどそれをきっかけに化け物は怒り狂ったように吠えた。
そして私を殺すために左手を振り上げてきた。
「ざまあみろ」
そう言って私は目を閉じた。
「やっと見つけた!」
それと同時にそんな声が聞こえたと思ったらドカン! ととんでもない音が聞こえた。
「えっ!? 天道くん!?」
ビックリして目を開けるとそこには手で鈴木さんを抱えている天道くんの姿があったのだ。
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