第14話 結果発表
次の日の朝、俺は女子寮の前で風音を待っていた。
「……ふわぁー、眠いなぁー」
目を擦りながら待っていると俺の目の前で誰かがとまった。
「風音ー、おは………五里先輩?」
目の前にいたのは風音ではなく、五里先輩だった。
「よぉ、一年。昨日ぶりだなぁ」
拳をゴキゴキと鳴らしながら笑顔で俺を見てくる。
あれ? なんか怒ってる?
「どしたの……ですか? 五里先輩?」
「お前のせいで昨日は恥をかいたからなぁ。その仕返しだっ!」
と言って俺に殴りかかってきた。
「よっ……」
俺は五里先輩の右ストレートを掴む。
「いててててっ!?」
「あっ、ごめん」
俺が手を離すと五里先輩は手をすぐに引いた。
「……覚えてろよ! 生意気な1年が!」
そう言って五里先輩は走り去ってしまった。
……なんだったんだ?
「む? 天道か? 何をしているんだ?」
そんな時にちょうど風音が俺を見つけたようで声をかけてきた。
「何もしてない。風音を待ってたんだ」
「……っ! そうか、待たせて済まなかったな」
と風音は驚いた顔をしてから少し恥ずかしそうな顔でそう言った。
「いいよ。俺が勝手に待ってただけだし。さっ、遅刻しないように早く行こうぜ」
俺は風音にそう言ってから歩き出すのだった。
「お、おはよー……」
俺は教室に入り自分の席に座りながら前の席に座っていた果穂に挨拶をした。
昨日風音に言われて気づいたけど、あの時果穂は俺の事が怖かったんだよな。
気まずいけど一応謝っておきたいし俺は声をかけた。
「……!?」
するとビクンと体を反応させたと思ったら手で頭を隠して突っ伏してしまった。
「……き、昨日はありがとうございました」
俺がどうしようかなと悩んでいるととても小さい声でそんな返事が返ってきた。
「……おう!」
俺は悩んだ結果、笑顔でそう返事をする事にした。果穂は突っ伏しているから見えてないと思うが、とりあえず少しは仲良くなれた気がする。
「おはよー! みんな! 昨日はよう眠れたか? 今日は昨日言ったようにテストの結果から話してくでぇ!」
それから少しすると先生が教室に入ってきた。そして先生は笑顔でそう話始めた。
俺は思わず身構えた、ダンジョン内で先生は俺の事を見ていたと風音は言った。
だとすれば俺の嘘に気づいているかもしれないからだ。
「結果から言うと……全然ダメダメや。初級のダンジョンやのにゴールまで辿り着いたのはAチームとBチームだけ。後のグループはみんな途中リタイア。天下のAクラスが期待外れもええとこやで?」
そう言った先生の顔は冷めているかのような表情だ。
そして先生のあまりの変貌っぷりに全員が驚いているようだ。
「正直君ら冒険者に向いてないよ。今すぐ学校やめたら?」
「だってそうやろ? 自分より窓際やからって理由で暴言吐いてたりしてた子居たやろ?」
そう言われた瞬間何にかの生徒の肩がビクッと動いた。その中には哲也の姿もあった。
「……今から名前いうやつ立っていけ。………」
それから先生は16人ほどの生徒の名前を読み上げていった。そしてその中には哲也の姿もあった。
「今立ってるやつ……全員退学や。理由は言わんでも分かるな?」
俺は突然の事に頭がフリーズした。
退学? 退学って学校を辞めるって事だよな?
「まっ、待ってください……」
哲也が振り絞ったような声でそう言った。
「ん? なんや?」
「ぼ、僕は学校を辞めるわけには行かないんです。ぷ、プロにならないといけないです。お願いします、退学だけはやめてください」
と言って頭を下げて泣き始めた。他の立っている生徒も何人かがつられたように泣き始めた。
「別にこの学校に通わんとプロになれんってわけじゃないやろ? とにかく君らは退学や」
「たった一回だけじゃないですか! なのに、なのにどうして!」
それを聞いた先生は突然服を脱ぎ始めた。
「たった一回なぁ。そのたった一回でこんな体になってしまうこともあるんやで?」
そう言って服を脱いだ先生の体は酷いことになっていた。体の至る所に傷があり、臓器がある部分は不自然に凹んでいる箇所もある。
「…………」
その姿を見て全員が黙り込んだ。
「君らはダンジョン攻略の1番のタブーって知ってるか?」
俺達は何も答えない。
「正解はチームの和を乱す事や。チームの連携がうまく取れんくなったパーティはほぼ100%ダンジョン内で全滅する」
そう言って先生は服を着直した。
「僕がこんな体になったのもその時いたパーティメンバーが僕以外、全員帰らぬ人になってしまったのも……君らみたいな和を乱す奴がおったせいや」
「それを君らは最初の試験でやってしもたんや。……もう一度言うで? 君ら全員退学や」
俺が呆気に取られてその光景を見ていると哲也と目があった。
哲也の目は絶望していて昨日と同一人物には思えなかった。
「待ってくれ!」
気づいたら俺は立ち上がっていた。
先生の言ってる事は馬鹿な俺でも理解できた。それでもたった一回の間違いで退学なんて間違ってると思ったから俺は立ち上がった。
「天道!?」
俺が立ち上がったことに風音は驚いている。周りの生徒も全員驚いているようだ。
「ん? なんや?」
先生は俺を睨みつけてきた。
「先生の言ってる事は正しいと思う。でもその上で頼みがあり……ます! みんなの退学を取り消してください!」
俺は頭を下げる
「なんで君がそんな事頼むん? 君、別に関係ないやん?」
確かに俺は退学にならない。
「関係ないかあるかで言ったらない! それにはっきり言って果穂にあんな酷い態度をとっていた哲也はムカつく!」
俺がそう言って先生の顔を見ると困惑している顔になった。
「せやったらなんで……」
「なんか嫌だからだ! せっかく同じクラスになれたのにこんな理由で沢山の人が辞めるなんて嫌だから!」
「は? はぁ?」
さらに先生は困惑した表情になった。
「寂しいじゃん! せっかく友達になれるかもしれないのにこんなところでお別れなんて!」
「はっ? そんな子供の我儘みたいな事いうたって……」
「……私からもお願いします。そもそも私のパーティの玉田を律することができなかった私の責任でもあります」
俺が先生にお願いしているといつのまにか風音も横で頭を下げていた。
それを皮切りにほとんどの生徒が先生にお願いし始めた。その中にはシリダリーと果穂の姿もあった。
「……はぁ。アホらし。分かったわ。今回は退学になしにしたる。その代わり次やったら問答無用で退学や」
と俺達のお願いに先生は折れてくれたようだ。
「おっしゃー!!」
俺はガッツポーズを取る。なんとかみんなの退学を回避できたようだ。
そして俺の周りに退学になっていた奴らが集まってきて次々とお礼を言ってきた。
「ありがとうございます。天道さん」
と最後にお礼を言ってきた哲也は何故か敬語だ。
「お礼はいいからちゃんと果穂に謝っとけよ?」
俺がそう言うと哲也は深く頷いた。
「あっ、そや。天道。君に言うことあったん忘れてたわ」
と突然先生が俺に声をかけてきた。
俺はドキッとした。力を隠していたことを言われると思ったからだ。
「なん……ですか?」
俺が恐る恐る返すと先生は笑顔になった。
「君、全テスト0点やったけどこのままやと学期末には退学やで」
俺はその話題じゃなかったことにほっとしたと同時に驚愕した。
退学だと!?
俺は思わず先生から目を逸らしてしまった。
「えぇぇぇぇぇぇ!?!?」
とクラスの全員が驚いたような声を出した。
「はっはは、ははは………」
俺は全員から目を逸らしながら頬をかいたのだった。
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