第9話 友達100人できちゃうぞ
「はい! また俺の勝ちー!」
現在俺は新幹線の中で風音とババ抜きをしている。ついでに言うと俺の18連勝だ。
「何故だ!? 何故勝てないのだ!」
最初はあまり乗り気ではなかった風音だったけど、俺が連勝を重ねて行くうちに今じゃこの通りだ。
「ふっふっふっ、風音! お前の弱点は俺がカードを引こうとした瞬間にババを見てしまうことだ!」
本当に一瞬だけど風音はババを持っている時はそのカードを見てしてまう癖がある。
「何っ、私にそんな癖がのあるなんて……」
自分でも気づいていなかったのか。
「どうする? もう一回やるか?」
もう一回やったところで俺が勝つけどなぁー! へっへっへ。
「……ふぅ、いややめておこう。今の私では勝てないだろうからな」
と内心でゲスな笑みを浮かべていたが逃げられてしまった。
「そっかー。じゃあなにする? 次はオセロでもする?」
俺は磁石でくっ付くタイプのオセロ板を出した。
「いや、それもやめてもおこう……久しぶりに家族に会えてどうだった?」
首を横に振ったかと思うと風音はそんな事を聞いてきた。
「嬉しかったよ。俺が穴に落ちている間に日本も色々変わったみたいだけど、本当に家族と会えてよかったと思う」
俺が知らない間に、銃刀法違反と言う法律は無くなったらしい。
なんでもスキル持ちが暴れても自分を守る為に銃や刃物の所持は合法になったらしい。
他にも色々と変わった所はあるが、俺が1番驚いたのはこれだ。
「そうか。……会見は見たか?」
会見? あぁ、浩二さんがテレビで話していたあれか。
「俺の名前出してくれれば良かったのになぁ。当時12歳の少年ってなんだよー」
ぶーぶーと俺は風音に文句を言う。
「お前とご家族を守る為だ。それくらい我慢しろ……」
「次は山梨、青木ヶ原前。超級英雄育成学園の学生の皆様はこの駅でお降りください……」
とアナウンスが続いている。
「む? 目的地に着いたようだな。降りるる準備をしておけ」
もう着いたのか。まあババ抜き以外にも色々してたし仕方ないか。
「はーい」
俺は出していたものを全てトランクに片付けて、降りる準備をするのだった。
「田舎だと思ってたのに明るいなー……あれが富士山か!」
駅を出ると夜なのに辺りを見渡すことができるくらい明るい。そして富士山も上の方は暗いがした方は明るい。
「その発言は山梨の人に喧嘩を売っているのか?」
「いや! そんなことはないぞ! 悪気はない! でもなんでこんなところに高校があるんだ?」
浩二さんと話していた時、冒険者を目指す人が通う学校みたいなことを言っていたような気がするが……
「……ここに学園がある理由だが、ここら辺は全ての位のダンジョンがあるからだな」
少しジト目で見られた後俺の質問に答えてくれた。
「全て? ってことは禁忌級もあるのか?」
俺がそう聞くと風音は頷いた。
「あぁ。富士山の麓を見てみろ。あそこの周辺だけ明るいだろ? あそこに禁忌級ダンジョンNO1がある」
「あそこにあるのか……」
そんなことを話しながら歩いていると馬鹿でかい門が見えてきた。
「止まってください! 申し訳ありませんが、学生証の掲示をお願いします!」
すると警備員らしき人が声をかけてきた。
「はい。天道、お前も学生証を出せ」
「おう」
俺と風音は学生証を取り出して警備員さんに見せた。すると警備員さんは青い顔色になった。
「鈴木様でしたか! 態々申し訳ありませんでした! ささっ、どうぞ! お通りください!」
警備員さんがリモコンのボタンを押すと門が開き始めた。
「……いえ、大丈夫です」
その瞬間一瞬風音が悲しそうな顔をした。ような気がする。
「……高校広くね?」
門を通って少し歩いたがかなり広いぞ。まだ建物らしい建物は見えてこないが、すでに洞窟の入り口のようなものは一つあった。
俺の知っている高校とはかなり違うようだ。
「広いのは当たり前だ。富士の樹海という名前を聞いたことはあるか?」
「あー、聞いたことある。確か……一度入ったら生きては帰ってこれない場所だろ?」
友達からそんな話は聞いたことある。
「入り方を間違えなければそんな事にはならないがな。元々は散策コースなどもあったんだぞ」
「へー。で、それが何か関係あんの?」
そんなこと知らなかったが、今の話と関係あるのか?
「……ここは元々富士の樹海があった場所だからな。広さにすれば東京ドーム642個分だ」
……広さを言われてもピンと来ないがとにかく広いということがわかった。
「でもなんでここに学園なんて建てたんだ? 富士の樹海って都市伝説とか多かったような気がするけど……」
友達から聞いた話ではあまりいい話はなかったはずだけど……
「それはここら辺にはダンジョンがまとまっているからだな。さっきも言っただろう? 全ての位のダンジョンがあると……」
「へー、何個くらいあるの?」
「28個だな」
えっ? めっちゃあるじゃん。
「多いな……」
「だからここに学園が作られたんだ」
なるほどなー。理解した。
そんな話をしていると建物が三つ見えてきた。どれもかなりのデカさだ。
「あれが男子寮だ。左から1年、2年、3年の建物だ」
おお、ということは俺は左の建物でいいのか。
「やっと着いた! って、風音の寮は?」
ここにあるのは男子寮だけだ。女子寮は?
「もう少し歩いた先にある。明日の入学式は9時からだ。女子寮の前で待ち合わせをしよう」
「分かった。何時に行けばいい?」
俺は頷いた。
「そうだな……8時30分に女子寮にきてくれ」
「OK! じゃあ俺は一足先に寮に行くぜ!」
ワクワクするな! 寮暮らしなんて響きがカッコいいしな!
「ちゃんと寮母さんに挨拶するんだぞ!」
後ろから風音の声が聞こえてきたので手を上げて返事をしておく。そして俺は寮へ向かうのだった。
「いらっしゃい、明日入学の子かね?」
寮に入ると眼鏡をかけた太っているおばちゃんがいた。
「こんばんは! そう! 明日入学の子!」
俺は挨拶をする。
「おぉ、元気な子だねー! 名前教えてもらえるかしら?」
と言って笑顔でおばちゃんは紙を取り出した。
「天道翔!」
「翔くんだねー、あったあった。はいこれが鍵だよ。125号室だね。二階に部屋があるからそこの階段を登ってお行き」
と言って鍵を渡された。
「ありがとう!」
俺は鍵をもらって部屋へ向かうのだった。
「あー、これをこうして、ここを……あれ?」
あれから寮で一晩を過ごした俺は鏡の前で苦戦をしていた。
お父さんから買ってもらったガラスのスマートフォンでネクタイを締める動画を見ながら実践するが、上手くネクタイがつけれない。
まあ実際はガラスじゃなくてダンジョンで取れた水晶が素材になっているらしい。色々説明してくれたが、俺には意味が分からなかった。買った決めては格好良さと、充電要らずの点だけだ。
「もういいや……」
俺は諦めて白色のネクタイをポケットにしまう。
そして鏡の前でちょっとポーズを取ってみる。
制服は赤色のブレザーに白色のシャツ、下はチェック柄が入ったズボンだ。
「よし……早く行かないと遅刻だ!」
俺はカバンを持って寮を飛び出した。
「……あっ、かざねー!」
待ち合わせである、女子寮が見えてきたと思ったら風音が何人かと話していた。
「おいお前! 風音様に失礼だろ!」
と、何故か風音と話していたゴリラ顔の厳つい男に怒られてしまった。ネクタイを見ると青色のネクタイだった。
確か青色が2年生だっけ? で、黒が3年だったはずだ。
そして風音の周りにいる生徒は性別やネクタイの色全てバラバラだ。しかも全員が俺を睨んでいる。
「……凄いな風音、もうこんなに友達作ったのか。この調子なら友達100人できちゃうぞ」
俺は鞄で風音と話しているのを隠しながら風音に話しかけた。
「……はぁ、違う。だが、お前が来てくれて助かったぞ」
と何故かとても残念な子を見る目でため息を吐かれた。思ったこと言っただけなのに……
「おい! 何を無視している!」
と、先程の先輩に声をかけられて背筋を伸ばしてしまう。
「はい! 無視はしてない……です!」
俺は練習した敬語で答えた。
「お前のようなクズが気安く呼び捨てにしていい相手じゃないんだよ!」
えっ? えっー? いきなりクズって……
「五里先輩、すみませんが彼は私の友達なので……」
と最後の方は声が小さくなって言ったが友達と言ってくれたのは嬉しいが……
「おい、風音! ゴリ先輩なんて失礼だろ!」
俺がそういうと風音は不思議そうな顔をした。
「?」
「だーかーら! いくら顔がゴリラに似てるからってゴリ先輩はないだろ!」
そう言った瞬間風音の周りにいた人が全員吹き出した。
「ち、違う! 彼は五里という名前なんだ!」
と風音も少し噴き出しそうな顔で否定してきた。
えっ、嘘。
ギギギと顔を五里先輩の方へ向けると顔が真っ赤だ。
「ご、五里先輩?」
俺は恐る恐る聞く。
「誰が、ゴリラだって?」
「ご、五里先輩がゴリラに似ているわけない! よな? 風音!」
と風音の方を向くと、目を逸らされた。そして一度五里先輩を見たと思うと下を向いて笑ってしまった。
「す、すまない。失礼だと思ってはいるのだが……」
「おい、みんなもそう思うだろ!? 五里先輩はゴリラなんかに似てないよな!」
と近くに居た人に聞くとみんなが下を向いて笑い始めた。
すると更に五里先輩は顔を赤くした。
「お前だけは絶対許さん!」
と言った瞬間殴りかかってきた。
それを避けると五里先輩の拳は地面に当たり拳を中心に亀裂を作った。
……力めっちゃあるじゃん。
「……ごめんなさーい!!」
このままでは入学式に遅刻すると思った俺は風音を持ち上げて全力で逃げるのだった。
「待て! コラ! ぶっ殺してやる!」
後ろからそんな声が聞こえてくるが風音を持ち上げた状態でも俺の方が足が速かった。
そしてみるみるうちに五里先輩は小さくなっていくのだった。
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