第7話 親と子

「お父様! あれはどう言う事ですか!」


 私は天道翔が部屋を出ていくのを確認してから、お父様を問い詰めた。


「あれ? なんのことだい?」


 肩をすくめて言うお父様に怒りが湧くが落ち着く為に深呼吸をする。


「突然彼が私の護衛になると言ったこともそうですが、あの説明は世間から離れていた彼を騙しているのと一緒です」


 解剖されるなんて話あり得ないだろう。それに彼が本当に禁忌級のダンジョンを登っていたのだとしたら、私達全人類が彼に襲いかかっても勝てる見込みは少ないだろう。

 なにせ禁忌級のダンジョンはプロの冒険者でも10階層までしか辿り着けていないのだから……


「ふむ。確かにね。そして風音が考えていることも十分分かっているさ。彼の話が本当なら本気を出せばもしかしたら世界に対して宣戦布告できるからもしれないね」


 そう言ってお父様は立ち上がり窓の外を見ながらそう言った。


「そうです!」


「だけど風音、それでは彼は報われないだろうね。彼を見てどう思った?」


 そう言われて彼の言動を思い出す。17歳という年齢にしては幼過ぎただろう。

 

「……体は大人ですが中身は子供です」


 昔から続く人気アニメの真逆。まさにそれが今の彼を表現するにはいい言葉だろう。


「そうだね。じゃあ小学6年生の子供が世界から悪意に晒されて普通の生活を遅れると思うかい? 確かに解剖と言うのは言い過ぎだったけど、それと似たような状況にはなるだろうね」


 ……お父様の言葉に私は黙り込んでしまった。


「……ですが悪意だけとは限りません」


 私はなんとかして言葉を振り絞った。


 昔からそうだ。私はお父様と言い合いになって勝ったことがない。


「最初のうちは善意の方が多いだろうね。だけど時間が経つにつれて、悪意の方が多くなるだうね。彼の強すぎる光はそれだけ影を増やすと言うことになると私は考えているよ」


「……」


 そこまで言われて私は何も言えなくなってしまった。


「分かってくれたかな?」


「……はい」


 私は釈然としない気持ちになりながら頷いた。


「うん。……最後に風音にお願いがあるんだ」


 お父様は笑顔でそう言った後真面目な顔をした。


「私にですか?」


「……彼には風音を守るように言ったが、風音には彼に常識を教えてあげて欲しい。今回の件は突然小学生が高校生と一緒に授業を受けるのと一緒だ。だからなるべく周りに怪しまれないように色々と教えてあげて欲しいんだ」


 ……まあ確かにお父様の言うことは確かだろう。これから彼の事で会見が始まるだろうが、この口ぶりからすれば彼の名前は出さないつもりだろう。

 ならば、誰か身近にいる人がある程度の教養を彼に与えなければならない。


「分かりました」


「じゃあ頼んだよ。私はこれから仕事があるから風音は先に帰っていなさい」


 お父様は私の言葉を聞いた後にそう言い残して部屋を出ていくのだった。





 浩二さんと笑い合った後、俺は黒服の人達に連れられて車に乗っている。


 浩二さんが口裏合わせは出来たから家族の元へ帰っていいと言ってくれたのだ。

 ただし家族にも禁忌級から出てきた事は言うなと言われてしまった。

 黙っているのは罪悪感を感じるが、俺が飛び級する為と解剖されないようにする為だ。


「目的地までは2時間ほどですので、その間寛いでいてください」


「分かった……じゃあ寝てもいい?」


 正直言うと、めちゃくちゃ眠たい。最後に寝たのがいつか分からないけど、眠い。


「はい、大丈夫ですよ」


 運転席にいる男の人がそう言ってくれたので俺は眠ることにするのだった。

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