第2話 初めての野糞は開放的だった
「んっ。んー。……何事!?」
目が覚めて起き上がると部屋一面に緑色の何かが飛び散っていた。俺の体にも緑色の何かがくっついている。
そういえば俺、地面が割れてここまで落ちてきたんだった。
「いき、てたー」
死ぬと思ったけどどうやら生きてたみたいだ。そして安心したらお腹が痛くなってきた。
「うっ……」
もう我慢は無理そうだ。……漏らすわけにはいかないし。仕方ないか……
俺は部屋の隅まで移動して角にあった緑色の何かをのける。
「ぶよぶよしてて、ネバネバしてるー。実験で作ったスライムみたい」
夏休みの自由研究で作ったスライムのことを思い出しながら、ズボンとパンツを下ろす。
「んっ! ふー」
やっと出せたー! なんか普段トイレでするうんちよりも気分がいい。
……これが野糞か! なんて開放的な気分なんだ!
「ふー、ティッシュ、ティッシュー」
俺はランドセルからティッシュを取り出してお尻を拭く。そしてパンツとズボンを上に上げる。
そしてティッシュとブツの上に緑色のネバネバを乗せておく。
「よし! 証拠隠滅!!」
ふぅ、なんとかなったな!
「それにしてもここどこだろう? 洞窟?」
かなり広いし洞窟なのだろうか? この部屋小学校なんかより広いかもしれない。
……それにしては壁が綺麗なような気がする。ボコボコしてないし。
「あっ、天井が……」
上を見ると天井がある。落ちてきたはずなのになんで?
「……なんで見えてんだろ?」
太陽の光で見えていると思っていたけど、違うみたいだ。光なんてどこにもないのになんでか洞窟の中が一切暗くない。
「んー。とりあえず進んでみるか!」
考えていても仕方ないし進もう! ちょうど道も一本だけあるし!
それにこれから冒険が始まるみたいでワクワクする!
「いてっ!?」
歩き始めてすぐ何かに躓いて転げてしまった。
「なんだこれ?」
躓いた何かを取ってみると野球ボールくらいの玉だった。
周りについているネバネバを取り除くと七色に光る不思議な玉だった。
「見たことな玉だなー……よし! 持って帰ってみんなに自慢しよう!」
俺はポケットに石をしまってまた歩き始めるのだった。
「全然進んだ気がしないー」
あれからどれくらい歩いたのか分からないけどかなりの距離歩いたはずだ。
ただただ長い一本道がずっと続いている。段々と怖くなってきた。
「お腹すいたー!!」
その場に座り込んで大声を出しても自分の声が反響しているだけだ。
「……お母さん、お父さん、お姉ちゃん」
もしかしたら一生帰れないのかも知れないと思うと涙が出てきた。
「………お母さんのご飯が食べたいよ」
急に嫌なことばかり頭の中に浮かび上がってくる。
通ったらダメな空き家を通ってしまったからバチが当たったんだ。
「神様ごめんなさい! もう2度としないから、家に帰してください!」
返事は返ってこない。
「……怖いよ」
俺は足を抱き抱えて泣くことしかできないのだった。
「……はっ!?」
気がついたら眠っていたようだ。ズボンが涙とヨダレでぐしゃぐしゃになっていた。
「うぅ、お腹すいた」
目が覚めたらお腹が減っていた事を思い出す。そしてランドセルを背負って寝ていたせいか肩が痛い。
ランドセルを置いて中を開けてみる。
入っているのは筆箱と教科書、ノートだけだ。当然ご飯なんて入ってない。
そんな事をしているとポケットから何かが落ちた。
「あっ、これ」
七色に光る玉だ。
「……よくみると飴みたい」
幼稚園の頃よく舐めていたレインボーキャンディを思い出した。
「もしかして美味しいかも……ごくりっ」
それを舐めようとするが緑色のネバネバが纏わりついていた事を思い出す。
「……でも一口、いや一舐めなら」
ペロンッと玉を舐める甘酸っぱい味がした。
「まさかこれが初恋の味!?」
なんで冗談を言ってみたが、内心はかなり落ち込んでいる。せっかく珍しい物だと思ったのにただのでかい飴だったとは……
「レロレロレロ」
と思いつつも舌が止まらない。久しぶりの食べ物だ。大事に食べないと……
俺は立ち上がる。この飴を舐た事で体に力が戻ってきたのだ。
それに泣いて気分がスッキリした。
「ランドセルは……置いていくか!」
重いし、大事な物が入っているわけじゃないしな! それにまた取りに来ればいいだけだ!
「スキップ、スキップ。ランランラン〜」
妙に体が軽いので、飴を舐めながらスキップをして前へ進んでいくのだった。
「飴が溶けた……って階段!!」
途中で口に放り込んだ飴を舐め終わったと思ったら階段を見つけた。
「これでここから出れるー!」
上に登る階段しかないようだったので俺は走って階段を登る。
「はっはっはっ、ゴール! ………えっ?」
階段を登りきり両手を上げると巨大な何かがいた。
体は緑色で背中には大きな翼が生えている。体はゴツゴツして硬そうだ。
そして俺の声で気づいたのかゆっくりとこっちを向いてくる。
「gyaoooo!!!」
あまりに大きな咆哮におしっこを漏らしてしまった。
パンツが濡れてズボンも濡れて嫌な感じだ。でもそれが気にならない。
「あ? え? あ?」
何が起きているのかわからない。
混乱していると大きな口がパックリと開き、ギザギザとした凶悪な歯が剥き出しになっている。
俺はこの不思議な生き物を世界を救うゲームで見たことがある。
「ど、ドラゴン……?」
俺はその生き物名前を呼ぶのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます