117 第四弾である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。パパなんてキライ!!
ララちゃんネルの父親の編集が納得いかないと怒り狂っていた私たちであったが、何度も動画を見返していたエマは冷静になって来た。
「確かに腹は立つけど、これはこれで面白いんだよな~……」
「エマはそりゃいいよ。顔はオカメの画像で隠れてるから。私なんてフルオープンなのよ?」
「いや、オカメも酷いぞ? ララのオヤジ、ウチのことそう見えてるってことだろ??」
「そうかもしれないけど、この嘲笑を引き受けるのは主役の私だと言ってるのよ」
「ララもオカメに見えてたのか!?」
私はそんなこと言ってないのに、エマはギャーギャーうるさい。でも、顔に塗りたくっているんだから、オカメで合ってるんじゃない?
本音が口から出てケンカをしたせいで、エマも父親派閥に鞍替え。一緒に苦情をしようと言っていたのにやってくれなくなった。
その夜は父親に苦情入れたけど、母親が味方して編集担当を下ろせなかったのであったとさ。
日を変えて、今日は第三弾の撮影日。父親と母親も休日だからって、私たちの撮影をニヤニヤ見てる。ジュマルは部活をサボって、足で顔を掻きながら見詰めてる。
「いい? オープニングでケンカしたら絶対そこを使われるから、台本通りやるよ」
「ああ。もしもの時は、ウチも口挟まないから心配するな」
エマと真剣に確認したら、本番だ。
「は~い。ララちゃんネル始まったよ~。パチパチパチパチ~。前回の私のダンス、上手かったでしょ? 今日は歌を聞かせてあげるからね~。では、行ってみよう!」
「オッケー!」
ここは超無難。エマとハイタッチしたら、私は着物に着替えてリビングの大画面テレビの横でスタンバイする。そして大画面テレビに冬の映像が流れると、エマがキューを出したと同時に音楽が流れて、エマの語りが始まる。
『旅は道連れ世は情け。手を取り合い進んで行くのはララと鬼P……世の恵まれない人のために、動画で稼いだお金はほとんど寄付。さあ歌ってもらいましょう、陸奥2人旅……』
「「歌えるか!!」」
エマが語っている間に私が画角に入ったのであったが、同時ツッコミ。エマも知らなかったんだね。てか、何この語り!? 曲名も違うし!!
ずっとニヤニヤしていた両親が腹を抱えて笑っていたから詰め寄ったけど、渡す台本を間違えたんだとか……絶対ウソだろ。私、さっき台本の中身確認したんだからね!!
私とエマが「騙されないぞ」と言っていたら、両親は謝罪して本物の台本を渡された。今回も全て目を通して変なところがなかったので、テイク2の開始。
エマの語りも私の演歌も一発で撮り終えたのであった。
それから数日、両親がなかなか動画をアップしないから何かあったのかと思っていたら、友達から第四弾も面白かったと知らされた……
「第四弾って、撮ってないよね……」
「ああ。嫌な予感しかしねぇな……」
「聞くのも怖い!?」
「見るのも怖ぇ!?」
とりあえず「感想とかは言わないで」と友達から逃げ出し、2人で隠れて授業を終えたら、タクシーで家に帰ってから動画を確認する。
「アレ? 第三弾は普通だね」
「いや、聞いてたのとちょっと違うぞ。開始はいきなり語りからになってる」
「あ、そうだね。てことは、最後に何かあるとか??」
「ありえる……てか、視聴者も驚いてるコメントが多いな。演歌のミュージックビデオかと思っただってさ」
「ホント……『落差で耳キーンってなるわ~』って、褒めてるの??」
「さあ??」
ギャルでもわからない言葉なら、私が知らなくても当たり前。最後まで動画を見ても、私が演歌が上手いこととかわいい以外は何もなかった。
「これでダンスと同じ再生回数って、どうなってんだろ??」
「さあな~……第四弾を見たらわかんじゃね? 見るの怖いけど」
「こっちは倍もあるのは怖いな~……」
覚悟を決めて動画を見たら、やっぱりNG集。父親のメガネにカメラが仕込まれていたらしく、怒りの表情の私と、鬼のお面のエマが詰め寄っていた。
「オカメから鬼って……」
「アハハハハ。やられたわね~。かっこよくなったじゃない? アハハハハ」
「鬼Pで浸透してしまうだろ~~~」
ここは私にさほど被害がなかったので大笑い。コメントも鬼Pだらけだ。
「てか、この映像ってなんだ!? ウチが演歌うたってる~~~!!」
「あ~……まだ隠しカメラ取り外してなかってんだ……」
続きはエマの隠し撮り。曲選びをしている時に、遊びでエマが初めて演歌を歌ったところを使っていたのだ。
最後は私が締めのセリフを言っているのだが、エマはプルプル震えてるな。
「ララと比較されてる!?」
「あ、そゆことか。だからあんな映像でも、再生回数多いんだ」
「勘弁してくれよ~。ララと比べられたら音痴になるって~~~」
このこともあって、編集も自分たちでやると直訴して第五弾をアップしてみたけど「なんか面白くなくなってる」って声が大多数を締めたので、しばらくは父親を頼らざるをえない私たちであった……ちくせう!!
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