115 企画会議である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。プッ……笑けて来た。
エマの動画配信が面白くなさすぎて逆に笑えるので笑っていたら、めっちゃ睨まれた。なのでダメ出しをしてみたら、めっちゃへこんでた。意外と面倒くさい子だね。
「てかさ~……イチからメイクするとか言って、最初から
「うっ……スッピンは恥ずかしくて……」
「その違いだね。私なんて、さらけ出してやってたんだからね。不本意ながらだけど……」
「確かに……いっつもジュマルの行動にキレてたな」
アドバイスのつもりがどちらもへこむことになったので、後日、うちに集まって動画の研究をすることになった。
「まずはこの動画を、本当にイチからメイクするってのやってみない? 編集はパパが帰って来てから相談してみよう」
「うっし。やってみっか」
とりあえずエマにはメイク落としを貸してスッピンになってもらったら撮影……
「……誰だ??」
「だからスッピン見せたくなかったんだよ~~~」
しようと思ったけど、エマが消えたから撮影できず。あんなに目が大きかったのに、どうなってんの??
「いや、ゴメン。言いすぎた。プッ。これはこれで強みじゃない? 別人に変身できるとか……」
「いま、笑いかけたよな?」
「撮影するよ! じゃないと笑っちゃう!!」
「できるか!!」
どちらも正直だ。私はなんとか笑いを
「メイク動画はエマが腹をくくれば再生回数増やせると思うんだけどね~……」
「もうぜってぇやらねぇ!!」
真面目にアドバイスしてみたけど、私が笑いすぎたのでエマも拒否。これではらちが明かないね。
「運動とかダンスは??」
「得意じゃねぇ。かといって苦手でもねぇ」
「ま、やってみよっか?」
ひとまず人気のある動画からやってみる作戦。わりと簡単なアイドルダンスを見せて、エマに踊らせて撮影してみる。それを2人で確認だ。
「う~~~ん……ふっつ~~~う」
「だから言っただろ」
エマのダンスは、可もなく不可もなく。どちらかに振れていないと再生回数は増えないだろう。でも、言わなかったけど、胸が凄い飛び跳ねていたから、そっち方面に需要はあると思う。巨乳が羨ましいから言わなかったわけではない。
「そんだけ言うなら、ララがやってみろよ。さぞかし上手いんだろうな」
「えぇ~~~。最近やってないんだよね~」
「いいからやれ。そして無様な姿をウチに見せてくれ」
「えぇ~~~」
エマがうるさいので踊ってみたら、「キャーキャー」言ってる……笑いたかったんじゃなかったのか?
「マジでうめぇ! アイドル以上だった!!」
「まぁ昔、ダンスのプロに習ってたからね。これぐらいのダンスは簡単な部類よ」
「カッケー。そんなセリフ、言ってみてぇ~」
「私のことはいいでしょ~。歌はどう??」
「歌は自信あるぞ!」
次の候補は「歌ってみた」ってアレ。リビングに戻ってカラオケをやってみる。
「私の知らないジャンルだけど、ブッ飛んでたから、アリなんじゃない??」
「それは褒められてるのか??」
エマの歌った曲は、デスメタルとかいうジャンルのうるさいの。なんかニワトリみたいに首を縦に振りながら「ボエ~ボエ~」とか歌っていたから、ギャルとマッチしているように私には見えた。
「そういや、ララとカラオケ行ったことなかったな。ララはどんなの歌うんだ?」
「私は……いいかな?」
「おっ! ひょっとして、音痴なのか? やっとララの苦手なことが見れる! 歌ってくれよ~~~」
「いや、音痴とかじゃなくて……」
私が嫌そうな顔をしたら、エマは早とちり。単純に、小学生の時にカラオケで演歌を歌って友達を引かせたから歌いたくないだけ。家ではけっこう歌ってるから、わりと上手いよ?
「あまぎぃぃ~ごぉえぇぇ~~~♪」
「キャーーー! ララ~~~!!」
だからエマもめっちゃ盛り上がってる。演歌なんて聞くのか??
エマがアンコールアンコールとうるさいので、私は4曲も歌ってしまうのであったとさ。
「あ~……楽しかった~~~」
私が歌い終わると、エマは満足。私も演歌の良さをわかってくれる同年代の友達がいて、大満足だ。
「てかさ~……」
「ん??」
「私がやらなくても、ララが配信したら稼げるんじゃね?」
「……ん??」
「だって、それだけ多才なんだぞ? 絶対バズるって!!」
「んん~~~??」
お金を稼ぎたいはずのエマが本末転倒なことを言い出したので、私も意味不明。
「ウチがネタを出したりアシスタントするから、どうかな? 給料もお小遣い程度でいいから。ララがイロイロする姿を見てみたいんだ」
「え? 私がメインでエマが裏方ってこと??」
「そう。ララも暇とか言ってたし、将来にやりたいこともわからなくなってただろ? ここから違う可能性を模索するんだ。今だけでも、アイドルや演歌歌手も増えただろ?」
「これ以上、増やしたくないの~~~」
エマはお金目当てじゃないのは伝わったけど、私はやりたくない。もしもバズったら、また貯金が増えてしまうもん。
かといって、必死にお願いするエマに断りを入れるのはなんだかかわいそうなので、角が立たないように「両親を説得できたらやる」と言う私であった。
「これならいいんじゃない?」
「うん。かわいいララを見れそうだな」
数日後、エマが企画書を提出したら、両親はあっさり陥落。絶対、拒否すると思ってたよ!?
「何この企画書……めちゃくちゃ本格的……え? エマってどっかで働いてたの??」
「なわけねぇだろ。オカンに書き方習って、どうやったらララの両親が納得するか必死に考えたんだよ」
「だから時間かけてたの!?」
その日のうちにお願いさせていれば両親も拒否したのに、無駄に時間を与えたのは失敗だ。
「まぁ所々改善は必要だから及第点だけどね」
「でも、熱量は伝わった。僕の部下にも見習ってほしいくらいだ」
「ウッス。ありがとうございます!!」
両親は思ったより厳しく審査していたようだけど、エマの才能が羨ましい。
「それじゃあ、もっと詰めた話をしましょうか?」
「ララを僕たちでもっと輝かせよう!」
「はいッス!!」
こうして私の動画配信は、私抜きで企画会議が始まり、様々なことが決まって行くのであった……
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