089 新体制である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。どうしてこうなった?
将来はジュマルにプロ野球選手をやらせようと思っただけなのに、進路がみっつに分かれたからには悩みどころ。日本でプレーするなら野球が一番いいだろうが、金銭面では海外に羽ばたいたほうが稼げる。
三者ともジュマルを欲しているみたいだし、特に野球部の監督がかわいそうな結果になりそうなので、
「つまり、部活の掛け持ちは、学校としては規定がないと言うことですね?」
私はいちおうジュマルのやりたいことを優先しているのでこの質問からしたら、掛け持ちをする生徒は文化系の部活ではたまにいたが、体育会系をふたつなんてのは前代未聞みたいだ。
そりゃ、ふたつもやっていたらしんどいし、大会の日取りが重なったら困るから選ぶわけがないよね。
「では、大会の年間スケジュールを教えてください。もしかしたら、野球、サッカー、バスケの全てで、優勝をかっさらえるかもしれませんので」
「「「「マジで??」」」」
ジュマルの身体能力を知っているのだから、校長先生たちも目の色が変わった。全員、評価が上がるとか思っているのかも? もしくは、スポンサー目当てか??
「いちおう言っておきますけど、両親のお金に期待しないでくださいね? 野球部が特例だっただけです」
「「あ~……」」
「それはまぁ残念だが、野球部以外はそこまで費用は掛からんだろ? 話を進めよう」
バスケとサッカーの顧問はいま気付いて残念そうにしていた。でも、校長先生は大人の対応で年間スケジュールを出させ、私たちはああだこうだ話し合うのであった……
その夜、我が広瀬家でも家族会議を私は開いた。
「ママ、パパ……大変申し訳ありませんが……」
「どうしたの? そんなに畏まって」
「何が欲しいんだ? 戦車なら売ってる人を見付けておいたぞ??」
「本当に買っていいんだな……」
「ちょっとした冗談だよ~。乗ろうと思ったら山を買ってド田舎に引っ越さないといけないし……」
父親のボケが去年から続いていたので睨んでおいた。てか、自分が欲しいだけじゃね?
「今まで無理して家庭教師を雇ってもらって大変恐縮なんですけど……」
「うん。それで?」
「中学受験をやめたい所存です」
「「そんなことか~」」
私は意を決して伝えてみたら、両親の反応は意外と軽い。
「い、いいの?」
「ララが決めたことなんだろ? それならパパは反対しないぞ」
「ララちゃんのことだから、そうなるような予感はあったしね」
「パパ、ママ、ありがと~う」
2人とも何も聞かずに賛成してくれるなんて感謝しかない。たまには父親に抱きついておこう。
超嬉しそうな父親は、しばらくしたら押し返して、ここからが私の本題だ。まずは今日あった中学校の出来事を説明してみた。
「ほ~。部活の掛け持ちをして、全部優勝させようとしてるのか……それはまた壮大な試みだな」
「ジュマ君なら本当にやってしまいそうで怖いわね。でも、大変なんじゃない?」
「うん。だから、私がスケジュール管理しようと思って。違う中学に行ったら移動が面倒だし」
そう。私が中学受験をやめたい理由は、移動。ただでさえ今でも移動や着替えが面倒なのに、遠くの学校に行ってはしんどすぎるのだ。
「まぁララがやりたいなら止めないけど、そこまでジュマルに世話を焼かなくてもいいんだぞ?」
「そうよ。ララちゃんにはやりたいことがないの?」
「私は……いまは思い付かない。お兄ちゃんを見てるほうが楽しいかな? それにこれからは秘書みたいな感じになるし、それも楽しそうだと思うの」
「秘書か~……将来はパパ専属の秘書に来てくれないかな~?」
「ダメよ。ララちゃんは私とスポーツエージェントになって、ジュマ君と一緒に世界中を飛び回るんだから」
「パパは!?」
両親が心配そうな顔をしたのでそれを払拭してみたけど、また私の取り合いになってるな。でも、まだスポーツエージェントになるなんて言ってないんだから、父親は1人取り残される未来を想像して悲しそうにするなよ。
こうして私の進学は公立中学校に決定して、これからのことを話し合うのであった。主役のジュマルは、もう寝てる……
この発表は、翌日の放課後に中学校でもやったら、校長先生はめっちゃくちゃ喜んでくれた。私が孫みたいにかわいいんだとか……ぜんぜん顔は似てないよ?
それと同時に、他の部活の顧問にはお願い。みっつも運動部を掛け持ちするのだから、これ以上の勧誘はやめてほしい。このお願いは校長先生が鬼の形相で止めていたから、きっと守られるはずだ。
ということで、サッカー部とバスケ部のキャプテンにも結果を伝えて、ジュマルのことも聞いてみる。
「ジュマルって、ルールとかわかってやってます??」
「「そ、それは……」」
「やっぱりか……」
野球でもけっこう苦労したんだから、その他の競技も無理っぽい。両方とも暴力的なプレーはしないらしいが、サッカーではハンド連発。バスケではトラベリングやダブルドリブル当たり前。
挙げ句の果てには、ボールを持ったままコートから出たり、自陣のゴールに入れたり……
「よくこんなバカをスカウトしましたね」
「「ごもっともで……」」
せっかく体制を整えてあげたのに、もうすでにジュマルのことが邪魔に感じていた両キャプテンであったとさ。
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