087 運動会事変、再びである


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。弁護士、難しい……


 スポーツエージェントの勉強は母親に任せて、私はジュマルの夏休みの宿題を頑張る。逃げたともいう。

 ただし、勉強の終わった母親がわかりやすい言葉で教えて来るので、ちょっとは理解できた。ハンコ押さずに、母親に相談したらいいんだね……これが限界です!


 そんなこんなで夏休みが終わり、私もジュマルも学校生活を送っていたら、中学校の運動会となった。小学校とは日にちがズレていたので、私も応援に来ている。じゃないと、両親は私の運動会を優先していただろうね。

 その運動会は、デジャビュ。ジュマルが活躍しまくって、女子がキャーキャー言うアレだ。両親もキャーキャー言ってたよ。

 私のことは「なんで私服なの?」と生徒から質問されたので、笑顔で会釈だけしておいた。まだ小学生とバレていないなら、無駄なことを言わないほうがいいだろう。忍び込みやすいしね。


 運動会はそんな感じで終わったけど、これから厄介なことが待ち受けているので、幼馴染ミーズを誘ってお疲れ様会と作戦会議。

 作戦会議の内容は、ジュマルに女子が押し寄せるアレだ。私がいればイロイロ対策を打てるのだが、まだ小学生なので幼馴染ミーズを頼るしかない。


 幼馴染ミーズに案を出させたら、結菜ゆいなちゃんと愛莉あいりちゃんが付き合っていることにするとか言っていたけど、却下。どう見ても、外堀を埋めに来てるもん。

 それに、2人ではちょっと弱い。かわいいとは思うけど、私ほど飛び抜けていないから、その他の女子は諦めないはずだ。最悪、女子グループに袋叩きにあう可能性もあるから危険すぎる。


 ここはやはり、私の出番。謎の美少女はジュマルの婚約者という噂を流してもらう。実は学校も違うし、親公認で子供の頃からずっと一緒に暮らしているとまで言っておけば、ジュマルにちょっかいを出す女子はかなり減るはずだ。

 この作戦は、結菜ちゃんと愛莉ちゃんは大賛成。私が妹だと知ってるから、取られる心配ないもんね。たぶんジュマルは、2人のことを数多くいる女子の1人としか見てないけど……



 翌日さっそく押し寄せる女子に私の写真を見せて噂を流してもらったら、屍の嵐だったって。でも、ジュマルと同じ小学校の女子には効かなかったっぽい。顔バレしてるもん。

 ただし、その他の女子には情報は流れていないらしい。結菜ちゃんたちと同じく、ライバルを増やさないようにしているみたいだ。


 これで女子はなんとかなったけど、次は意中の女子を取られた男子がゴネテいるらしい。それがあったのすっかり忘れていたよ。

 なので、私は翌日中学校に行って、不良をスカウト。ジュマルの護衛をしばらくしてくれと頼んだら、こころよく引き受けてくれた。


「命令じゃないって言ってるでしょ! これ、私の手作りクッキー!!」


 不良たちは何故か震えていたのでエサを与えてみたら、超喜んでくれた。ちょっとムカついたから投げ付けたのに、それでいいんだ……


 こうしてジュマルに近寄る女子は項垂れ、男子は不良にビビって逃げ帰るのであった……



「妹ちゃんって、実はジュマルの婚約者だったんだってな~」


 放課後に野球部の練習を腕を組んで見ていたら、同じように腕を組んで隣に立つ監督からそんなことを言われたので私は首を傾げる。


「……ん??」

「『ん?』じゃなくて、婚約者だからこんなに頻繁に会いに来てるんだろ? それも兄妹とか噓までついて」

「あ~……監督まで信じたんだ」

「違うのか??」

「そういえばちゃんと自己紹介してなかったわね。私の名前は広瀬ララ。正真正銘の妹で、現在は小6よ」

「はあ!? そっちのほうが驚くわ!!」


 どうやら監督は、私が賢すぎるから、ジュマルより年上の婚約者のほうがしっくり来ていたらしい。実はオバサンなんじゃないかとも思っていたとか……失礼ね~。



 私のカミングアウトは内緒にしてもらい、しばらく中学校に行かなかったら次なる問題が起きたと幼馴染ミーズが教えてくれたので、放課後に暇そうながく君に案内してもらったら、ジュマルは体育館でバスケットボールをしていた……


「ねえ? サッカー部に入ったとか言ってなかった??」

「それが今日、バスケ部の先輩が勧誘して入部してしまったんですわ」

「はぁ~~~……」


 そう。小学校の運動会では色恋沙汰ぐらいしか問題は起きなかったのだが、中学校では運動部がジュマルの運動神経を見て勧誘に来たのだ。

 だから今日は文句に言いに来たのに、別のことをしていたのでは私もため息が出るってもんだ。


「ジュマル~~~!!」


 ため息を吐いていても何も解決しないので、ひとまずジュマルを呼び寄せる私であったとさ。



「おお。ララやないか。どないしたん?」

「どないしたんじゃなくて、こんなところで何してるのよ?」

「バスケや」

「それは見たらわかるの~~~」


 優しく聞いても欲しい情報をくれないので根気強く聞いてみたら、どうも「仲間になってくれ!」と誘われたそうだ。

 他にも勧誘が来ていたみたいだけど「仲間」というキラーワードを言われなかったから、ひょいひょいついて行かなかったと思われる。


 そうして私が納得した頃に、バスケ部の白木キャプテンという人がモジモジしながらやって来た。交替でジュマルは走って行った。私は伊達メガネを装着した。賢そうでしょ?


「あなたがキャプテンですね?」

「は、はい!」

「私はジュマルの代理人をやってます。私を通さずジュマルを勧誘するなんて言語道断。ジュマルにはバスケ部を辞めさせますのであしからず」

「え……ち、ちょっと待ってください! 広瀬君はバスケ部の希望の星なんです! どうか、辞めさせないでください!!」


 冷たく要点を告げただけで、白木キャプテンは土下座。そこまでしろなんて言ってないのに……


「希望の星とか言われましても、今日から始めたんですよね? それでわかるわけありませんよ」

「アレでもですか?」

「あ~……お猿さん、のマネをしてるだけです……」

「ダンクしてるでしょ! もっとよく見てください!!」


 白木キャプテンがゴールにぶら下がるジュマルを指差すので私は苦しい言い訳をしてみたけど、納得するわけがないのであったとさ。

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