086 中学校初の夏休みである


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。マッドJSではない。


「「「「「申し訳ありませんでした!!」」」」」


 だから違うって言ってるでしょ! 土下座すんな!!


 朱痰犯閃スタンハンセンを壊滅した広瀬兄妹が目の前にいたのでは、不良たちはケンカもせずに土下座。マッドJSと呼ばれるのは不本意だけど、平和的に解決できるならそれに越したことはない。


「あんた達、私達がこの学校にいるって他校に言わないでよ? もしも不良がわんさかやって来たら、その時はあんた達も一緒に、お兄ちゃんにシメてもらうからね」

「「「「「はは~。マッドJSの言う通りにいたします~」」」」」

「マッドJS言うな! 次言ったらブッ殺すわよ!!」

「「「「「はは~」」」」」


 これを平和的と言うかはさておき、あだ名は腹が立つので、脅してから帰る私であった。


「「ララちゃんって怖い人だったの??」」

「見てたの!?」


 教室に戻る途中で幼馴染ミーズプラスワンに道を塞がれて、見られたと知ったからには私もビックリ。ちなみに幼馴染ミーズは私たちが心配で、ケンカになったら先生を呼びに行こうとしていたらしい。


「違うからね? あいつらが勝手に勘違いしてるだけよ? 全部、お兄ちゃんがやったの~~~」

「「「……本当に??」」」

「私はちょっと口が悪いだけのか弱い女の子なの~~~」


 幼馴染ミーズは疑って来るので、朱痰犯閃スタンハンセンとの事件は、私がジュマルの代弁していただけと噓をついてやり過ごすのであった。


「やっぱりララちゃんが何かやっていたのね……」

「はい。口下手なお兄ちゃんの代わりに汚い言葉で脅しまくりました……」


 その件はママ友スリーから母親に伝わり、噓に噓を重ねる私であったとさ。



 不良に絡まれるトラブルはあったけど、それ以降はジュマルには寄って来ていないみたいなので、私もいつもの生活をしていたら、野球部の大会があると聞いたので家族で応援に行ってみた。

 ジュマルは出場していなかったから、3年生は3回戦まで進んで敗退。2勝もできたと涙ながらに喜んでいたので、私も温かい拍手を送った。


 スポンサーの両親はちょっと不機嫌だったけどね。だから前もって出ないと言ったでしょ~。


 これで引退試合と行きたかったけど、スポンサーに成果を見せるために、もう一試合。3年生VS1、2年生の試合をやってみた。

 もちろん3年生はボッコボコ。ジュマルは4回からの登板だったけど、ホームラン連発だったので、それまでにコールド勝ちまで持って行った。投球も、1人も掠らせずだ。

 なんとかスポンサーは納得してくれたので、監督も胸を撫で下ろしていた。3年生は号泣だったけどね。まぁあの涙は、これからの野球部を頼むって涙だ。


 野球部のことは上手くいったけど、問題はジュマルの期末テスト。幼馴染ミーズから範囲を聞いて、家族で必死こいてテスト対策をしたら、なんとか夏休みの補習は免れた。


 今年の夏休みは、幼馴染ミーズも部活があるからいつものようにママ友スリーもたむろしない。と思っていたけど、ママさん方だけでたまにやって来ていたよ。母親は仕事で忙しいから私が相手してあげたの。

 遊びに行ったのは、恒例のキャンプと海水浴だけ。結菜ゆいなちゃんと愛莉あいりちゃんが、これだけはやりたいとか言っていたらしい。

 パパさん方は、めっちゃ張り切っていたから、娘にいいとこ見せたかったんだろね。ジュマルとのお泊まりが目当てなのに……


 私はと言うと、家庭教師の合間に野球部見学。マネージャーはやらないよ。結菜ちゃんと愛莉ちゃんがいるもん。最近ではちゃんとやっているから、監督の経過報告を聞くだけだ。

 その報告は両親に上げて、母親にはちょっと相談。


「え? ララちゃんがスポーツエージェント??」

「うん。これから必要になると思うから、知っておきたいの。こういうのって弁護士がやるんでしょ?」


 そう。ジュマルがプロを目指すなら、高校やらプロのスカウトが寄って来ると思うから知識を得たいのだ。


「確かに弁護士がやることもあるけど、私はスポーツ関連はやったことがないのよね~。てか、ララちゃん弁護士やることに決めたの!? ママ嬉しい!!」

「いや、まだ決めてないよ? 面倒な人が来た時の対処法だけ聞いておきたいの。そもそもママが代理人やってくれたらいいんじゃない?」

「ええ~! 一緒にやろうよ~」

「検討を加速するようにするから~」

「それってどういう意味??」


 どういう意味かは、私も口から出ただけだからわからない。どちらかと言うと、断る口実だな。期待させたくないもん。


「やっぱ無理かも……」

「いまは小学生だからだよ~? 大学生ぐらいになればわかるからね~??」


 母親もスポーツエージェントの勉強をいまからするとか言うので私も巻き込まれたけど、難しい言葉ばかりなので、早くも諦めの言葉が出てしまう私と、優しく引き留める母親であった。


 私、魂年齢100歳オーバーなんだけど、わからないってヤバくない!?


 弁護士の道は、改めて厳しいと実感した私であった……

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