083 野球部である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。ジュマルがバカなの忘れてた~~~!
野球部のエースで四番にしようとジュマルを売り込みに行ったら、サインが覚えられないって弱点が発覚。ルールを覚えさせるので手一杯だったから、すっかり忘れていたよ。
しかし監督も、これほどの才能を手放すのはもったいないとエースで四番は認め、大会までには仕上げようと頑張ってる。
「もう、サインは諦めません? 自由にやらせても、誰も適いませんよ??」
もちろん私も連日、放課後は指定の体操服に着替えて付き合っていたのだが、諦めた。バカなんだもん。
「だな。力加減だけを教えたらいいか……」
「ですね。私、言って来ます!」
ということで、ジュマルには別メニュー。私が付きっ切りでピッチングを教える。
「
「はい! 捕れません!!」
「わても無理ですわ~」
「岳君は初心者でしょ! あっちでボール拾いしてなさい!!」
一番長い付き合いとなりそうな経験者の大翔君がバッテリーを組むのが良さそうなのでキャッチャーを頼んだのに、ジュマルが野球部に入ると聞いて入部した岳君は邪魔だ。
「ジュマルく~ん。汗拭こっか?」
「お茶飲む~??」
「
あと、コーラス部を辞めて野球部に入部した2人も邪魔。練習中って、見てわからないの?
とりあえず邪魔なヤツらを排除したら、ジュマルには半分の力で投げるように言ってみたけどけっこう速い。でも、これなら捕れると大翔君が座ったので、ここから力を調節していこう。
数球投げさせて、徐々に力を上げさせようと思ったけど、6割って言ったでしょ! いきなりマックス出すな!!
ボールには変な回転が掛かっていたので大翔君からギリギリ逸れてくれたから助かったが、下手したら死んでたよ。
「ゴメン。しばらく普通の練習してて」
「自分なら大丈夫ッス! 絶対に受けてみせます!!」
「その気持ちは嬉しいんだけど、3年生にチェンジで」
「な、なんで……」
「足、めっちゃ震えてるよ?」
恐怖心を持ってしまっては厳しいので大翔君も追い払い、3年生のキャッチャーに色目使って呼んで来たらリスタート。
バッターボックスで見せて、力加減を調整する。いちおうジュマルのボールは、ベースの上を通過しているから安全だと思うけど、速度がまちまちだから捕るのは難しいらしい。
ジュマルも6割の力は慣れて来たみたいなのでキャッチャーを頼んでみたら、めっちゃいい音が鳴った。
「ナイスキャッチ」
「いえいえ。ド真ん中だったし」
「あ、そっか。高めとか内角いっぱいとかがあるのね……まぁその課題はあとから考えよう。いまのスピードで、勝ち上がれそう?」
「う~ん……今まで見た中で一番速いけど、弱小中学だから、強いところと当たったのは数えるほどなんだよね~」
「それも課題ね。とりあえずこのスピードで受けて。私はあっちで指示出してみるから」
ジュマルの元へ行くと、高さだとかちょっと横と言ってコースを変えて投げさせてみたら、口では大丈夫そう。細かいコースは無理そうだけどね。
なのでキャッチャーからサインを教えてもらって、もう一度同じことをさせてみたけどハチャメチャ。やっぱ無理っぽい。
「もうバレてもいいから、簡単にしない? 右に寄せるとか上に投げさせるとか」
「それでやってみましょっか」
超簡単に、キャッチャーのミット目掛けて投げさせてみたら、これは完璧。ギャラリーも集まって来たのでバッターをやらせてみたら、誰も掠りもしなかった。
「監督……全国見えましたね!」
「いや、こいつらが下手なだけなんだ……すまん」
「えぇ~!!」
私、ぬか喜び。監督
今日のところはここで終了。ジュマルと一緒にタクシーで帰ろうとしたら幼馴染ミーズに寄り道しよと誘われたので、せっかくだからご一緒する。隠れて買い食いなんて、学生の醍醐味だもん。私だけは、校則とか関係ないけど……
「わても入れてくださ~い」
岳君は誘われてなかったけど、かわいそうだから仲間に入れて、やって来たのは某ハンバーガーショップ。野郎共はハンバーガーとジュース。女子は紅茶とポテトをシェア。
ジュマルに聞いたら腹ペコらしいのでセットを頼み、私はコーヒーだけだ。もちろん自腹だけど、キャッシュレスは私だけだった。使えてよかった!
「「お疲れ様~」」
「「お疲れ~」」
若者のノリは知らないので、幼馴染ミーズを見ていたら岳君も交えて乾杯に近いことをしていたから、私も紙コップを軽く上げといた。ジュマルはもうフィッシュバーガーをかじってる。
「それにしても、どうして野球なの?」
「ララちゃんだったら、何もやらせないと思ってたよ~」
どうやらこの集まりは、ジュマルの行動を制限していた私を不思議に思っての集まりだったみたい。男子は気にしてないみたいだけど、愛莉ちゃんと結菜ちゃんは気になったみたいだ。
「ちょっとお兄ちゃんの未来に思うことがあってね~……お兄ちゃんって、就職できると思う?」
「「それぐらいできるんじゃない?」」
「「う~ん……」」
愛莉ちゃんと大翔君は楽観的な答えだったので、ジュマルと同じ小学校に通っていた岳君と結菜ちゃんにもう一度同じ質問をしてみた。
「正直、わてより点数が低いからどうなるかわかりまへん」
「私が養うから心配しないで!」
結菜ちゃんはヒモにしてくれると言ってくれたが、私は岳君の答えを採用する。
「会社員は務まらないと思うの。授業中も寝てばっかだし……だからプロ野球選手にしようと私は考えてるの。それなら、勉強できなくても高校も行けるでしょ?」
「なるほど……」
「それいいでんな!」
「「プロ野球選手の奥さんか~……」」
私がジュマルの進路を発表すると、大翔君は頷き、岳君は賛成。愛莉ちゃんと結菜ちゃんも賛成みたいだけど、何を夢見てんだか……ジュマルよ。お前のことを話してんだから、ポテト食ってないでちょっとは興味を持て。
ちなみにこの話は両親も賛成してくれたから、元プロ野球選手の個人レッスンにお金を出してくれたのだ。別にプロ野球選手じゃなくてよかったのに……
「だから大翔君……お兄ちゃんに協力してあげて? キャッチャーはやりたいポジションじゃないもしれないけど、いまから努力すれば、名バッテリーで甲子園だって一緒に行けるかもしれないよ?」
「おお! ジュマルさんと甲子園に立てるなら、ポジションなんてどこでもいいッス! いや、甲子園なんて夢の舞台に立たせてもらえるだけでも有り難いッス! 自分、頑張ります!!」
「ありがとう!!」
私の夢に、自分の夢を重ねてくれた大翔君の手を握り、甲子園を目指す私たちであった……
「わては!? わても頑張りまっせ!!」
「「私もマネージャーいっぱい頑張るよ!!」」
それを見た岳君、愛莉ちゃん、結菜ちゃんも協力を惜しまないのであっ……
「いや、岳君は野球続けるの? 向いてないでしょ??」
「そんなこと言わずに~~~」
「愛莉ちゃんも結菜ちゃんも、コーラス部に戻ったら??」
「「なんで追い出そうとするのよ~~~」」
でも、戦力になりそうにないので私は違う道を提示したら、3人に詰め寄られるのであったとさ。
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