078 誘拐事件の結末である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。まだジュマルの世話しなくちゃいけないの~?
神様からジュマルの死ぬ運命が変わったと聞けたのは喜ばしい限りだが、その先を教えてもらえなかったので喜んでもいられない。
神様とは連絡取れなくなったし、私も自分の人生に戻るしかなかった。
誘拐事件の翌日は、私は筋肉痛で動けなかったので学校は休み。ジュマルもサボリ。気付いたら何故か私の上で寝ていたから、金縛りにあっているのかと思ったよ。猫ならわかるけど、重たいのよ!
いちおう何故そこにいたのかと聞いたら、私が起きて来なかったから心配していたとのこと。それを喋り終わったら、隣で丸まって寝た。妹とはいえ女子の隣で寝るなよ。
その翌日は、警察の事情聴取だから学校はサボリ。ジュマルと一緒に受けに行ったが、母親が同席しているので噓ばっかりついてしまった。
だって、私が戦ったなんて言えないもん。全てジュマルがやったことにしてやった。ジュマルは寝てるし……
聴取はヤクザ刑事が担当していたから私が目で訴えまくったので、気持ちを汲んでくれたからたいした追及はない。盗聴器を聞いていたから「この嘘つき!」って顔はしてたけどね。
怪我人は佐藤虎太郎と数人いたからその点だけは少し聞いてみたら、その他はたいした怪我ではなく、虎太郎は「こけた」とか言ってるらしい。
おそらく、総長のプライドから女子小学生にやられたなんて言えないのだろう。ヤクザ刑事の顔には「他からは聞いてるで?」って書いていたけど。
これで私の言った「ジュマルのローキック説」は、お
ヤクザ刑事をボコボコにしたかったんだろね。役立たずだったもん。そのヤクザ刑事は「助かった」って顔に書いてた。
事情聴取を終えたら私たちは無事釈放。いつもの日常に戻るのであった。
あ、若者たちから没収したスマホは家に送ってあげたよ。父親がどうやったかわからないけど、住所を突き止めて……こわっ。
これは
というか、
その事件とは、暴力団の内部抗争。組長が事務所に入るところをヒットマンの集団に銃撃され、お互いドンパチしまくった挙げ句、ヒットマンの数人が銃を持ったまま逃走したのだ。
これがヤクザ刑事が私たちの救出に遅れた理由。県警はその対応に追われ、ほとんどの警察官が駆り出された。翌日の新聞にはデカデカと一面を飾っていたから、
その事件を新聞やワイドショーを見て追いかけると、どうも暴力団の若頭が覚醒剤に手を出していた模様。その財力を持って、組長に引退を突き付けていたらしい。
それでも組長は首を縦に振らなかったし、破門の流れになったから若頭が強行に及んだとか予想していた。
そこに警察発表が出て来た。この若頭は、半グレ集団に覚醒剤の販売を委託していたのだ。
元々警察は覚醒剤の流れを調べていて半グレ集団までは突き止めており、若頭も取り調べをしたが覚醒剤は見付からず。どこに行ったかわからないから、半グレと付き合いのある
事実は、若頭が覚醒剤を半グレ集団に隠すように手渡し、半グレ集団は中身を見るなと
そこで佐藤虎太郎に欲が生まれた。中身を確認し、半グレ集団を乗っ取れば取り分が増える。さらに暴力団も倒してしまえば、この一帯は自分の物になると……
これらのことは警察で自供したから表沙汰になり、若頭と半グレ集団は逮捕。虎太郎も罪が重くなったが、仲間は罪が軽くなったから補導程度で済んだのだ。
もちろん若頭の派閥からの報復は考えられるが、ほとんど捕まっているからしばらくは動きはないだろう。なんなら組長が怒り狂っていたから、刑務所から出て来た若頭たちが心配だね。
こうして
世間では大盛り上がりの事件であったが、我が小学校は平和なもの。情報統制が取られて私たちの名前は一切伏せられていたから、子供たちは何もなかったかのように学校に通っている。
いちおう佐藤虎太郎の両親には警察から私たちの話が行っていたらしく、今回は佐藤さんが菓子折り持って来て土下座までされたけど、拘置所に送ったのはこっちだから逆に申し訳ない。どっちも何度も頭を下げるやり取りになってしまった。
佐藤さんは誘拐された被害者のことは伏せられていたとのことで「謝りに行きたい」とお願いされたから飯尾
その岳君は、私たちが学校に行く日から出席していた。図太いヤツだ。
少し気になることがあったので、岳君を体育館裏に呼び出したら、めっちゃ怯えながら現れた。カツアゲなんてしないよ。
そこでどうして誘拐されたのかと問い質すと、達者な関西弁のせい。たまたま虎太郎が1人で歩いているところに擦れ違い、「お前、ジュマルの仲間だよな?」と言われたんだって。
岳君も焦りまくって「はい」と言ってしまったからには「ちょうどよかった。ジュマルの顔がわからなかったんだ」と、肩を組まれて連れて行かれたらしい。口は災いの元ってこのことだね。
ただし、虎太郎は暴力は振るわなかったとのこと。でも、廃工場に連れ込まれたあとに「何か面白いことをやれ」と命令されて、必死に笑いを取っていたらしい。
岳君
まぁそのおかげで心の傷にはなってなさそうだから、信じてやるよ。だからその面白くない一発ギャグはやめてくれ。
「これならどないでっか!」
「もういいって言ってるでしょ。いい加減にしないと締めるよ?」
「かかかかかかかか、堪忍してくだはりませ~~~!」
私のほうがトラウマになっていた岳君であったとさ。
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