072 見張りの制圧である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。酔いそうだ……
ジュマルが前に下げている自分のランドセルには、私が使っている6年生の偽造教科書も入っているのに、この重量で私より速く走れるなんて凄いヤツだ。
「お、下ろして! んで、あいつをブッ飛ばして!!」
「なんかしらんけど、おう!!」
そんなことを考えていたけど、私たちの顔を見てギョッとした高校生ぐらいの若者がいたので、私はジュマルから飛び下りた。
ジュマルは指示通り、ギアを上げて若者に体当たり。若者は避けきれずに、スマホを手放して吹っ飛んで行った。
「お兄ちゃん! 押さえるだけでいいから!!」
ジュマルは若者に飛び乗ってボコボコ殴っていたから止めて、私はスマホを拾いながら2人に駆け寄った。
「はぁはぁ……あんた、
間違っていたら謝ろうと思ったけど、若者は目を逸らしたからセーフ!
「死にたくなかったら、全て白状しなさい」
「なっ……なんだお前たちは!?」
「佐藤虎太郎が探しているジュマルよ。私が言ったら、お兄ちゃんはあんたを殺してくれるわよ? お兄ちゃん、耳をゆっくりと引きちぎって」
「おう! 耳ってこれやな?」
「いたっ!? ま、待って!!」
ジュマルは耳も知らないとは驚いたが、ゆっくりと左耳を引っ張っただけで若者は諦めてくれたので、ジュマルは止めてあげた。
「んで……あんたは警察が来た場合の見張りよね? 見張りは他に何人いるの??」
「さ、3人……」
「場所は??」
「知らない……」
「耳はいらないみたいね。お兄ちゃん、やっ……」
「待った! 常に移動するように言われてるからわからないんだ!!」
若者は本当のことを言っているようだったので、初期配置とどう動くかの指示だけ聞き出してやった。
「わかったわ。もう行っていいわよ」
「ス、スマホは……」
「連絡されたら困るから没収に決まってるでしょ。警察に中を見られたら困るなら、後日、家に送ってあげるわ」
「警察??」
「通報済みよ。児童誘拐事件に巻き込まれたくないなら、逃げることをお勧めするわ」
「誘拐!? そんなの聞いてないぞ!!」
「いま言った。虎太郎に伝えに行くなら好きにしなさい。それより先に警察が来ちゃうからね。その場合は、スマホは警察に提出する」
「くっ……」
若者は悩んでいるので、私はジュマルを連れて走り出した。しばらく進んで後ろを見たら、若者は廃工場とは逆に走って行ったから少しでも助かる方法に賭けたのだろう。
それから私たちは、残りの見張りを同じように追い返し、廃工場の正面に移動したのであった。
「あの腐れヤクザ……5分以内に来るって言ってたのに、噓ばっかりじゃないの」
廃工場の門にはヤンチャそうな2人の見張りが立っていたので、私は電柱の陰からそれを見ながら愚痴ってる。ぶっちゃけ、見張りを倒しているうちに警察が来て、ジュマルに無茶させない作戦だったのに失敗だ。
「突っ込んでええか?」
だってジュマルは岳君を助けたくてウズウズしてるもん。私が止めても無策で突っ込むだけだ。
「あそこの2人、すぐにブッ飛ばせる?」
「おう!」
「両端に分かれて立ってるんだから無理でしょ。私が1人気を引いてるからすぐに来て」
「それじゃあララが……」
「私、こう見えて強いのよ。よく知ってるでしょ?」
「う~~ん……」
「行くよ!!」
ジュマルは私のことを心配しているようだけど、私が飛び出したからには行くしかない。私たちはふた手に分かれて全速力で走るのであった。
先頭を行くのは私。だったけど、あっという間にジュマルに抜かれてしまって必死に走る。門に立つ2人の若者は私たちに気付いたけど、ジュマルの顔を知らないのか、何やら言い合っているだけ。
その時間が無駄だ。ジュマルは早くも門に到着して、若者Aを体当たりで吹っ飛ばし、馬乗りになって殴っている。
「テメェ! 何してやがんだ!!」
仲間が襲われているのだから若者Bは助けに行こうとしていたけど、やっとこさ私も追いついた。
「どりゃ~~~!!」
ランドセルフルスイング。後ろからだったため、若者Bは無様に前のめりに転んだ。
「いってぇ~……このガキャ~!!」
「いや~ん。こわ~い」
「ふざけやがって……」
「うん。ふざけてただけ。ゆるちて~」
「ざっけんなよ!!」
「あ、もういいや。後ろ後ろ」
「はあ!? ぐあっ!?」
私がかわいこぶりっこでからかっていたら、ジュマルが若者Bを後ろから殴り付け、また馬乗りになってボコスカ殴る。
「そのへんでいいわよ。気絶してる」
「ララを殴ろうとしたんやぞ!?」
「目的を忘れないで。岳君を助けるんでしょ?」
「そうやった!?」
ジュマルの優先順位は私が一番。それは有り難いけど、岳君を忘れてやるなよ。仲間じゃなかったのか? かわいそうに……
ひとまず私は若者Aの容体も確認して、2人ともスマホを取り上げるのであった……
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