067 時は過ぎるのである
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。将来は何しよう?
作文で将来の夢を書いてから、私も将来のことを考えることが増えた。前世は主婦以外で働いたことなんて接客業のパート程度だったので、母親のように外でガッツリ働くのもいいかもしれない。
何せ今世は美人でお金持ちに生まれたのだから、
でも、子供の頃から働くのは、ちょっとイヤ。前世では子供の頃から畑や家畜の世話を手伝っていたから、子供らしいことをしたい。私が子供らしくないってのは置いておいて……
やはり、ここは青春。前世は厳しい家庭だったからできなかった、友達とバカ話したり若者の恋愛を味わいたい。ちょっと男と喋っただけで、父親に「はしたない」とか言われて薙刀道場に放り込まれたもん。
かといって、勉強は絶対に大事。どんな職業に就くにしても、バカでは足下を見られる。ダンスの家庭教師は今年までにして、来年からは勉強に力を入れよう。
そしてジュマルを独り立ちできるまで教育し、私は中学受験だ。かわいい制服で大学まで行けるところはないかな~? 女子校はお断りっと。
方針の決まった私は両親とも話し合い、4年年生からは英会話の家庭教師は1日減らし、中学受験に強い家庭教師を雇ってもらった。
もちろん両親は、私の決断に大賛成。一緒にどこの学校がいいかと考えてくれた。ジュマルのことは心配だが、担任殴打事件以降、勉強ができない以外の問題は起こしていないからなんとかなりそうだ。
ジュマルが5年生になった時にクラス替えがあったけど、新人さんは2割ほど。私は遠くから挨拶がちゃんとできるかと見ていたら、普通に握手していたから感動で泣きそうだ。
でも、隣に泣いてる人がいるから泣けない。
「うぅぅ……ララちゃ~ん。ジュマル君と離れちゃったよ~」
「
「ララちゃんだってストーカーしてるじゃな~い」
「私はお兄ちゃんが暴力振るわないか見張りに来てるだけなの!」
ついにジュマルとの赤い糸が切れた結菜ちゃんと一緒に、隠れて見続ける私であった。ちなみに
ジュマルは5年生も勉強できない以外は問題は起こさず、私もなんだかんだ言って小学校生活を楽しむ。たまにジュマルを覗きに行くと、必ず結菜ちゃんとバッティング。
勉強や遊びに、両親の相手と忙しくしていたら、あっという間に月日は流れて私は5年生。ジュマルは6年生となった。あの猫の子供も元気に歩いていたけど、ぬいぐるみにしか見えないわ~。プププ。
ついに私もツインテールを卒業して、ボブカットになったよ! もうちょっと長いほうがお姉さんに見えると思うんだけど、お母さんが……
「うぅぅ。ララちゃ~ん。クラス替えなかったの~」
「うん。わかってた。クラス替えは奇数年だもん」
新学期が始まると念の為の確認でジュマルのクラスを覗きに来たら、恨めしそうにしていた結菜ちゃんに抱きつかれた。
「まぁ結菜ちゃんは幼馴染みだし、旅行だって一緒に行く仲なんだから、学校は他の人に譲ってあげなよ」
「そ、そうよね。お泊まりだってしたことあるし……ジュマル君って、家で私の話とかしてる? 離れ離れで寂しいとか??」
「お兄ちゃんは、学校の話とか聞いても『しらん』の一言で終わるのよね~」
「そんな~~~」
ちょっとかわいそうなので慰めてあげたけど、質問に答えたら結菜ちゃんは膝から崩れた。結菜ちゃんとは言ってないのに……
「こうなったら既成事実を作るしかない……」
そんな結菜ちゃんが不穏なことを口走ったので、私は「小6のセリフ?」とか真っ先に浮かんだけど、確認は必要だ。
「既成事実って、何するかわかってるの?」
「いや~ん。ララちゃんのエッチ~」
「完全にわかってるな!?」
これはアカン。結菜ちゃんがモジモジしながら私の背中をバシバシ叩いて来るのも止めねば!
「いい? お兄ちゃんにそんなことしたら、広瀬家は結菜ちゃんと縁を切るからね?」
「え? 縁が強くなるの間違いじゃない??」
「間違いじゃない。それによく考えてみて。お兄ちゃんの周りは女ばっかりよ。そんなこと覚えたら、何人子供が生まれるか……私、何人にお姉さんと呼ばなきゃいけないの??」
「私1人がいい~~~」
「だったら絶対に変なこと教えないで」
ハーレム状態のジュマルに手を出すと大きなしっぺ返しがあると知った結菜ちゃんは、既成事実案を封印すると約束してくれたのであった。
その日は、久し振りに家族会議。私が集めたけど、なかなか切り出せないでいた。
「どうしたの? 何か欲しい物でもあるの?」
「ララだったらいくらでもいいぞ。パパに言ってごらん? 戦車だって買ってやるぞ?」
「本当に買えるんだな……」
「いや、言葉の綾だよ~? お金はあるけどツテはないから……ゴメン」
父親のボケに私が睨みながらツッコンだら、こういう始末。ツテがあったら本当に買って来そうで怖いな。
「ちょっと学校でね……」
「学校がどうしたの?」
「性教育の話を聞いたの……」
「「そ、それで……」」
私の口から性教育と出たので、両親ともに緊張が走った。
「お兄ちゃん、大丈夫かな? 誰彼構わずそんなことにならないかな? そもそも性教育って知ってるのかな? すでに何かしてたらどうしよ~~~」
「「由々しき事態です……」」
私が矢継ぎ早に心配事を口にすると、両親も敬語。おそらく私よりも危機感を覚えたのだろう。ジュマルは猫とあんなことをしてたんだもん!
それから3人で「ワーワー」話し合って、ここは父親の仕事だろうとジュマルの巣で2人きりにしてみたら、中からドタバタと暴れる音が聞こえて来た。
「パパ、大丈夫かな?」
「やっぱり私が教える!」
「ララちゃんにそんなことさせられるわけないでしょ! てか……知ってるの?」
「ち、ちらない……」
「そのとぼけ方、久し振りに見たわ~」
外でも私と母親が「ワーワー」やっていたら、暴れる音は止まった。それから15分ほど経った頃にドアが開き、父親が出て来たと思ったらドサッと前のめりに倒れた。
「そんで……どうなったんだろう?」
「親指が立ってるから、上手くいったんじゃない?」
中では何が行われていたかわからないけど、父親はやりきった顔で幸せそうに目を閉じているので、私と母親は性教育は上手くいったと結論付けるのであったとさ。
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