054 クラス替えである
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。初めてのお使いは成功ってことで!
初めてのお使い以降、母親も買い物に行くようになり、私たちもたまについて行く。やはりネットショッピングより、自分の目で見て買いたかったみたいだ。
夕食には魚料理が並ぶことが増えたどころか毎日続くので、母親もそんなに魚に飢えていたのかと思ったら、これはジュマル対策。
最初の頃は猫が出ていたけど、毎日食べることによって慣れて来たのか魚を食べても「にゃ~にゃ~」言わなくなったのだ。でも、そろそろお肉が食べたいな~。
そんなこんなで春休みは多大な成果を出して終わり、私が2年生、ジュマルが3年生に進学した。
今年の始まりも私は挨拶回りにやって来たら、ジュマルのそばに見知った人物が立っていた。
「ララちゃん。またやるの?」
「あ、
「ううん。半分ぐらい変わってるよ。私はジュマル君と赤い糸で結ばれてるから、離れ離れにならないの~」
「じゃあ、挨拶回り行って来るね~」
「お姉さんを無視しないでよ~」
だから結菜ちゃんをお姉さんと呼ぶと危険なんだって。やっとジュマルと同じクラスになれた女子が睨んでいるんだからね。無視するしかないの。
「アネゴ~。わてのことも無視せぇへんでくれます??」
あとドサンピンは……
「またドサンピンと一緒のクラスなの~?」
「そんな嫌そうな顔しないでくれまへん? アネゴとは一緒に授業受けまへんやろ??」
「ドサンピンと喋ると長くなるから面倒なのよ。お兄ちゃん、行くよ」
「ひどっ!? 待ってくだはりませ~」
挨拶回りに時間を掛けられないから岳君は置き去りにしようとしたけど、ついて来てしまったから仕方がない。新しいクラスメートを紹介してもらって時短に努める。
そのおかげで早く終わるかと思ったけど、岳君がいちいち「アニキの一の子分ですねん。よろしゅうお願いします」とか自分も自己紹介していたから、あまり進んでいる気がしない。
それからも岳君を急かしながら挨拶回りを続けていたら、特徴のある少年と出会った。
「お兄ちゃんのジュマルです。仲間になってください」
「ははは、はい。いいイトモトと、じじジンですす。よよよ、よろししく」
「なんや。変な喋り方やな」
「お兄ちゃん! 黙ってて!!」
糸本仁君がどもっていたからジュマルも思ったことを言ってしまったので、私は叱りつけてから仁君と喋る。
「緊張してるの??」
「ちがちチガウ。こここ、こういうしゃシャベリカタた」
「もしかして……
「ううう、ん。よよヨクシッテルネるね」
納得した私はジュマルに頭を下げさせる。
「お兄ちゃんが失礼なこと言ってゴメンなさい。お兄ちゃんも謝る」
「なんかようわからんけど、ゴメン」
「い、いいい。気にししてなない」
「よくないよ。私もいまから失礼なことを言っちゃうと思うから、先に謝っておくわ。傷付いたらゴメンなさい」
「いい、いい……」
前置きをしてから、私はジュマルの目を見て語り掛ける。
「いい? 人間には、中には不完全な形で生まれる人がいるの。手が無かったり足が無かったりね。仁君の場合は、言葉が出にくいハンディキャップを背負っているの。正直、私たちがその人たちの気持ちをわかってあげることは難しいわ。でもね。酷いことを言う人からは守ってあげられる。お兄ちゃんは強いんだから、もしもハンディキャップがある人がイジメられていたら守ってあげて。ね?」
少し難しい話だったからか、ジュマルは何度か首を捻ってから答えを出す。
「おう。俺は仲間を大事にする。お前も嫌なことを言われたら俺に言えや。必ず守ったる」
「お兄ちゃんはこういう人なの。もしもの時は頼ってね? でも、嘘だけはやめて。お兄ちゃんが暴走したら、私は仁君を一生許さない」
「うう、うウン。ウソそはい言わない。ととと友達。ううれれしい」
「そっか。はい、お兄ちゃん。握手~」
「よろしくな」
私がかなり失礼なことを言ったり脅したりしてしまったが、仁君は笑顔でジュマルと握手していたので、私もホッと胸を撫で下ろす。きっとどちらの約束も守られるはずだ。
いちおう岳君にも頼んだり脅したりして、私は挨拶回りを続けてから自分のクラスに滑り込むのであった。
「アレ? えっと……間違えました!!」
「「「「「あはははは」」」」」
焦って1年生の時の教室に入ってしまい、恥を掻くわ昨年から続投の安達先生に怒られるわで、進級早々、散々な目にあう私であったとさ。
昨年は必死に授業を受けさせることを私が頑張ったおかげか、ジュマルも普通に勉強をしていると聞いたから一安心。でも少し心配なので、たまに安達先生にお願いしてジュマルの教室を覗いたら、だいたいバレないように熟睡していた。
いちおうジュマルの担任、50歳前後の男性教師、井口先生とも何度か喋ってみたけど、邪険にされることが多かった。まぁ小2が保護者みたいなことをしていたらそうなるか。
でも、ジュマルと仲良くできるか心配だ。私は過保護と思われても構わないから、何度も井口先生に頭を下げてお願いしたのであった……
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