053 実食である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。魚が食卓に並ばない理由なんて聞くんじゃなかった。
私と母親が、ジュマルが観賞魚を食べているところを想像して抱き合って震えていたら、父親が「いや~。仕事、早く終わっちゃった」とか三文芝居しながら帰って来た。
そこで私たちがプルプル震えてしていたから、初めてのお使いの成功を喜んでいる場合ではなくなっていた。
ちなみに以前、水族館に行ったのは皆の魚の反応を見ていたらしい。でも、魚に過剰反応するジュマルを見て、やっぱり魚禁止ってなったんだって。
しかし、今日はすでに魚のお惣菜を買って来てしまった。父親が魚に手を伸ばすとジュマルが背中を丸めて「フシャーッ!」とか怒っているので触れることもできず。今晩の夕食となった。
ひとまず私がジュマルに猫じゃらしを見せて遊んでいるうちに、食材はキッチンに運ばれて夫婦で料理。相変わらず料理を手伝ってくれるイケメンって、なんて羨ましいの!
そんなことを思いながら八つ当たりで、ジュマルにボールをぶつけようと投げていたけど全てキャッチされて優しく返されいたら、料理が完成した。
「俺の魚が減ってるやん?」
でも、タイとサンマが4分の1ほど切り取られていたからには、ジュマルがオコ。母親を睨んでいるよ。
「ゴメンね。ママたちもちょっと食べたくなったの。ちょっとだけちょうだい?」
「ママとララはいいけど、あいつはアカン」
「お兄ちゃん! パパにもあげなさい!!」
「チッ……しゃあない」
母親はすぐに許可されたけど、父親はかわいそうすぎるので私が激オコ。私に守られた父親は感動して泣いてるけど、一家の大黒柱が情けない。
「「「いただきます」」」
「にゃ~!」
「「「……」」」
手を合わせてから食べようとしたらジュマルが勢いよくサンマの頭にかぶりついたので、私たちは手が止まった。
「ちょっと思い出しそう……」
「ママ、そんなこと言わないでよ~」
「てか、このままじゃあタイも頭から丸かじりするんじゃないか?」
母親と私は観賞魚事件を思い出して気持ち悪そうにしていたら、父親がいいことを言ってくれた。小振りでも、タイの骨は太いし硬いから食べられないのだ。
「本当ね! ジュマ君。ママがむしってあげるからね~?」
「う゛ぅぅ~……」
「ママに唸らない! イカもエビも美味しいからね?」
「うにゃ~ぁあ」
タイを盗られると思ったジュマルにイカ等を食べさせてみたら気に入った模様。イカ等の取り分は私たちのほうが多かったのに、かなり持って行かれてしまった。
そんなことをしていたら母親がある程度むしっていたのでジュマルはそれも食べて催促していた。
「タイの骨はダメ! 舐めるだけなら許す!!」
「うにゃうにゃ」
それでも骨まで食べそうになっていたので、私が少しだけ譲歩したら、ジュマルは嬉しそうにタイの骨を舐め回すのであった……
「「「いただきます……」」」
ジュマルのせいで夕食がまったく進んでいなかった私たちは挨拶からやり直して、まずはちょびっとだけある魚の身から一口で食べてしまう。
「あっ……久し振りに食べたけど美味しいわね。ここのスーパーの魚が美味しいのかしら?」
「うまっ。そりゃジュマルが独り占めするわけだ」
「うん。美味しいね~」
広瀬家、一口でトラウマ克服。この日はホイコーローでお腹を膨らませたけど、翌日からは魚料理が並ぶようになったのであった。
その夜、ジュマルがいつも通り自分の部屋に隠ると、私も「疲れたから早く寝る」と自室に向かうと言ったら、両親はシメシメといった顔をしていた。
もちろんそれは、私は見逃さないし、そのためにハメたのだ。
「うぅぅ……ララちゃんが買い物してるぅぅ」
「ああ。ジュマルも荷物を持ってお兄ちゃんしてるな……うぅぅ」
「やっぱりつけてたね!!」
「ララちゃん!?」
「ララ!?」
リビングにこっそり入ったら、母親と父親はグズグズ言いながら大画面テレビで私の初めてのお使いを見ていたので、ドッキリ返し。2人とも凄い顔で振り返った。
「こ、これは……」
「違うんだ……」
「パパ、仕事行ってなかったよね~? サボリ??」
「うっ……休みです……」
「ママも足りない物とか言ってなかった? 全部買わされた気がするな~??」
「ララちゃん。お、怒ってる??」
私が事実を突き付けたら、2人とも土下座しそうな勢いだ。なので、笑顔を見せてあげる。
「ううん。最初の交差点からお兄ちゃんにバレてたから、気を付けるように言いに来たの」
「「はい??」」
「あと、写真もあるよ? ママもパパも、こんな服持ってたんだ~。アハハハ」
「「バレバレ!?」」
「私も動画見せて~」
証拠の写真も提出してあげたら、両親は観念して謝罪するのであった。
「「「グズッ……」」」
全てバレていたと知っていても、自分の子供が頑張る姿はグッと来る両親であっ……
「なんでララちゃんまで泣いてるのよ~」
「私、頑張ったんだも~ん」
私は私であの番組のファンなので、ついつい泣いてしまったから苦労話にすり替えるのであったとさ。
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毎日更新で最終回まで行くつもりでしたが、終わりがまだ見えません……
残念ながらストックも少なくなってしまいましたので、次回からは一日置き、忘れないように0時に時間を変更して更新します。
明日はお休みですので、次は明後日の0時にお会いましょう。
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