044 夏休みの宿題である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。父親の作ったゲームは戦争を思い出しそうだ……
広瀬家に招かれたママ友スリーは、父親の会社のゲームを見てドン引き。すぐにアンインストールしていた。私も不健全って理由で、母親にアンインストールされたよ。
それから母親は、子供がどんなゲームをしているかを情報収集していたけど、全部買わないか不安だ。成金だもの。
「やっぱり、子供は走り回ってなんぼじゃない? ゲームばかりしてたら勉強しなくなるわよ?」
私が不安な顔をしていたら、木原さんがいいこと言ってくれた! さすが庶民の味方!!
「そ、そうですね……もっと思い出に残るようなことをさせたほうがいいですよね~」
「そうそう。バーベキューとかでも子供は喜ぶよ」
「それいいですね!」
ようやくゲームから離れてくれたけど、バーベキューセットもそこそこお金が掛かるのでは? いや、母親はどこに行こうとしてる?? キャンピングカーから買おうとしないで!!
また私が不安な顔をしていたら木原さんたちが止めていたけど、大きな子供用プールとか、皆で楽しめるゲームとか、カラオケとかって、自分たちが楽しむためでは……
「ララちゃ~ん。そんな目で見ないでほしいな~?」
「おばちゃんたちも残念……」
「「「ララちゃ~~~ん」」」
私に全て見透かされた木原さんたちは、言い訳してなんとも言えない顔で帰って行くのであったとさ。
それでも母親は言われた物を買い漁り、ママ友スリーを毎週呼んで楽しそうにしていたから、私も冷たい目はやめた。今まで外に出ることが少なかったのだから、呼び寄せたほうが楽ができると思ったのかもしれない。
ジュマルを連れて歩くより、断然楽だもん。そのジュマルは女子2人を侍らせて
「よんどんさりのぉぉ~~♪」
「「「「キャーーー! ララちゃ~~~ん!!」」」」
あと、カラオケでは私がアイドル。母親たちはめっちゃ盛り上がってくれるけど、演歌だけどいいのかな? これしか持ち歌ないの。
子供たちがゲームをしている時は母親たちで盛り上がっていたから聞き耳立てていたら、ほとんどの話は来年のこと。子供も大きくなっているから、どこか行こうと話し合っていた。
どうやらママ友スリーも、うちを溜まり場に使っているのは悪いと思っているみたい。海に山にと、来年は忙しくなりそうだ。
たまにママ友スリーの旦那も参加して、バーベキュー大会。夜には手持ち花火までしていたので、子供たちも喜んでくれた。
ジュマルは花火を見て「にゃ~にゃ~」逃げ回っていた。元が猫だから、火が怖いみたい。そういえばあの白猫家族も、元夫が魔法で火を出した時は焦っていたな~。
そんな感じでママ友スリーと家族ぐるみで遊んでいたら、夏休みの後半になったらピタリと来なくなった。
「なんかね。遊びすぎて、夏休みの宿題が溜まってるんだって」
理由は予想通り。週2ぐらいで遊んでいたし、お泊まりまでしていたのだから、夏休みの宿題が終わるわけがない。
「ララちゃんは大丈夫?」
「うん。最初の週に終わらせたよ。絵日記も毎日書いてる」
「さっすがララちゃ~ん。自慢の娘ね~」
母親は誇らしげにスリスリ頬ずりして来るけど、この夏休みの後半に聞いて来ることでもないと思う。私の長男と次男なんて、毎日のように言ってもやらなかったよ?
「これなら私の出番はないわね。木原さんちなんて、大翔君の自由研究手伝ってるって言ってたのよ~」
「ふ~ん。おばちゃんも大変だね」
「そうそう。それを考えると、うちの子供は……」
母親は浮かれて喋っていたけど、急に止まった。
「どうしたの?」
「うちって、子供が2人いたわね……」
「そうだけど……」
「ジュマ君の宿題って、どうなってる?」
「お兄ちゃんは、ママが見てたんじゃないの?」
「ララちゃんが見てたんじゃないの!?」
「ママが見てると思ってたよ!?」
ここで初めて、私たちはジュマルの宿題の進捗状況を知ることに……
「一文字も書いてない……」
「なんてこった……」
そう、ジュマルのプリントやドリルは綺麗なまま。夏休みの間、ジュマルは鉛筆すら持っていなかったのだ。
去年はジュマルに勉強をさせないといけなかったから、家族で必死こいて宿題をやらせていたのだが、今年は私もやることが増えていたから完全に忘れていた。
「なんでララちゃんは言ってくれなかったのよ~」
「だって私、宿題とピアノと英会話の家庭教師もあるんだよ? ママこそ何してたのよ~」
「ママ友と連絡取ったり、ママもやりたいことがあったから~」
罪の
「どうする? お兄ちゃんにやらせる??」
「ジュマ君にやらせるべきだろうけど……今からだと終わらないね」
「漢字ドリルだけやらせよう!」
「だね! ララちゃんは絵日記やって! ママは算数から潰して行くから!! パパ、早く帰って来て~~~」
こうして広瀬家では、家族総出でジュマルの夏休みの宿題を消化して行くのであったとさ。
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