043 夏休みである
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。やっと1学期が終わった~!
小学校に上がったものの、ジュマルの世話に明け暮れた私は疲労困憊。ちなみに私の通信簿は、オール5。簡単すぎるんだもの。
両親からは「天才だ~!」とかチヤホヤされたけど、私は去年1年生の勉強は習得済み。2年生の勉強をやってるんだから、そっちを褒めなよ。
とりあえず1学期は終わったのだから、私はゆっくりしたい。夏休みの宿題はさっさと終わらせて、母親と一緒にドラマ三昧だ。ジュマルは寝てばっかり。
「ところでララちゃんって……」
ここ数日、快適なリビングでドラマ鑑賞をしていたら、母親から質問が来た。
「お友達と遊びに行ったりしないの?」
「……ん??」
「『ん??』じゃなくて、お友達いるでしょ? 遊ぶ約束とかしてないの??」
私、うっかりミス。友達とは世間話程度はしていたけど、誰とも遊ぶ約束も遊んだこともなかった。てか、1年生って、友達と出掛けることなんてあるのかな?
「誘われてない……」
「まさかララちゃん……クラスの子と……」
「仲はいいよ? でも、どう誘っていいかもわからないし……」
「そっか~。ララちゃんは意外と奥手なのね」
それで納得してくれるのはありがたいけど、1年生はそんなもんじゃない? 1人で出歩くのも危ないじゃない? こんなにかわいいのよ??
「誘拐されるし……」
「あ……やっぱり1人で外に出ちゃダメ。ママは許しませんからね」
「うん……」
誘拐を出してみたら、もらってもいない外出許可すら取り消された。言いすぎたな~。この家は快適すぎて出たくないけど。
しかしながら、家族でゴロゴロしているのもおかしな話。私は別案を提出する。
「ママこそ、ママ友を誘って私たちを遊びに連れて行ってくれたら?」
「あ……それよ! そうよ! ママが頑張らなきゃいけないじゃない!!」
うっかりミスは母親も。普通は家族旅行なり家族ぐるみの付き合いのある家で子供どうしの交流を持たせるのだから、ゴロゴロしている場合ではない。でも前世では、友達と野山を駆け回っていたな~。
母親は「ジュマ君で大変だったから~!」とか「ララちゃんもどこか連れて行ってとか言わないから~!」とか言い訳しまくり、いまさら焦ってママ友スリーと連絡を取り合うのであったとさ。
てなことをしたら、ママ友スリーと子供は次の日にはうちに集まった……
「いや~。誘ってくれてありがと~う。学区が違うしちょっと距離があるから、声掛けづらかったのよね~」
理由は、我が家が快適だからだと思う……木原さんたちはめっちゃくつろいでるし……
「これだけ庭が広かったら、子供用のプールもできるんじゃない?」
「そうですね! 勉強になります!!」
いやいやお母さん。勉強になりますじゃなくて、溜まり場に使われてますよ?
「おばちゃん……」
「どうしたのララちゃん?」
「うちは溜まり場じゃありません」
「なっ……なんでバレたの!?」
「おばちゃん、残念」
「ララちゃん違うの~~~」
母親が気付いていなかったので、私がそこんところを突き詰めたら、木原さんは簡単にゲロッた。
子供にどこか連れて行けって言われていたけど、そんなにしょっちゅう行けるわけがないので、母親の電話は渡りに船だったんだとか……ぜんぜん違うくないな。
「ララちゃん。まぁいいじゃない。皆さんは、いつもどんなことをしていたんですか?」
しかし母親はいい人。というか、情報料として、これぐらいの場所提供は想定済みみたいだ。
「夫が休みの時に、近くの動物園とか近くの商業施設とか近くの海に行ったかな~?」
木原さんたちは、全部近場で済ませているみたい。そりゃ子供が小さいからそんなモノだろう。
「あとは~……ゲームを買い与えたり? 目に悪いと思うけど、ゲームってけっこう楽だわ」
「ゲ、ゲーム……」
木原さんが言った言葉に母親が反応して、同席していた私を見たのですぐに目を逸らした。
「うち、どっちも何も欲しがらないので、ゲームなんてやらせたことがありません……」
そう。ジュマルは元猫だから、エサと寝床があればそれで幸せ。私は元お婆ちゃんだし、元々物欲は低いほうだから何かを買ってと言ったことがない。
こんな立派な家に住めて大画面テレビで韓流ドラマを好きなだけ見れるのだから、贅沢言えないもん!
「ララちゃ~ん? ゲームとかしたくな~い??」
しかし母親は、親として何もしてないように感じてしまい、私に詰め寄って来た。
「ゲ、ゲームってなに??」
「そこから!? パパが作ってるのに~~~」
そういえば父親はゲーム会社の社長だったな。そう思うと両親共にゲームをしている姿を見たことがないから、私が知らないのも
苦し紛れに言った言葉は正解を引き当てたみたいだ。てか、ジュマルで大変だったから、やる暇なかったんだろうな。
私が母親からゲームとはなんたるかを聞かされていたら、木原さんが助けてくれる。
「まぁ安上がりなんだからいいんじゃない? 子供がハマッたら、けっこう掛かるわよ」
「確かに……でも、ぬいぐるみとかも欲しがらないから、私が適当に買って来てるんですよ?」
「それは少し変わってるけど、私としては羨ましいな~」
木原さんたちの子供は「買って買って」とうるさいみたいだけど、母親はちょっと言われたいらしい。ゴメンね、お母さん……私、貧乏性なの。
「そういえば旦那さんって、スマホゲームを作ってたのよね? それをやらせてみたら?」
「ナイスアイデアです! 皆さんもやりましょうよ」
木原さんの案から、母親が全員のスマホにゲームをインストールしていたけど、なかなかに難しい。
「「「ムリ……」」」
「え? あっ! 全部英語だ!!」
そう。父親のゲームは外国向けだから、ママ友スリーにはできないのだ。
「う~ん……ママ、これって子供用なの??」
「なんか血がいっぱい出てるね……ララちゃんもやめとこっか?」
「うん……」
私は家庭教師から英語を習っていたからけっこう読めるけど、「殺す」とか「皆殺し」とか随所に出て来るので、母親からレフェリーストップ。
「「「広瀬さんの旦那様って、病んでるんですか??」」」
「違うんです! 夫はシステムを作ってるだけで、シナリオは別の人が作ってるんです~~~!!」
このゲームのせいで、ママ友スリーから父親はサイコパス扱い。そりゃ、こんだけ人がリアルに殺されるゲームでは、そう思われるわな……
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