032 空手教室である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。友達は選んだほうがいいと思う。
ジュマルが怪我をさせたという佐藤
いちおうジュマルが怪我をさせた手前、本人に直接謝らせたけど、どちらも悪いとは思ってなさそうな顔をしていたから遺恨が残らないか心配だ。
「コラッ! あんたが悪いんでしょ!!」
「さ、佐藤さん。怪我してるんですから、そんなに怒らないであげてください。ね?」
あと、佐藤さんはけっこうバイオレンスなので、虎太郎君が逆恨みしそうでマジで心配だ。母親が優しく声を掛けていたけど目を逸らしていたので、何も起こらないことを祈る私であった。
その夜は、いちおう父親が「ジャスティスローリングサンダーはダメ」と叱っていたけど、ジュマルはナメているから聞いてない。
それでも話が終わったところでジュマルが「ごめんなさい」していたので、父親は威厳が保たれたと目が潤んでいた。
「それ、ララちゃんが……」
「ママ! ママ! シーッだよ!!」
ジュマルが素直な理由を母親がチクろうとしたので、私は必死で止めたのであったとさ。
翌日……
「第108回、広瀬家、家族会議を開催します!」
ジュマルが小学校でやらかしてしまったので、この議題は避けられない。でも、まだ数えてたんだね……あと、ジュマルが参加してないのは、家族にカウントしてないってこと? だからナメられるんだよ。
「ジャスティスローリングサンダーだっけ? アレは僕でも痛いからやめさせないと!!」
「「あぁ~……」」
なんのことはない。ジャスティスローリングサンダー被害者の会だった。
「ララも習い事を始めただろ? ジュマルもさせてはどうかと思うんだ。空手とか……賛成の人!!」
「「……ハァ~」」
「なんで!?」
なんでと言われても空手を教えたほうが危険だから、私と母親は挙手せずにやれやれって仕草をしているのだ。
「まぁ聞いてくれ。何も技を教えてもらおうとは考えていない。手加減を覚えさせる手段として、数日通わせるんだよ」
「なるほど……危険な技と、そうでない技を教えるのね」
「そう! なんなら空手の先生に、上には上がいると教えてもらえばいいんだよ!」
父親の案に母親は賛成に回ったけど、私は言いたいことがある。
「パパがあいてできないの?」
そう。だからナメられるのよ!
「パ、パパは大黒柱だから、怪我したら困るし……」
「パパ、ざんねん」
「ララ! パパはずっとPCいじっていたから、体を動かすのは苦手なだけなんだ~~~!!」
という感じで、肉体派ではない父親がサジを投げて、家族会議は終わるのであった……
「なんでわたしまで……」
後日、ジュマルの空手教室について来た私はたんなるストッパーだと思っていたのに、道着まで着せられたので暗い顔。
「ララちゃんかわいいよ~。こっち向いて~」
「うちの娘は何を着ても天使だ~~~!!」
それなのに両親はめっちゃ写真を撮るのでポーズは取ってあげた。でも、主役はジュマルなのでは?
そんな私たちに、個人レッスンをしてくれるという熊のような空手の先生が立ちはだかる。
「お子さんがかわいいのはわかりますが、俺は少々教え方が荒いので、覚悟はしてください」
「あ、はい。騒いですみません……」
熊に睨まれては、父親は萎縮。だからジュマルにナメられるのよ!
「まずは……手っ取り早く乱取りからやるか? がっはっはっ」
そしてこの熊さんは雑!
「パパ、なんでこのヒトえらんだの?」
「ジュマルの相手なら、強いほうがいいかと思って……」
「やっぱ、ざんねん」
「えぇ!? チャンピオンなんて普通頼めないんだぞ~??」
「なりきん」
「ララ~~~」
熊を選んだ理由を聞いたら金に物を言わしていたから、私は父親に冷たい目を送るのであったとさ
「さあ! どこからでもかかってこい!!」
父親が涙目で私に絡みつくなか、熊とジュマルは空手の試合をする線の中に入っていた。
「にゃ~~~!」
「なっ!? この! 喰らえ!!」
熊の開始の合図で、ジュマルは四つ足ダッシュ。そのありえない前傾姿勢では、デカイ熊の攻撃は当たりそうにない。
「なぁ……まさかとは思うけど、ジュマルが勝っちゃうなんてことないよな??」
「あのぶっとい腕と足よ? ないないない……と、思う」
熊はジュマルに
「くそっ! チョコマカと……ぐあっ!?」
その心配は現実に。ジュマルは低い姿勢のまま、蹴りを出した熊の軸足に体当たりして倒したのだ。
「にゃにゃにゃにゃ~~~!!」
さらに追い討ち。高く飛んで両膝を熊の背中に落とし、肩口に乗って後頭部をネコパンチで殴りまくる。
「ふっ……ざけんな~~~!!」
しかし、体格差は歴然。熊は無理矢理立ち上がって、背筋力と立つ勢いでジュマルを高々と打ち上げた。
「もらった!」
「フシャーーーッ!!」
そこに熊は振り向き様に正拳突きを放ったが、ジュマルは空中で体を捻って回避。ついでに両手で熊の顔を引っ掻きながら着地した。
「ど、どこだ!?」
血で目を塞がれた熊がジュマルを見失っているところに、ジュマルの必殺技……
「おにちゃ! 待っ、ああ!?」
「ギャアアァァーーー!!」
あまりにも速い動きのせいで私も止めきれず。ジュマルの放ったジャスティスローリングサンダーが延髄に決まってしまい、熊はズシーンと前のめりに倒れたのであった……
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