031 お友達?である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。ジャスティスローリングサンダーは、ないわ~。


 ジュマルが起こしたトラブルのせいで私まで小学校に連れて来られてしまったが、母親はテンパっているみたいだから分業できてよかったかもしれない。

 私は怪我をした子供の保護者と連絡を取りたがる母親を励ましてから、ジュマルがいると聞いた隣の教室に入った。


「アレ? おに……ジュマルはどこですか??」


 そこにはジュマルはおらず。そのかわり、坊ちゃん刈りの男子がいたので声を掛けたら、立ち上がって私に近付いて来た。


「なんやお前は……アニキになんか用か?」


 コッテコテの関西弁にも驚かされたが、ジュマルより下の子供なんて1年生にいないのに「アニキ」とはどういうことかと私は考えてしまって間が開いた。


「だからなんか用かときいとるやろ。わっ! なんやこのべっぴんさんは!? 彼氏おらんのやったら、わてとつきあわん?」


 さらに口説いて来たから、大混乱。若かりし頃は「こんなガラの悪い男だらけだったな~」っと、少し懐かしんでしもうたわ。

 とか自分でツッコんでいたら、私と男子の間に上から何かが降って来た。


「お前、俺の妹に手を出そうとしてるのか?」


 ジュマルだ。私が口説かれていたからお怒りらしい。


「アニキの妹さんでしたか! それは気付かなくてえろうすんまへん。よう見たらそっくりでんがな~」

「フンッ」


 そのやり取りに「このドサンピンは何者なの?」とも思ったけど、私はジュマルに会いに来たのだった。


「おにちゃ……どこに隠れてた?」

「え……どこにも隠れてない」

「教室に入ったらどこにもいなかった。私に怒られると思って隠れてたでしょ?」

「いや……」

「いま正直に言うなら怒らない」

「わかったけど隠れてない。あそこだし……」


 ジュマルが指差した場所は、教室の隅の天井付近。おそらくだけど私の足音に気付いて飛び上がり、力業で天井に張り付いていたと思われる。忍者なの?


「隠れてないとは言い難いけど……まぁいいわ」


 私も呆れて何も言えないわ~。


「でも、暴力はよくない。なんで我慢できなかったの?」

「だって……あいつらが悪いから……」

「悪くてもやっちゃダメなの。逃げるように言ったでしょ」

「妹さん! ちょっと待ってぇや」


 私が説教していたら、ドサンピンが割り込んで来やがった。


「なに? てか、あんたなんなの??」


 ドサンピンの喋り方がちょっとムカつくので、私もイラッとした喋り方になっちゃった。


「あ、まだ名乗ってもいませんでしたわ。わては飯尾がくでおま。以後、お見知りおきを」

「名前なんか聞いてないのよ。なんであんたがここにいるのよ」

「それはわてがアニキに助けられたからでんがな。この喋り方がおもろいと絡まれていたところをアニキが来まして、ジャスティスローリングサンダーでんがな~」

「あんたのせいか~~~い!!」

「妹さん、いいツッコミでんな~」


 私だってツッコンでしまうぐらい達者な関西弁では絡まれても仕方がない。てか、こいつを救ったのは、ジュマルの間違いでは?

 なんか聞いてもいないのにベラベラと、ジュマルをアニキと呼んでる理由とか、オカンが来るまで自分も監禁されているとか喋ってるし……


「もういいよ。ドサンピン……じゃなかった。岳君はあっち行ってて」

「ここからがアニキの見せ場でっしゃろ~」

「黙れ。おにちゃに縁切らすよ……」

「わ~お。お口チャック。ドロンっと」


 私が怒って睨んだのに、最後までうるさい岳君であったとさ。



「はぁ~……もういいや。ママが来たら謝るんだよ?」

「うん……」


 毒気を抜かれた私はイスに座り、ジュマルに謝り方講座。たぶん怪我をさせた家にも行くと思うので、口だけでもいいからと教え込む。

 そうしていたら、母親が池田先生と一緒に教室に入って来た。


「おにちゃ、どうするんだった?」

「ママ、迷惑かけてごめんなさい。先生もごめんなさい」


 先手必勝。私がジュマルに頭を下げさせたら、母親も困った顔をしていた。池田先生に至っては「さっきまで全然謝らなかったのに……」とか言ってる。


「ジュマ君。本当に反省してる?」

「……うん」

「そう……いまから怪我させた人に謝りに行くけど、ごめんなさいできる?」

「……うん」

「わかった。先生、今日はご迷惑お掛けしまして申し訳ありませんでした」

「「ごめんなさい」」


 母親が頭を下げたので、私はジュマルをつついて一緒に頭を下げさせた。これで無事解放となったけど、池田先生は「なんで関係ない妹さんまで謝罪してるの?」と、不思議に思うのであったとさ。



「ところでララちゃん……」


 学校を出て3人でタクシーに乗ったところで、母親から私に質問が来た。


「ジュマ君は本当に反省してるのかな~?」

「し、してる……ね?」

「してる」

「さっきもジュマ君は、ララちゃんが頷くのをを見てから返事してたように見えたんだけどな~?」


 バレテーラ。


「えっと……おにちゃ、けったのはやりすぎたとおもってる。でも、いいことしたともおもってる。だから、謝罪の形だけ整えた」

「うんうん。そっかそっか。運転手さん、うちの娘どう思います??」

「運転手さんにきかないで~~~」


 私が操っていたのはバレバレだったので正確な報告をしたら、母親は運転手さんに意見を求めるのであったとさ。


 もちろん運転手さんには「子供のうちからそんな悪知恵使ってたら立派な大人になれないよ~?」と言われましたよ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る