018 仲間である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。女子はいくつでもかしましい。
ジュマルの顔を見た幼女2人は「カッコイイ。もっと見たい」とか言って、さらにうるさくなった。
私はジュマルの猫フィルターのせいでカッコイイとか思ったことがないし、あまり段ボール箱を開けすぎると興奮して出て来る可能性もあるからやりたくない。
だがその時、私たちの騒ぎを聞き付けた本日の主役、
「なになに。なにしてんの?」
「なんでもない。ロボットであそんでろ」
こいつだけは、ジュマルに近付けたくない。別に嫌いとかではなく、前回のこともあってジュマルが襲い掛かるかもしれないから見せられないのだ。
「いいやん」
「ダメ。おにちゃ、まだおこってる。ぶたれるよ?」
「おにちゃってだれ??」
「わすれるなよ~」
ダメだこいつ。あの恐怖体験がトラウマになっていないなんて、ある意味大物でもあるけど……
「ボクのたんじょうびなんだからいいやん。あけろ」
「ワガママいうな」
「ワガママってなに??」
「辞書ひけ!」
やっぱり子供、難しい。言葉を知らないし怖い物知らずだから引くことを知らない。ならば仕方がない。その恐怖、思い出させてやろう。
「おにちゃ。おかしいれる。ぜったいにあばれるな。わかった?」
「にゃ~」
まだジュマルのほうが言葉知ってるんじゃね? 私が止めやすい言葉だけは教え込んだから……でも、「にゃ~」って言うなってのは守られないんだよね~。
ジュマルから返事をもらったら、私の後ろに3人を控えさせて段ボール箱を開けた。
「はい。おかし」
「……シャーーーッ!!」
「ぎゃああぁぁ~~~!!」
「おにちゃ、お座り!!」
しかし、大翔君の顔が目に入った瞬間、威嚇の声を出して怖がらせた。本当に怒っていたんだね。ジュマルも忘れてたらよかったのに……
当の忘れていると言っていた大翔君も腰砕け。やっぱりトラウマになっていたみたい。ざまぁみろ……とか言っている場合ではないな。ジュマルは段ボール箱のフタを締めさせてくれないもん。
「おにちゃ。待て! あいつ、仲間!!」
大人も何事だと一斉に立ち上がるなか、私はジュマルを落ち着かせようと必死だ。ジュマルに抱きついて座らせようとするが、ついに立ち上がってしまった。
「なかま……オレの??」
「うん。だからおちつけ」
「そいつとそいつは?」
「なかま。おんなのこだから、ぜったいに傷付けちゃダメ」
「なかま……にゃ~~~!!」
「パパ! ママ!!」
「「どりゃ~~~!!」」
私が会話を長引かすことで子供たちの避難が終わっていたけど、ジュマルが急に叫んだので両親が飛び掛かって捕獲。これで誰も傷付かずに済んだが、ジュマルは思ったより落ち着いている。
「おにちゃ。だいじょぶ??」
「うん。なかまいっぱい。うれしい」
しかも笑顔だ。
(あ~。そっか。仲間想いだもんね。仲間が私しかいなかったから、寂しかったのかも? 仲間と意識させてやればよかっただけか)
私はジュマルの笑顔に納得して両親に声を掛ける。
「もうだいじょぶ。はなしてあげて」
「でも……」
「ああ。ララの言う通りやってみよう」
「うん……」
母親はジュマルを解き放つことが心配そうだけど、父親に諭されて力を抜いた。
「あい。ててつなぐ」
「うん」
私はジュマルの手を取って立たせたら、まずはカッコイイと言っていた幼女の前に連れて行った。
「おにちゃのジュマルです。よろちくおねがいしまちゅ。おにちゃもよろしくいう」
「よろしく」
「うん! あくしゅしよ」
「うん」
幼女2人は陥落。握手までしてジュマルをチヤホヤしてる。両親は、すんごい涙。それに釣られてママ友スリーも泣いているけど、パパさん方は何が起こっているかわからないって顔をしている。
あと、私のことを「保護者?」とか言ってるな……まだ3歳です!
最後の難関、木原さんに抱きついている大翔君の前にジュマルを連れて行くと、私は謝らせる。
「おにちゃ、こないだ叩いてゴメンいう」
「たたいてゴメン。よろしく」
ジュマルは大翔君にも挨拶できたし、応用もできたから私も感無量。泣きそうだ。
「ほら? ジュマル君ゴメンしてるでしょ? 大翔もララちゃんに怪我させてゴメンしよっか?」
しかし、大翔君は木原さんに抱きついてジュマルの顔をなかなか見てくれないから、木原さんが助け船を出した。
「ゴ、ゴメン……だからたたかないで……」
でも、トラウマからは抜け出せないみたい。
「お前は俺の子分だから守ってやる。なんかあったら言って来い」
「はい!」
それでもジュマルが親分らしきことを言ったら、大翔君は笑顔になるのであった。
「「「「「……ん??」」」」」
その感動的シーンに拍手を送ろうとした親たちは、首を傾げるのであった……
「パパ、ママ、あとララちゃん。集合~~~」
ジュマルたちがなんかいい感じになって遊び出したら、木原さんが集合を掛けたが、何故に私まで? 逃がしてよ!
忍び足で逃げ出そうとした私は母親に捕まって、円陣を組んでいる親たちの輪に加えられた。
「ジュマル君、なんか親分みたいになって
「「「「「うんうん」」」」」
そう。さっきまでカタコトだったジュマルが、幼児らしからぬことを言っていたから集まっているのだ。私も頷いてるんだから、集中的に見ないで!
「広瀬さんが教えたのですか?」
「いえ……ララちゃんが教えたの??」
「ちらないよ~」
「そういえばさっきのララちゃんも、パーティで挨拶回りする奥様みたいだったわね……」
「「「「「うんうん」」」」」
「ち、ちらない……」
どうやら私もやらかしてたみたい。
いくら私が知らないと言っても、親御さんたちの質問は止まらないのであったとさ。
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