Cafe Mistletoe

第28話


賑やかに人の行き交う表参道からしばらく歩き裏道を通りながら、静かに漂うコーヒーの香りを辿り路地を進むと、ひっそりとその店はある。


『Cafe Mistletoe』


入り口の横に掛かっている、店のコーヒーが長年染みこんだかのような深い色合いを醸しだしているその古い木の看板には「closed」と書かれていた。





カラン・・・・・・。


少し古びた木の扉に美しい色ガラス細工の飾られたドアを開ければ、一気にこうばしいコーヒーの香りが身体を優しく包み込む。

既に外までその香しい香りはしっかりと届いていたが、中で直接浴びれば不思議とその香りだけではなくどんな味を楽しめるのか多くの人がワクワクしてしまうだろう。


「いらっしゃいませ」


サイフォンや食器が並ぶカウンターから、老紳士が穏やかな笑みを浮かべ声をかけた。

まさに絵に描いたような、古いカフェと老マスター。

何かここで自分の知らない世界の物語が始まりそうな雰囲気さえ感じた。


「どうぞ、奥へ」


男はマスターに笑顔でそう促されて店の奥にあるドアを開けるとそこは割と広めの個室になっていて、既に数名の男が大きな一枚板のテーブルを囲み、座っていた。

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