奇妙な食事

 ゴソゴソ音をたてて、二人は席にすわる。その間もクオンの目には、悪霊の姿がみえていた。クオンの斜め前に座ったクリエは、クオンにまでちょっかいをだしはじめる、見えるのだろうと手をふったり、べろをだして両手をひろげてあざわらったり、そして何より奇妙だったのが、その悪霊がふざけるたびに、クリエが妙ににやにやして、満足気に笑うのだ。二人は小腹がすいているということで、スパゲティーやら、フレンチトーストやらをたのみ、待つ間コーヒーをのんでいた。ゆっくりとたちあがる湯気とすする音が静かにカフェに響いた。そして当たりをみると、先ほどまで人でごった返していた店内がやけに静かに、ほとんど人がいない閑散とした状態に変わっていた。

「ねえ、どうしたの?すごく、そわそわしているけれど」

 あっけにとられていると、クリエが呼びかける。そちらに目をやるとクオンは、ニヤニヤした様子のクリエが、悪霊が顔半分までクリエの中にうもれてほとんど同化した状態で重なってみえた。

「……いえ、なんでも……」

「そうだ……これ、ありがとうねえ……でももう、大丈夫だから」

 そういってクリエはあるものを取り出した。そう、霊のクオンが渡したお守りだった。ぼろぼろになり、二つにわかれたお守り、クオンは咄嗟に立ち上がった。

「わ、私ちょっとトイレに」

 クオンはトイレに駆け込むと、すぐに肩をぽんぽんとたたいた。クオンの髪の中、そこから眠たそうなソネーユがあらわれた。

「うーん、なあに?」

「ソネーユ、悪霊がお守りを壊したわ!」

「どういうこと?今日は依頼者と会う約束でしょ」

「そこにたまたま、クリエさんがきてたのよ、それで、悪霊の姿が大きくなってて、すぐに対処しなきゃ」

「……!!」

 ソネーユは目を丸くして、顎に手を当てて考え事をする。

「けど、師匠の力を借りるには、悪霊が世界に、ひいては妖精界に害があることを証明しないと」

「妖精の記憶は認識の奥深くでひとつにつながっているのでしょう?」

「そうだけど、お守りを破壊した程度じゃ」

「クリエさんが何かする前にどうにかしたいけど、何か証拠を集めないといけないわね」

 しばらくして席に戻ってきたクオン。

「ただいまー」

「あらおかえり」

 とクリエ、皆も呼応する。思いのほか話は盛り上がっており、オリエラもその話の輪に入っている。悪霊がそこにいることに気づかずに。こんな時は自分の能力を恨めしく思う。自分だけが違う世界に取り残されているようだ。


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妖精プラグ ボウガ @yumieimaru

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